まなびしごとLABの風間です。
こんにちは!

2026年7月10日(金)、連載「『サード・ラーニング』のすすめ」の第13回「地域と学校の協働を生み出すための処方箋とは ~ 子どもの居場所づくり共有会の事例から ~」をnote上で公開しました。

今年から始めた連載企画の第13回です。

noteで公開中ですが、こちらにも転載していきます。

(noteへのリンク)
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ|風間崇志/地域プロジェクトパートナー|note

はじめに

前回は、「お願いする学校」から「提案しあう地域」へというテーマで、学校と地域が対等な立場で学びをつくるための仕組みである地域学校協働本部についてお話ししました。

連載「サード・ラーニングのすすめ」:第12回 「お願いする」から「協働する」関係へ(地域編)~ 地域学校協働本部が生み出す双方向の学びの実現に向けて ~

学校が地域に協力をお願いし、地域がそれに応えるだけではなく、お互いが「こんな学びを一緒につくりませんか」と提案し合える関係になること。
そのような双方向の関係が、これからの地域と学校には求められるのではないかと私は考えています。

しかし、そうした関係は、「協働しましょう」と声をかけただけで生まれるものではありません。
学校には学校の事情があり、地域には地域の思いがあります。
それぞれが忙しい毎日の中で活動しているからこそ、お互いを知る機会は意外なほど少ないのが現実です。

では、学校と地域が本当の意味で協働するためには、何が必要なのでしょうか。

私は、そのためのヒントを、先日開催した「子どもの居場所づくり共有会(以下、「共有会」)」から得ることができたのではないかと考えています。

「子どもの居場所づくりに関する共有会」を初開催(2026年6月29日)

この共有会に参加したのは、近隣地域の教育関係者で、具体的には小学校、中学校、高校、大学の先生方、教育委員会といった行政関係者、教育に関わる民間企業者(私)でした。
また、教育に関わる大人に加えて、現役高校生にも参加いただくことができました。

普段であれば、それぞれの職場や活動の中で子どもたちに関わっていますが、一つの場所に集まり、ゆっくり話をする機会はほとんどありません。

実は、この共有会を開催したきっかけは、子どもの居場所づくりをテーマに活動する高校の先生との雑談でした。

地域の公共施設を、子どもの居場所として活用できないかというプロジェクトに関わっていたことから、「ぜひお互いの活動について意見交換をしましょう!」ということになりました。

最初はほぼ1対1の意見交換くらいに考えていたのですが、フタを開けたらかなり大事になっていたので、少々焦りました笑

ただ、結果として、異なる立場の方々の活動内容や問題意識を知る、またとない機会になったと思っています。

共有会を開催するにあたり、さまざまな方が集まることは事前に分かっていましたが、それでもいきなり「子どもの居場所をつくろう」とか、「新しいプロジェクトを始めよう」という明確なゴールを設けるつもりはありませんでした。

最初はもっとシンプルに、

・お互いがどんな活動をしているのか
・どんなことに困っているのか
・どんな思いで子どもたちに関わっているのか

を共有することから始めようと考えました。

だから、勉強会ではなく、あえて「共有会」と名付けました。

私はこれまで、学校や地域のさまざまな現場で、「連携しましょう」「協働しましょう」という言葉を何度も耳にしてきました。
しかし、その言葉だけが先行し、お互いを十分に理解しないまま話が進んでしまうことに違和感を抱いていました。

その前に必要なことがあるのではないか。
そんな思いが、共有会に集まった皆さまにもあったのかもしれません。

実際に当日、参加者の皆さんの話を聞いていると、一つの共通点が見えてきました。

それは、学校も地域もお互いのことを驚くほど知らなかったということです。

学校は地域でどのような活動が行われているのかを知らない。

地域も学校が何に困り、どのような情報や人材を欲しがっているのかを知らない。

決して協力したくないわけではありません。
(むしろ協力したいと思っている人が大半です)

ただ、関わるきっかけがなかっただけなのです。

私は、この共有会を通して一つの確信を持ちました。

学校と地域の協働は、新しい制度やプロジェクトから始まるのではありません。
まずは、お互いを知ること。
そのための対話の場を持つこと。
その積み重ねが信頼や関係をつくり、自然に「一緒にやってみよう」というプロジェクトを生み出していくのはないかと。

今回は、この共有会で起きた出来事を振り返りながら、学校と地域の協働の始め方をテーマに、共有と対話の場の重要性について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

2 「学校も地域もお互いのことを知らない」という問題

共有会で最も印象に残ったのは、特別なアイデアや新しいプロジェクトの話ではありませんでした。

それは、お互いの話を聞いた参加者から、何度も聞かれた「知らなかった」という言葉です。

学校の先生からは、「地域でこんな活動をしている人がいるとは知りませんでした」という声がありました。
一方、地域で活動する私も、学校でどんな活動をしているか、何に困っているのかについてはまったく知りませんでした。
それは小・中学校、高校、大学と立場が違う方同士でも同じだったようです。
(公立小学校と中学校は似たような現状を共有していたようです)

私は、共有会を進行しながら、学校と地域の間には「協力する人がいない」のではなく、「お互いを知る機会がない」という大きな課題があることを改めて感じました。

学校には、日々の授業だけでなく、児童生徒の指導、学校行事、保護者対応など、多くの仕事があります。
そのため、地域にどのような人材がいて、どのような活動が行われているのかを調べたり、人に会ったりすることに時間を使う余裕がないのではと感じています。

一方、地域には、「学校のために何か役に立ちたい」「学校と連携して何かしたい」「子どもたちに自分の経験を伝えたい」と考えている人は少なくありません。
(むしろ多いです)

しかし、学校が何に困り、どんな協力を求めているのかが分からなかったり、そもそも誰にどうやって相談すればいいかも分からないため、一歩を踏み出せないままでいるのが現状です。

つまり、学校も地域も、お互いに関心がないわけではなく、お互いを知る機会がない、お互いのことが「分からない」だけなのです。

共有会に参加してくれたのは学校関係者が多かったため、地域の活動について十分に共有できたわけではありませんでしたが、それでも先生方から「こういうことで困っている」「こういうことをしたいと考えている」という声をいただいたことに対して、いくらでもご提案できる可能性を感じました。

また、ある学校で取り組んでいる活動に対して、他の学校関係者から「こういう連携が考えられるのでは」という意見も挙がり、「一緒にできそうですね」というポジティブな言葉がいくつも生まれました。

特別な企画を考えたわけではなく、ただそれぞれの活動や思いを共有しただけで、新たな視野を開くことができたのではないかと感じています。
もちろん、それまでつながりのなかったところに、新しくつながりができたこと自体も大きな成果といえるでしょう。

私は、この変化を見ながら、協働は特別なプロジェクトから始まるのではなく、対話から始まるということを強く実感しました。

私たちは、いきなり「何を一緒にやるか」を考えがちです。
しかし、その前に必要なのは、「相手はどんな人なのか」「どんな思いで活動しているのか」「何を目的にしているのか」などをお互いに知ることではないでしょうか。

学校と地域の関係も同じです。

お互いのことを知らなければ、信頼関係は生まれません。
信頼がなければ、新しい挑戦にも踏み出しにくくなります。

逆に、お互いを知り、相手の立場や思いを理解できるようになると、「それなら私にも何かできるかもしれない」という前向きな気持ちが芽生えてきます。
大きく、特別なプロジェクトである必要はないのです。

情報を共有することやつながりをつくることは、それ自体が目的というわけではありません。
しかし、それがなければ何も始まらないのです。

今回の共有会で生まれた小さな変化は、そのことを教えてくれました。

そして私は、このような対話の場が、学校と地域の協働を広げる第一歩になると確信しています。

3 なぜ「共有」から始めるか

それは、何かを決める場にしないということでした。
(もちろん、本当は一足飛びにやってしまいたい気持ちはありましたが、ぐっとこらえました笑)

地域連携や学校と地域の協働という話になると、私たちはつい「何をやるか」という話から始めてしまいがちです。

「こんなイベントをやりませんか」
「授業に協力してもらえませんか」
「こんなプロジェクトを立ち上げませんか」

もちろん、それらは行動を起こすためにはどこかで必要な声だと思います。

しかし、まだお互いのことをよく知らない段階で具体的な話を始めると、かえって対話が広がらなくなることがあります。

なぜなら、人は相談されると、無意識のうちに期待に応えようとするからです。

何か良いアイデアを出さなければ。
何か役に立つことを言わなければ。
協力できるかどうか判断しなければ。

この「~しなければ」が実は曲者で、関係ができていない段階でヘタをすれば相談された側の重荷になりかねません。

一方で、以下のようなことを「共有してください」と言われるとどうでしょうか。

今どんな活動をしているのか。
何に悩んでいるのか。
どんなことにやりがいを感じているのか。
どんな方向を目指しているのか。

聞かれているのは自分のこと(自分の所属組織のこと)なので、現状をそのまま話せばよくなります。
(もちろん守秘義務などもあるので話せる範囲で、という条件付きということはいうまでもありません)

そこには正解も不正解もありません。

今回の共有会でも、参加者の皆さんからさまざまな話が出ました。

うまくいっていることばかりではなく、たくさんの困りごとも共有されました。

そのどれもがすぐに解決できる話ではありませんでしたが、少なくともそれぞれが、「何かで役に立てることはないか」という発想に自然に向いていったような印象がありました。

誰かにお願いされたから協力するのではなく、自分ごととして自分が力になれることを考える。

細かいことかもしれませんが、それが大事だと思うのです。

今回の共有会は、最初からそれを意図していたわけではありませんし、誰かが解決策を持っていたわけではありませんでした。

やったのは、自分がやってきたこと、やっていることを話しただけです。
また、そういう場をつくったということだけです。

でも、それが自然と「一緒にやりたい」という気持ちにつながっていったのです。(もちろん、そういう強い想いのある方々が集まったということも大きな要因だと思いますが。)

学校と地域の協働も同じかもしれません。

何をするかの前に、なぜそれをしたいのかを語り合う。
解決策を探す前に、お互いのことを知る。

そんな遠回りに見える時間こそが、実は協働への一番の近道なのだと、今回の共有会は教えてくれました。

4 「大人の居場所」が必要

今回の共有会で感じたことをもう一つ。

それは、子どもたちの居場所づくりが重要というのは参加者の皆さまの話からも十分に理解できるとして、一方で、大人にとっても安心して対話できる場、いわば「大人の居場所」が必要ではないかということです。

近年、子どもの居場所づくりという言葉を耳にする機会が増えました。
放課後の学習支援や子ども食堂、フリースペースなど、地域にはさまざまな取り組みが広がっています。
どれも子どもたちを思う大切な活動です。

しかし、その中で、私は一つの疑問を抱いていました。

「子どもの居場所を支える大人はどうなのだろうか。」

子どもの居場所は、建物や部屋があればできるものではありません。
そこには子どもを見守る大人がいて、お互いに相談し、支え合いながら、地域全体で子どもたちを育てていこうという関係があってはじめて成立するのではないかと思っています。

また、そこには子どもと大人の信頼関係だけでなく、大人同士の信頼関係も必要です。

今回の共有会では、学校、行政、大学、民間企業、そして高校生まで、本当に多様な立場の人たちが集まりました。

話し合いの中で感じたのは、立場が違えど、皆さんが目指している方向は驚くほど似ているということです。

学校だけではできない学びをいかにつくるか。
地域への愛着をいかに育むか。
安心して過ごせる場所を増やしたい。
年齢を超えて、子どもたちのつながりをつくりたい。

それなのに、普段はその思いを伝え合う機会がありません。

学校と地域の間にも同様のことがいえるのではないかと思っています。

お互いに子どもたちのことを大切にして、子どものために良い学びをつくりたいと考えているのに、「学校が動いてくれない」「地域に協力してくれる人がいない」というすれ違いが起きているというのは、一言でいうと「もったいない」と感じてしまいます。

学校の教職員が困りごとや悩みを話せる。
地域の人が想いを伝えられる。
行政や民間企業も気軽に参画できる。

そんな対話の場が地域に根付いていけば、「学校がお願いする」「地域が手伝う」という関係ではなく、「一緒に地域の子どもたちを育てよう」「大人自身も学び合おう」という共創関係へと変わっていくはずです。

だからこそ、まずはお互いを知ることから、共有することから始めましょうと声を大にして言いたい。

大人自身にとっても、安心して話せる居場所、「大人の居場所」が必要なのです。

それが新しい取り組みを生むための土台になる可能性を秘めているからです。

だからこそ、新しいつながりができ、「またやりましょう」という約束が生まれたことが、今回の共有会のもっとも大きな成果だったと考えています。

もっといえば、なんなら大人だけでなく、子どもも交えて語り合える場であってもいいなと思います。

それはこの連載の目的でもある「サード・ラーニング」の姿にも重なるものです。

5 おわりに

ここまで述べてきたとおり、学校と地域の協働は、何か大きなプロジェクトから始まるのではなく、お互いを知り、対話することから始まります。

学校は地域のことを知らず、地域も学校のことを知らない。
その「知らない」という壁を越えることで、「それなら私にもできるかもしれない」「一緒にやってみませんか」という小さな一歩が生まれてくるのです。

一方で、残念ながら、このような対話の場は自然には生まれないというのが現実だと思います。

誰かが声をかけ、人をつなぎ、安心して話し合える場をつくるからこそ、新しい出会いや協働が生まれうるということを痛感しています。

コミュニティ・スクールや地域学校協働本部といった制度や仕組みは、とても大切です。
しかし、それだけで学校と地域がつながるわけではありません。
「つなぐ」役割と機能こそが、これからの地域教育には欠かせないと考えています。

つまり、コーディネーター的な存在です。

では、その「つなぐ」役割は、誰がどうやって担うのか。

それが次の大きな課題として湧き上がってきました。

そのコーディネーターの必要性と可能性については、次回以降で改めて、皆さまと一緒に考えていきたいと思います。

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これまでの連載

第12回
連載「サード・ラーニングのすすめ」:第12回 「お願いする」から「協働する」関係へ(地域編)~ 地域学校協働本部が生み出す双方向の学びの実現に向けて ~

第11回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第11回 「開かれた学校」のその先へ(学校編) ― 地域とともにつくる「これからの学び舎」のカタチ ―

第10回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ(実践編):第10回 「完売御礼」に学びはあるか  ― 起業体験がただの「商売ごっこ」に終わるとき ―

第9回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第9回 自分で決める力を育てる教育としての「アントレプレナーシップ教育」  — 育てたいのは「起業家」なのか —

第8回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第8回 プロジェクトの後に何が残るのか? ——「やりっぱなし」のPBLから脱却するために

第7回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第7回 プロジェクトは教科書を超えるのか? ~経験からの学び~

第6回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第6回 伴走者を超えて「共に創る」  ~ 「第2回弥生祭」での実践から ~

第5回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第5回「社会」が求める探究と「自分」のための探究 ~ 私たちにとって「探究」とは何か ~

第4回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第4回 「いきあたりばっちり」を育む学びの土壌とは? 〜 キタサカまちづくり部を例に 〜(実践編02)

第3回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第3回 学びの「地図」をアップデートする ~ 「学び」の変遷からサード・ラーニングのヒントを探る ~

第2回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第2回 共創による学びを俯瞰する ~ 地域連携プロジェクトから紐解く「学びの生態系」のヒント ~

第1回
「【連載】「サード・ラーニング」のすすめ」をスタートしました(2026年1月15日)

番外編
【連載:番外編】「サード・ラー二ング」のすすめ:参考書籍①『学びのコミュニティづくり』|風間崇志/地域プロジェクトパートナー

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