まなびしごとLABの風間です。
こんにちは!

2026年8月28日(金)、連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第16回:「地域に大学があるということ  ~ 地域そのものを学びの場にするという発想 ~」をnote上で公開しました。

今年から始めた連載企画の第16回です。

noteで公開中ですが、こちらにも転載していきます。

(noteへのリンク)
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ|風間崇志/地域プロジェクトパートナー|note

1 はじめに1 はじめに

画像

これまで本連載では、学校と地域の関係について考えてきました。

ここまではコミュニティ・スクールや高校での探究学習などを中心に取り上げてきましたが、地域にある教育機関は小・中・高校だけではありません。

高等教育といわれる「大学」もまた、地域を構成する大切な存在です。
私が住んでいる坂戸市や近隣の地域には、複数の大学がキャンパスを構えており、地域にとっては重要な存在ではないかと考えています。

そのため、本稿では地域と大学との関係について考えてみたいと思います。

現在、大学と地域はどれほど深いつながりを持っているでしょうか。

大学の大きな役割の一つとして、専門的な知識の習得や研究はいうまでもありません。

大学を卒業した学生たちは、やがて多様な社会へと飛び出していきます。
企業で働く人、行政に関わる人、あるいは自ら事業を興す人など、進路は多様ですが、彼らが社会で生きていく上で必要となるのは、専門知識だけではありません。

自ら課題を発見する力、他者と協力する力、そして自分の知識や経験を社会のためにどう活かすかを考える力が求められます。

しかし、ここで重要なことは、こうした力は大学のキャンパス内で座学で学んだり、本を読んでいるだけではなかなか身につかないということです。

だからこそ、地域や社会と地続きの環境で学ぶことが重要であると私は考えます。
それが「地域教育」です。

高校までの教育でも地域連携が重視されるようになった今、その先にある大学には、学んだ知識を社会の現場で実践しながら深めるアプローチがこれまで以上に求められているのではないかと思います。

地域からも担い手の減少を補うため、「学生の手が必要」という声が上がったりします。
なかには学生を無償のボランティアと考えたり、安価な労働力と捉えていると思われるものもあるのは非常に残念なことです。

学生が地域を助けるのでも、地域側が単なる協力者になるのでもなく、大学と地域に関わる一人ひとりが、それぞれの立場から学び、共に新しい価値を生み出していく。
そんな対等で共創する関係を築くことができないか。

本稿ではこのことについて考えてみたいと思います。

2 大学と地域の連携による学びとは

画像

大学で身につけるべき能力はなんでしょうか。

結論からいえば、大きく二つに分けられると私は考えます。

一つは、経済学や建築学といった各専門分野の体系的な学びです。
これはいわば、学問としての学びです。
高等教育機関としての大学ならではの強みといえます。

そしてもう一つが、異なる意見を持つ人と議論し、課題を見つけ出し、自らの考えや専門知識を社会へ還元していく社会で生きるための学びです。
これはいわば、市民としての学びといえます。

この二つは決して断絶されたものではありません。

例えば、ある商店街の活性化という課題に直面したとします。
マーケティングを学ぶ学生は教科書の知識を当てはめようとしますが、実際の現場は一筋縄ではいきません。
そこには店主の長年の思いや地域の歴史、住民の生活実態があるからです。

理想と現実のギャップに直面したとき、学生は「なぜ教科書通りにいかないのか」「自分の知識をどう応用すべきか」を考え始めます。
時には泥臭く、汗をかきながら行動することもあるかもしれません。
この葛藤の時間と量こそが、専門知と体験を結び付け、より深い実践知へと昇華させるのです。

さらに重要なのは、この過程で学ぶのは学生だけではないという点です。

学生と向き合う地域の人々は自らの街を新しい視点から見直し、教員は現場のリアリティから研究や講義への問いを得ます。
また、参画する企業や行政もまた、学生との対話から新たな気づきを得たり、イノベーションの種を見出すといったこともあるかもしれません。

同じ場に居合わせながらも、立場が違えば見えている景色や気づきは異なります。
関わる人が多様であればあるほど学びの解像度は上がり、一人では到達できなかった視点に触れることができる。

これこそが、大学と地域をつなぐ真の意義ではないかと思うのです。

3 地域での共創の学びがイノベーションを生む

画像

大学と地域を実践的につなぐ手法の一つに「サービス・ラーニング」があります。
一言でいえば、地域貢献などの社会活動とそこでの経験を省察する学びを一体化させた教育手法です。

たとえば、学生が地域の子ども向け活動を支援する場合、地域にとっては貴重なサポーターの確保となり、学生にとっては人間関係の構築や教育の原点を学ぶ場となります。

商店街の活性化プロジェクトであれば、学生は経営やデザインの実践を学び、地域は外部視点を得て事業を見直すことができます。
また、企業が新たな着想に出会ったり、教員は新たな研究テーマを見出すこともあるかもしれません。

同じ一つの活動であっても、立場によって得られる「学び」の種類は全く異なります。
仮に「空き店舗の利活用」という一つのテーマであっても、アプローチは多角化します。

  • 経営系の学生: ビジネスモデルの観点から考える
  • 建築系の学生: 空間デザインの観点から考える
  • 福祉系の学生: 地域の居場所づくりの観点から考える
  • 商店主: これまでの商売の経験から考える
  • 行政職員: 制度や都市計画の観点から考える
  • 地域住民: 日々の暮らしやすさの観点から考える

一つの課題に対して異なる視点が交差することで、思いもよらない問いやアイデアが生まれることがあります。

また、地域の課題は、単なる学生用の練習問題ではありません。
そこに関わる全員にとっての学びの素材なのです。

そして何より重要なのは、共に挑んだプロジェクトを通じて学生も地域の人々も深く学び、双方に新たな価値がもたらされる点です。

学生にとっては教科書を超えた成長や実感を伴う経験となり、地域にとっては長年の課題解決や新しい事業・カルチャーの創出につながっていく。

多様な知の融合と実践の積み重ねられ、ひいては地域の課題が解決されたり、地域に新たな価値が生み出されます。
これは大げさにいえば、地域で起こったイノベーションにほかなりません。

大学と地域の連携において問われるべきは、学生に何を学ばせるかという一方的な視点だけではありません。
この場に関わる全員で学び合い、いかに地域の未来につながるイノベーションを起こせるかという共創の視点への転換が必要です。

4 「つなぐ人」から「学びと価値をつくる人」へ

画像

もっとも、大学と地域をただ引き合わせるだけで、こうした循環やイノベーションが自然発生するわけではありません。

大学には教育・研究の論理があり、自治体には行政の論理、企業には経済の論理、高校には中等教育の論理、そして学生には彼ら自身の生活や思いがあります。

背景や目的が異なる組織同士が協働するには、丁寧な設計と調整が不可欠です。

そこで不可欠となるのがコーディネーターの存在です。

コーディネーターの役割は、単なる「人と人との仲介役」に留まりません。本質的な仕事は、異なる立場の人々が掛け合わさることで、どのような新しい価値や学びが生まれるかにあります。

地域の課題と大学の専門知を掛け合わせ、双方にとって意味のあるプロジェクトへ昇華させる。
誰を巻き込み、どのようなプロセスで進めるかを設計し、実際に現場を動かしていく。

コーディネーターとは、大学と地域の「中間に立つ人」ではなく、出会いから新しい学びと地域の変化そのものを創造する人なのです。

学生、教員、企業、行政、住民。
多種多様なプレイヤーが持つ知識や経験を編集し、一人では到達できない学びや革新を形づくっていく。

だからこそコーディネーター自身も、単なる潤滑油ではなく、共に悩み、共に学びながらイノベーションを起こす「第3の当事者」として現場に関わることが求められると考えています。

5 おわりに

画像

地域に大学があることの価値を、いま一度捉え直してみましょう。

大学には学生の熱量があり、専門知識を持つ教員がおり、高度な研究が蓄積されています。

一方、地域には人々の営みがあり、事業があり、豊かな歴史や経験があり、そして未解決の課題が存在します。

両者がつながるとき、地域は共創による学びの場へと変貌します。

それぞれが異なる視点から学び手となり、関わる人が増えるほど学びは多層的になっていく。
自分とは異なる価値観と出会い、新たな問いが生まれ、それが次の学びにつながったり、具体的な課題解決や新たな価値創造へと波及していく。

地域を学びの場にすることの本質は、学生のために地域を模擬教室として借りることではありません。

地域に関わるあらゆる人々が共に学び合い、知恵を出し合いながら、課題解決や新たな価値を生み出していくプラットフォームを築くことです。

そこには「教える側」と「教えられる側」という固定された上下関係はありません。
ともに学び合い、教え合い、助け合う仲間になります。

誰もがお客さまにならず、それぞれの持てる知恵や経験、熱量を持ち寄って共に問い、共につくり上げていく共創関係を築くことができるのではないかと思います。

そのとき、キャンパスの壁は溶け出し、商店街も、地元企業も、役所のフロアも、すべてが活気ある「教室」であり「イノベーションの実験場」へと変わります。
地域に眠る課題や出会いのすべてが、誰もが参加できる探究テーマになるのです。

大学と地域が真につながると、地域全体が一つの巨大な学び場になります。
学生だけでなく、関わる大人たちすべてが学び、成長し、それとともに地域に変化が生まれてきます。

そうした偶発的な出会いを意図的にセッティングし、新たな学びと社会的価値を生み出していくこと。
それこそが、地域と大学が連携することの大きな意義であり、それを促進することがこれからのコーディネーターが担う重要な役割ではないでしょうか。

あなたの地域には、どんな学びやイノベーションの種が眠っているでしょうか。

===

これまでの連載

第15回
連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第15回:コーディネーターという「専門職」について ~学びの未来をともにつくる『第3の当事者』~

第14回
連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第14回:「学びを共創するコーディネーター ~ なぜ学校・地域・企業をつなぐ『第3の当事者』が必要なのか ~」

第13回
連載「サード・ラーニングのすすめ」:第13回「地域と学校の協働を生み出すための処方箋とは ~ 子どもの居場所づくり共有会の事例から ~」

第12回
連載「サード・ラーニングのすすめ」:第12回 「お願いする」から「協働する」関係へ(地域編)~ 地域学校協働本部が生み出す双方向の学びの実現に向けて ~

第11回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第11回 「開かれた学校」のその先へ(学校編) ― 地域とともにつくる「これからの学び舎」のカタチ ―

第10回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ(実践編):第10回 「完売御礼」に学びはあるか  ― 起業体験がただの「商売ごっこ」に終わるとき ―

第9回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第9回 自分で決める力を育てる教育としての「アントレプレナーシップ教育」  — 育てたいのは「起業家」なのか —

第8回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第8回 プロジェクトの後に何が残るのか? ——「やりっぱなし」のPBLから脱却するために

第7回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第7回 プロジェクトは教科書を超えるのか? ~経験からの学び~

第6回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第6回 伴走者を超えて「共に創る」  ~ 「第2回弥生祭」での実践から ~

第5回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第5回「社会」が求める探究と「自分」のための探究 ~ 私たちにとって「探究」とは何か ~

第4回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第4回 「いきあたりばっちり」を育む学びの土壌とは? 〜 キタサカまちづくり部を例に 〜(実践編02)

第3回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第3回 学びの「地図」をアップデートする ~ 「学び」の変遷からサード・ラーニングのヒントを探る ~

第2回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第2回 共創による学びを俯瞰する ~ 地域連携プロジェクトから紐解く「学びの生態系」のヒント ~

第1回
「【連載】「サード・ラーニング」のすすめ」をスタートしました(2026年1月15日)

番外編
【連載:番外編】「サード・ラー二ング」のすすめ:参考書籍①『学びのコミュニティづくり』|風間崇志/地域プロジェクトパートナー

メルマガ「月刊 地域でしごとをつくるマガジン」を発行しています

毎月はじめに、メルマガ「月刊 地域でしごとをつくるマガジン」を発行しています。

前月に取り組んだ各プロジェクトの状況、一般社団法人ときがわ社中の活動、地域でのしごとづくりに役立つ本のご紹介、今後の予定などをまとめています。

サンプルや登録フォームはこちらのページからご覧いただけます。

地域でのしごとづくりに取り組んでいる皆さまのお力になれたら嬉しいです!