まなびしごとLABの風間です。
こんにちは!
2026年9月25日(金)、連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第18回: 「コーディネートの『価値』をどう伝えるか ~ 地域教育とお金の問題を考える② ~」をnote上で公開しました。
今年から始めた連載企画の第18回です。
noteで公開中ですが、こちらにも転載していきます。
(noteへのリンク)
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ|風間崇志/地域プロジェクトパートナー|note
1.はじめに

前回は、地域教育にまつわる「お金」の話を取り上げました。
(非常に書きづらい内容でしたが、勇気を振り絞って・・・)
地域教育に必要なコーディネーターという仕事を、誰かの善意やボランティアだけに頼るのではなく、ちゃんと「仕事」にしていく必要があるのではないか。
そんな話でした。
書きながら、私自身も少し考えさせられました。
というか、はっきりと反省しました。
というのも、私はこれまで「予算がない」「どうやってお金を出してもらうか」ということばかりを気にしていたからです。
でも、よく考えてみると、これは順番が逆かもしれないと思い始めたのです。
「どうやってお金をもらうか」を考える前に、「そもそも、私はどんな価値を生み出しているのか?」を考えなくてはいけないのではないかと。
私は普段、地域プロジェクトパートナーを名乗っていますが、仕事の内容を説明するときに、「地域のコーディネートをしています」と説明することがあります。
人をつなぐということは分かっても、仕事としては非常に分かりづらい、不十分な説明にとどまっていたということに気づいたのです。
もちろん、人をつなぐことも大事な仕事の一部なのですが、それだけではありません。
まず「何のためにやるのか」を考え、誰にお願いするのがいいか、相手にも「やってみたい」と思ってもらえるようにするにはどうしたらいいのかを考えます。
そしてその条件は?
一緒にプロジェクトをつくるには?
また、実際に動かしてみて、うまくいかなければやり方を変えたり、そこで生まれた経験を、次のプロジェクトにつなげたりすることもあります。
いろいろな要素が含まれているのですが、それらを伝えきれていませんでした。
私がやっているのは、まだ形になっていない「やりたい」を、実際に動くプロジェクトに変えていくことです。
では、それにはどんな価値があるのか。
それをやることで、何が起こるのか、何が生まれるのか、何が変わるのか。それをもっと分かりやすく伝えられなければいけないのではないかと。
「私はこんなことをやっています」と説明するだけではなく、「私が関わることで、何が変わったのか」を伝える。
それが価値であり、価値が生まれた先に対価がある。
そのためには、まず自分自身が、その仕事の価値を説明できなければなりません。
「予算をください」とお願いすることから始めるのではなく、「私は、こういう課題を解決し、こういう変化を生み出す仕事をしています」と伝え、その上で、「その価値に対して、お金を払う意味がありますか?」と相手に問う必要があります。
では、地域教育に関わるコーディネートによって、どんな価値が生まれているのか。
今回はそれを改めて考えてみたいと思います。
2.「コーディネート」で何をやっているか

改めて、私が行っている「地域プロジェクトパートナー」としてのコーディネートで、どんなことをしているのかを整理してみます。
たとえば、「高校生と地域の人や企業をつなぎたい」といった相談を受けたとします。
一見すると、「人や企業を紹介する」だけの仕事に見えるかもしれません。
でも、私はそれだけならやりません。
私がやる必要がないからです。
では私は何を考え、何をしているかというと、以下のようなことが挙げられるかと思います。
(もちろん、案件ごとに内容は異なるため、必ずしもここに挙げたことをすべてやっているわけではありません。また、仮に番号を振りましたが、必ずしも①から順に進むわけではなく、場合によっては行ったり来たりを繰り返しながら、進こともあります。)
① 目的を整理する
- 何を実現したいのか
- なぜ、それをやりたいのか
- 誰にとって必要なのか
- どんな状態になったら「うまくいった」と言えるのか
といったことを、相談しながら整理します。
「企業とつながりたい」という相談でも、その先には、「生徒に仕事を知ってほしい」「社員に新しい学びの機会をつくりたい」「地域の課題を解決したい」など、いろいろな目的があります。
② 人・企業・地域の資源を探す
- 誰と一緒にやるとよさそうか
- どんな企業や人が関われそうか
- 地域にどんな資源があるか
- すでにある活動を活用できないか
「この人と、この人が組んだら何か生まれそうだ」という可能性を考えながら、最適な組み合わせをつくっていきます。
(何が「最適か」を言語化するのは難しいですが、それも私なりの判断基準があるのではないかと思うので、これから言語化に取り組んでいきたいと考えているところです)
③ 関係者の間に入る
- それぞれの考えを聞く
- 相手に分かる言葉に置き換える
- お互いの条件を確認する
- 「これならできそう」という接点を探す
学校、企業、行政、地域ではそれぞれ立場も目的も違うことがあります。
そのため1対1だと時に利害がぶつかったり、意図がうまく伝わらなかったりすることがあります。
そんなときに第三の当事者として中間に入ることもあります。
いわば、交通整理、架け橋、翻訳者のような役割です。
この過程を通じて、AさんとBさんの共創関係をつくっていきます。
④ プロジェクトを設計する
- 誰が何をするのか
- いつ、どこでやるのか
- どんな手順で進めるのか
- どこまでやるのか
- ゴールはなにか
といった共通項を関係者で共有していきます。
最初から完璧な計画をつくるわけではなく、まずは小さく始めて、やりながら変えていくこともあります。
⑤ 実際に動かす
計画をつくっただけでは、プロジェクトは動きません。
連絡をしたり、打ち合わせをしたり、必要な人を集めたり、資料をつくったり、ときには自分自身が現場に入って一緒に動くこともあります。
「こうしたらいいですよ」というだけではなく、実際に動き出すところまで関わるのが私の仕事です。
⑥ 振り返る
そして、プロジェクトが終わったら終わり、でもありません。
何がうまくいったのか/いかなかったのか、どんな変化があったのか、次に何ができそうかなどを振り返り、関係者や地域にどんな気づきや学び、変化があったかを言語化します。
一つのプロジェクトをやっただけで終わらせず、次のプロジェクトや新しい関係につなげていく。
ここまでが、私が考える「コーディネート」です。
こうして並べてみるといろいろな仕事が含まれていることが分かります。
だからこそ、「コーディネーター」という名前だけでは、その仕事の中身や価値が伝わりにくいのだと思います。
最近では「プロジェクト」に重心を置き、「地域プロジェクトデザイン(地域プロジェクトデザイナー)」という表現に更新しようかとも考えている最中です。
これについては別の機会に改めて考えてみようと思っています。
そして、もう一つ大事なのは、これらの仕事を「やったこと」として並べるだけでは、まだ価値が十分に伝わらないということです。
やったことによって実際に何が変わったのか、何が生まれたのか。
次の章では、そこから「価値」について考えてみたいと思います。
3.「やったこと」ではなく「起きたこと」や「変化」に注目する

例えば、
- 企業を10社紹介しました
- 20人の地域の人に声をかけました
- 5回の打ち合わせをしました
- プロジェクトを3つ立ち上げました
と説明したとします。
なんとなく「たくさん仕事をしているんだな」ということは分かります。
でも、それで何が変わったのかというところまでは分かりません。
そのため「やったこと」だけではなく、「その結果、何が起きたのか」を説明する必要があると思います。
そこで価値を大きく3つの段階に分けて考えてみることにしました。
① 何をしたのか
まずは、「何をしたのか」です。
- 人を紹介した
- 打ち合わせをした
- プロジェクトを設計した
- 企業に声をかけた
- 現場を運営した
これはこれまで述べてきたとおり、比較的、数字にしやすいものでした。
② 何が起こったのか
次に、その結果として起きたことです。
たとえば、
- 先生が企業を探す時間が減った
- 学校の授業に、地域や企業の人が加わった
- 高校生の探究学習が深まった
- 新しい商品やサービス、イベント、お店、事業などが生まれた
などです。
これらは外から見て分かりやすく、振り返りシートやアンケートなどによって、ある程度、定量的に示すことが可能な部分ではないかと思います。
③ どんな変化が生まれたのか
「何が起こったのか」で挙げたのは、あくまでやったことで起こった目に見える結果です。
でも、結果がうまくいった・うまくいかなかったに限らず、実は目に見えない変化も生まれています。
たとえば、
- 高校生が地域や仕事について新しい視点を持つ
- 企業の社員が自分のキャリアや会社での役割に新しい意味を見出す
- 「探究」する力が身に付く(この言葉が何を意味するかはここでは割愛します)
- 自分で決める力、行動する力が身に付く
- 学校と企業との協力関係ができる
などです。
こうしたものは、見た目には分かりづらいため、数字で表せないこともあります。
でも、私はむしろここに大きな価値があるのではないかと思っています。
例えば、「企業を1社紹介した」という事実だけを見ると、たいしたことではないように感じるかもしれません。
でもその企業と学校が出会ったことで、生徒も社員もお互いに刺激を受け、翌年も一緒に取り組むことになったら。
さらに、それを見た別の企業が「うちも参加したい」と手を挙げてきたら。
そのうちに、学校や企業という枠を取り払って、プライベートで地域で新しいことをやり始めたら。
そうなれば、最初の「1社を紹介した」という仕事から、いくつもの変化が生まれています。
つまり、私が考えるコーディネーターの価値は、自分が何をしたかだけではなく、自分が関わったことで、何が生まれ、何が変わったのかにあるのだと思います。
だからこそ、これからはそのプロジェクトによって、誰にどんな変化があったのかを意識して記録し、言葉にしていきたいと思っています。
そして、もう一つ大事なことは、同じ一つのプロジェクトでも、誰にとっての「価値」なのかによって、その中身は変わるということです。
次は、そこを考えてみたいと思います。
4.誰にとっての「価値」なのか

例えば、高校生と大学や地域企業が一緒になって、地域の課題解決に取り組むプロジェクトがあったとします。
ここにはどんな「価値」があるでしょうか。
高校生にとって
- 地域の大人や企業と出会える
- 学校の外でリアルな課題に取り組める
- 自分の興味や得意なことに気づく
- 「自分も何かできる」という意識が生まれる
学校・先生にとって
- 学校だけでは用意しにくい学びの場をつくれる
- 地域や企業との新しい関係ができる
- 先生だけでは持ちにくい知識や経験を、生徒の学びに生かせる
- 外部との調整にかかる時間や負担を減らせる
これを「高校生の探究学習」とだけ説明してしまうと、ここで終わってしまい、他の関係者にとっての価値は見えにくくなってしまいます。
(まさに今までの私がこの状態でした。自戒を込めて・・・)
では、主体を変えてみると、ここにどんな「価値」があるかを考えてみます。
企業にとって
- 若者や地域との接点ができる
- 社員が普段とは違う相手と関わる機会になる
- 社員自身の学びや成長につながる
- 自社の仕事や魅力を知ってもらう機会になる
- 新しい商品やサービス、事業の種が生まれる可能性がある
- 地域貢献につながある
自治体にとって
- 学校と地域企業の関係が生まれる
- 高校生と地域との関係が生まれる
- 地域の人材や企業が教育に関わる仕組みができる
- 地域の課題解決につながる可能性がある
大学にとって
- 学生の実践的な学びの場をつくれる
- PBLやキャリア教育などの学外フィールドをつくれる
- 高校とのつながりができる
- 学生の確保につながる可能性がある
- 企業とのつながりができる
- 地域貢献につながる
地域で活動する人にとって
- 自分の知識や経験を生かす場ができる
- 学校や企業など、新しい人や組織とつながることができる
- 自分の活動を知ってもらう機会になる
- 一人ではできなかったことに挑戦できる
- 活動を通じて、自分自身も新しい学びや気づきを得られる
- 一緒に活動する仲間が得られる
このように見ていくと、一つのプロジェクトの中に、いくつもの「価値」があることが分かります。
だからこそ、相手に仕事の価値を伝えるときには、「私は、地域の人と学校をつなぐ仕事をしています」だけでは足りません。
相手によって感じる「価値」は異なるため、使う言葉も変える必要があります。
たとえば、
企業には「社員の学びや新しい事業の種をつくることができます」かもしれないし、学校には「先生方の負担を減らしながら、地域と一緒に学びの場をつくることができます」かもしれません。
また、自治体には「学校と地域が継続的につながる仕組みをつくることができます」かもしれません。
このように、相手にとっての価値に変換して伝える必要があるのです。
大切なのは、「このプロジェクトは、あなたにとって何の役に立つのか?」という視点で、自分がやっていることを伝えることです。
これは、私自身がこれからもっともっと取り組んでいかなければならないと思っています。
5.おわりに

今回は、コーディネートの「価値」をどう伝えるかということを考えてきました。
振り返ってみると、私自身、これまで「人をつなぐ」「プロジェクトをつくる」といった、自分がやったことを中心に仕事を説明していたように思います。
でも、大切なのは、その先に何が起きたのかということです。
具体的には、
- 誰の課題が解決されたのか
- 誰にどんな変化が生まれたのか
- どんな新しい関係が生まれたのか
そこまで含めて、自分の仕事の「価値」なのだと思います。
そして、価値を伝えるために大切なことは、自分を大きく見せることでも、仕事を無理やり売り込むことでもなく、自分が生み出した変化を相手に分かる言葉にするという、仕事をする上でもっとも基本的なことだったのだと気づくことができました。
そう考えると、「お金をもらう」という話も、少し違って見えてきます。
大切なことは「予算をください」とお願いするのではなく、「私は、あなたのこんな課題に対して、こういう価値を提供できます」と伝えること。
その「価値」を相手が必要だと思えば、そこに「対価」が生まれる。
そこまでの合意をどのような手順で進めるかということです。
今回の「お金」の話は、結局、自分の仕事そのものを見つめ直す機会になりました。
私自身、まだまだできていないことばかりですが、今回、気づいたことをこれからの仕事に活かしていきたいと思います。
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これまでの連載
第17回
連載「サード・ラーニング」のすすめ 第17回: 「コーディネーターを『ちゃんと仕事にする』には ~ 地域教育とお金の問題を考える① ~」
第16回
連載「サード・ラーニング」のすすめ 第16回: 地域に大学があるということ ~ 地域そのものを学びの場にするという発想 ~
第15回
連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第15回:コーディネーターという「専門職」について ~学びの未来をともにつくる『第3の当事者』~
第14回
連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第14回:「学びを共創するコーディネーター ~ なぜ学校・地域・企業をつなぐ『第3の当事者』が必要なのか ~」
第13回
連載「サード・ラーニングのすすめ」:第13回「地域と学校の協働を生み出すための処方箋とは ~ 子どもの居場所づくり共有会の事例から ~」
第12回
連載「サード・ラーニングのすすめ」:第12回 「お願いする」から「協働する」関係へ(地域編)~ 地域学校協働本部が生み出す双方向の学びの実現に向けて ~
第11回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第11回 「開かれた学校」のその先へ(学校編) ― 地域とともにつくる「これからの学び舎」のカタチ ―
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ(実践編):第10回 「完売御礼」に学びはあるか ― 起業体験がただの「商売ごっこ」に終わるとき ―
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第9回 自分で決める力を育てる教育としての「アントレプレナーシップ教育」 — 育てたいのは「起業家」なのか —
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第8回 プロジェクトの後に何が残るのか? ——「やりっぱなし」のPBLから脱却するために
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第7回 プロジェクトは教科書を超えるのか? ~経験からの学び~
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第6回 伴走者を超えて「共に創る」 ~ 「第2回弥生祭」での実践から ~
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第5回「社会」が求める探究と「自分」のための探究 ~ 私たちにとって「探究」とは何か ~
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第4回 「いきあたりばっちり」を育む学びの土壌とは? 〜 キタサカまちづくり部を例に 〜(実践編02)
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第1回
「【連載】「サード・ラーニング」のすすめ」をスタートしました(2026年1月15日)
番外編
【連載:番外編】「サード・ラー二ング」のすすめ:参考書籍①『学びのコミュニティづくり』|風間崇志/地域プロジェクトパートナー
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前月に取り組んだ各プロジェクトの状況、一般社団法人ときがわ社中の活動、地域でのしごとづくりに役立つ本のご紹介、今後の予定などをまとめています。
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