まなびしごとLABの風間です。
こんにちは!

2026年8月14日(金)、連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第15回:「コーディネーターという「専門職」について ~学びの未来をともにつくる『第3の当事者』~」をnote上で公開しました。

今年から始めた連載企画の第15回です。

noteで公開中ですが、こちらにも転載していきます。

(noteへのリンク)
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ|風間崇志/地域プロジェクトパートナー|note

1 はじめに

「人と人をつなぐだけなら、私じゃなくてもいい」

前回、「コーディネーター」という役割や機能に焦点をあて、私自身の実践を振り返りながら考えてみました。

これまでコーディネーターとして活動する中で、頭の中でずっと問い続けてきた疑問があります。

「人と人をつなぐだけなら、誰でもできるのではないか」
「それなら、別に私じゃなくてもいいのではないか」

実際、誰かを紹介するだけなら、地域のことをよく知っている人や人脈の広い人にもできます。
また、紹介するだけであれば、紹介した後も関わり続ける理由はないともいえます。

では、自分は何をしているのだろう。
自分が関わり続ける必要はあるんだろうか。

そして、ここからもう一つの問いが生まれてきました。

「私の専門性って何だろう?」

これまで、地域の人や学校、企業、自治体の皆さまなどと一緒に、さまざまなプロジェクトに関わってきました。

その中で自分が果たしてきた役割は何なのだろうかと考えてみたくなったのです。

教育の専門家なのか。
まちづくりの専門家なのか。
プロジェクトの専門家なのか。
人と人をつなぐ専門家なのか。

どれも間違ってはいないけれど、どこか違うような。
どれもしっくりきません。

そこで、これまで自分が何を考え、何をしてきたのかを振り返ってみました。

すると、人を紹介するときにも、単純に「条件に合う人」を探しているわけではないことに気づきました。

その人が持っている専門性や経験だけでなく、人との関わり方や考え方、初めて会う人とでも一緒に何かをつくっていけそうか、その出会いが本人にとっても新しい学びや成長につながりそうか。

そうしたことを考えながら判断していたのではないか。

そして、紹介した後も、必要であればプロジェクトに関わり続けることもありました。

つまり、私がやっていたのは「人をつなぐこと」そのものではなく、人と人が出会った先にどんな関係や可能性が生まれるのかを考え、新しい価値をつくり出すこと、そしてそのプロセスそのものをプロジェクトとして捉えていたということに気づいたのです。

では、そこにはどんな専門性があったのか。

地域を知っていること。
人と関係をつくること。
学びを考えること。
プロジェクトを動かすこと。
それぞれに必要な知識や技術がありますが、それらを別々に持っているだけでは、コーディネーターの仕事にはなりません。

異なる人や立場を見ながら、その場に必要な関わり方を考え、自分自身の役割も変えていく。
ときには一歩引き、ときには前に出る。
その判断そのものにも、専門性があるのではないか。

そう考えるようになりました。

そして、その考えを突き詰めていくと、「第3の当事者」という言葉にたどり着きました。

本稿では、学校教育の中でコーディネーターに何が期待されているのかを整理しつつ、私自身の実践を振り返りながら、専門職としてのコーディネーターの役割と可能性を考えてみたいと思います。

2 学校がコーディネーターに期待していること

分かりやすくするために、普段、関わることが多い学校教育の中で、コーディネーターにはどのような役割が期待されているのかを考えてみることにします。

文部科学省が示すコミュニティスクールや地域学校協働活動の中では、コーディネーターには、次のような役割が期待されています。

  • 学校と地域の関係づくり
  • 地域人材・地域資源の発掘
  • 学校と地域の情報共有・連絡調整
  • 協働活動の企画・調整
  • 継続的な協働関係の構築
  • 教員だけに地域連携の負担を集中させない仕組みづくり

つまり、単に「地域の人を学校に紹介する」のではありません。
学校と地域の双方を知り、両者が協働しやすい環境を整えることが、コーディネーターの大きな役割だといえます。

ただ、ここで一つ考えてみたいことがあります。

「地域の人を学校に紹介する」だけなら、単発のマッチングで終わってしまうのではないかということです。

特に探究学習やプロジェクト型の学びでは、むしろマッチングした後の双方の関わり方が重要になってきます。
つまり、つなぐだけでは十分ではないのです。

「どんな人を紹介するか」ではなく、「どんな人と出会うと、そこからどんなことができそうか」

そこがミソであり、コーディネーターとしての腕の見せ所だと私は考えています。

地域には、学校にはない知識や経験、技術を持った人という資源があります。
一方、学校には子どもたちの問いや学び、教員の専門性という資源があります。

コーディネーターは、その二つをただ接続するのではなく、「組み合わせることで、どんな学びや新しい価値が生まれるのか」まで考えることが重要ではないかと思うのです。

ここで、コーディネーターと似たような職種との違いを考えてみることにします。

  • コーディネーター 異なる人同士をつなぐことで、協働が生まれる環境をつくる
  • ファシリテーター 参加者の意見や気づきを引き出し、対話を円滑にする
  • プロデューサー 人や資源を組み合わせ、新しい企画を生み出す
  • ディレクター 関係者に役割を割り振りながら、目指す状態に向けて全体を動かす
  • プロジェクトマネージャー 目標に向けて関係者のプロジェクトを動かす

もちろん、こんなにはっきり区別することはできませんが、概ねこのような違いがあるかと思います、

私も状況に応じてファシリテーターになり、プロデューサーになり、プロジェクトマネージャーにもなることもあります。
そして、人と人、人と組織、組織と組織の関係を整えながら、新しい学びや価値が生まれる土壌をつくっていきます。

そのときに重要なことは、その場に何が必要なのかを見極め、必要な役割を補完していくことです。

では、そんなコーディネーターに求められる「専門性」とは、具体的に何なのでしょうか。

次章では、そこを考えてみることにします。

はい。この整理だと、コーディネーターの専門性を「学習デザイン・プロジェクトデザイン・地域を知る力」の3つに分けるより、「プロジェクトデザイン力」を中心に据えたほうが、これまでの議論ともつながります。

特に「プロジェクト」を単なる計画書や進行管理ではなく、人・関係・情報・学びを動かしながら、目的に向かって全体を設計する営みとして捉えるのがポイントだと思います。

3 コーディネーターの専門性とは何か

コーディネーターに求められる要素を考えると、コミュニケーション力やファシリテーション力、地域との人脈づくりなど、いくつもの要素が思い浮かびます。

その中で、私が考えるコーディネーターの専門性は、「プロジェクト力」ということに尽きるのではないかと考えてます。

人と人をつなぐことそのものではなく、目的に向かって人や資源、関係性を組み合わせ、一つのプロジェクトとして動かしていく力です。

「こうなりたい」「こういう状態を目指す」という共通する目的があり、そこに向かって、誰と、何を、どのような順番で進めていくのか。
そのプロセスを設計し、実行し、必要に応じて組み替えながら、継続していく仕組みまでつくる。
これが、コーディネーターのプロジェクト力です。

そこには大きく4つの機能があると考えています。

一つ目は、目的に向けたプロセスをつくる機能です。

「地域の人に協力してもらう」だけで終わらせず、出会いから活動、振り返り、次の展開までを一つのプロジェクトとして設計する機能です。
誰が、いつ、何をするのかを整理し、継続していくための仕組みまで考えます。

二つ目は、共創関係をつくる機能です。

学校と地域、企業と行政など、立場の違う人たちが関わると、それぞれの「こうしたい」がぶつかることがあります。
その間に入り、お互いの事情や思いを理解しながら、対立関係ではなく、共通する目的に向かって一緒につくる共創関係に変えていく機能です。

三つ目は、全体のバランスを整える機能です。

プロジェクトが動き始めると、情報が一部の人に偏ったり、連絡が行き違ったり、誰かに負担が集中したりします。
全体を俯瞰し、情報共有や連絡調整を行いながら、それぞれが動きやすい状態を整えていく機能です。

四つ目は、人の意欲を動かす機能です。

新しい人に出会ったり、知らなかった情報に触れたりすることによって、「やってみたい」「もっと知りたい」「こんなことができるかもしれない」という気持ちが生まれることがあります。
それによって個人の好奇心やチームとしての意欲を刺激し、可能性を引き出していく機能です。

このように、コーディネーターは、人、地域資源、情報、関係性を組み合わせながら、目的に向かってプロジェクトを動かしていく役割を担っていると考えています。

私は、このプロジェクト力こそが、コーディネーターの専門性なのだと考えています。

ただし、ここでもう一つの問いが生まれてきます。

コーディネーターは、プロジェクトの「外側」にいて、全体を調整するだけでよいのでしょうか。

私は、そうではないと思っています。

コーディネーターは、いわば「第3の当事者」として、自分自身もプロジェクトに関わっていくことが重要ではないかと思うのです。

この「第3の当事者」という考え方が、コーディネーターという仕事をさらに面白いものにするのではないか。
そのようなことを考えるようになりました。

4 「第3の当事者」として共につくる

前章では、コーディネーターの専門性として、プロジェクト力について考えてきました。

プロジェクト力とは、目的に向かってプロセスを設計し、関係者の間に入り、全体を俯瞰しながら、必要な情報や人をつなぎ、共創関係をつくっていく力です。

一見、コーディネーターは当事者ではなく、あくまで間に立つ人だと思われるかもしれません。

学校の先生でもない。
地域の人でもない。
企業の社員でもない。
だからこそ、第三者として間に入ることができる。

確かに、その客観性はコーディネーターの大きな強みとなるものです。

しかし、私は「第三者」というだけでは、少し足りないと感じています。

なぜなら、プロジェクトを本当に前に進めるためには、ときにコーディネーター自身が当事者として動くことが重要だと考えているからです。

たとえば、学校と地域の間で意見が食い違っているとします。

「学校はこうしたい」
「地域としては、そんなやり方では困る」

このとき、どちらの意見が正しいかを判断して、仲裁するだけでは、なかなか前には進みません。

そこで必要なのは、「どちらが正しいか」ではなく、「どうすれば一緒に実現できるか」を考えることです。

そのために、ときにはコーディネーター自身が提案したり、地域の人に声をかけたり、学校と一緒に試行錯誤したりする。

つまり、単に「間に立つ」のではなく、自分もプロジェクトの一員として動くのです。
いわば、「間に立つ人」から「ともにつくる人」への転換です。

私は、これを「第3の当事者」と呼んでいます。

それによって、二者間の対立関係を、三者間の共創関係に変えていくことができます。

学校と地域のどちらかに所属するのではないけれども、どちらにも関わりながらプロジェクトそのものの当事者になる。

この立ち位置だからこそ、既存の関係に縛られず、新しい組み合わせを提案することができます。

もちろん、当事者になりすぎれば、全体を見る視点を失ってしまいますし、逆に客観性を重視しすぎれば調整するだけの人になってしまいます。

だからこそ必要なのは、中に入りながら、同時に全体を見ることです。

一緒に汗をかきながら、一歩引いて全体を見る。
必要なときには前に出て、必要がなくなれば一歩引く。

この行き来こそ、コーディネーターの難しさであり、面白さなのだと思います。
もしかしたら、学生時代に学んだ文化人類学の参与観察という考え方が生きているのかもしれません。

「人と人をつなぐ人」から、「人と人が出会うことで新しい価値が生まれる環境をつくる人」へ。

コーディネーターという仕事を考えていくと、そこには単なる調整役とは違う、新しい専門職の姿が見えてくるのではないかと思います。

5 おわりに

ここまで、コーディネーターに求められる役割や専門性について考えてきました。
では、こうしたコーディネーターを、学校や地域の中でどう位置づけ、どう育てていけばよいのでしょうか。

学校と地域をつなぐ。
人や資源を組み合わせる。
プロジェクトをデザインする。
そして、ときには「第3の当事者」として自らも動く。

こうした仕事は、決して簡単ではありません。

だからこそ、地域のコーディネーターという役割は、「人脈のある人」や「熱意のある人」の個人的な頑張りだけに頼ってはいけないのだと思います。

なぜなら、その一人がいなくなってコーディネート機能が失われてしまったら、地域とのつながりも、プロジェクトも、すべて泡と消えてしまうからです。
それでは、持続可能な仕組みとはいえません。

大切なのは、その人が持っている知識や経験、関係性を、次の人にも引き継げるようにすること。
究極はチームとしてコーディネート機能を担っていくコーディネーターたちが育っていくことだと考えています。

コーディネーターを配置することがゴールなのではありません。

特定のコーディネーターがいなくても協働が生まれるような関係をつくりながら、それでも必要なときには、コーディネーターチームがプロジェクトを創発していく。
いわば、コーディネーターを「人」から「仕組み」にしていくこと。

そんな状態が、一つの理想なのかもしれません。

地域教育がこれからさらに広がっていくとき、コーディネーターという存在もまた、変わっていく必要があります。

「教育は、学校の中だけでつくられるものではない」という考え方そのものを、私たち関係者が少しずつ広げて、共有できるようにしていくことが大切なのではないかと思います。

その中で、学校と地域の新しい関係がアップデートされ続けていくのではないでしょうか。

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これまでの連載

第14回
連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第14回:「学びを共創するコーディネーター ~ なぜ学校・地域・企業をつなぐ『第3の当事者』が必要なのか ~」

第13回
連載「サード・ラーニングのすすめ」:第13回「地域と学校の協働を生み出すための処方箋とは ~ 子どもの居場所づくり共有会の事例から ~」

第12回
連載「サード・ラーニングのすすめ」:第12回 「お願いする」から「協働する」関係へ(地域編)~ 地域学校協働本部が生み出す双方向の学びの実現に向けて ~

第11回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第11回 「開かれた学校」のその先へ(学校編) ― 地域とともにつくる「これからの学び舎」のカタチ ―

第10回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ(実践編):第10回 「完売御礼」に学びはあるか  ― 起業体験がただの「商売ごっこ」に終わるとき ―

第9回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第9回 自分で決める力を育てる教育としての「アントレプレナーシップ教育」  — 育てたいのは「起業家」なのか —

第8回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第8回 プロジェクトの後に何が残るのか? ——「やりっぱなし」のPBLから脱却するために

第7回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第7回 プロジェクトは教科書を超えるのか? ~経験からの学び~

第6回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第6回 伴走者を超えて「共に創る」  ~ 「第2回弥生祭」での実践から ~

第5回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第5回「社会」が求める探究と「自分」のための探究 ~ 私たちにとって「探究」とは何か ~

第4回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第4回 「いきあたりばっちり」を育む学びの土壌とは? 〜 キタサカまちづくり部を例に 〜(実践編02)

第3回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第3回 学びの「地図」をアップデートする ~ 「学び」の変遷からサード・ラーニングのヒントを探る ~

第2回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第2回 共創による学びを俯瞰する ~ 地域連携プロジェクトから紐解く「学びの生態系」のヒント ~

第1回
「【連載】「サード・ラーニング」のすすめ」をスタートしました(2026年1月15日)

番外編
【連載:番外編】「サード・ラー二ング」のすすめ:参考書籍①『学びのコミュニティづくり』|風間崇志/地域プロジェクトパートナー

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