まなびしごとLABの風間です。
こんにちは!
2026年6月12日(金)、連載「『サード・ラーニング』のすすめ」の第11回「「開かれた学校」のその先へ(学校編) ― 地域とともにつくる「これからの学び舎」のカタチ ―」をnote上で公開しました。
今年から始めた連載企画の第11回です。
noteで公開中ですが、こちらにも転載していきます。
(noteへのリンク)
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ|風間崇志/地域プロジェクトパートナー|note
はじめに

前回の連載では、総合的な探究の時間における起業体験を例に、大人の善意による「失敗させない先回り」が、子どもたちの「自分で決めるチャンス」を奪ってしまうことについてお話ししました。
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ(実践編):第10回 「完売御礼」に学びはあるか ― 起業体験がただの「商売ごっこ」に終わるとき ―
そして、子どもたちが主体的に挑戦するためには、「何をやるか」だけではなく、「何のためにやるのか」という目的を共有することが大切だとお伝えしてきました。
今回は、教育の大きな柱といえる学校教育を巡る動き、とりわけ「コミュニティ・スクール」のについて取り上げてみることにします。
近年、学校を取り巻く環境は大きく変化しています。
不登校への対応、特別な支援が必要な子どもへの対応、部活動の地域移行、探究学習やキャリア教育の充実など、学校に求められる役割は年々増えています。
また、一方では先生方の働き方改革や教師のなり手不足なども課題として挙げられています。
それに対して、学校と地域の連携への期待が高まっています。
学校の先生に限らず、地域には多様な知識や経験を持つ大人たちがいます。
その地域の大人を、広義の「先生」として捉えれば、学校だけで子どもたちを育てるのではなく、地域全体で学びを支えていくことができるかもしれない。
私自身も、そのような形を「地域教育」と捉え、学校と地域の連携に期待している一人です。
では学校と地域をつなぐ制度や仕組みには、どのようなものがあるでしょうか。
まずは代表的な仕組みとして、主に次の3つが挙げられるかと思います。
① PTA
保護者と教職員が協力しながら、子どもたちの健やかな成長を支えるための組織です。近年では、保護者の負担を軽減するために、役員などの義務をなくしたり、組織は解消したり、無理ない範囲でのボランティアによる仕組みを整えたり、児童生徒や地域コミュニティも加えた「PTSCA」の形を模索する事例もあるようです。
② 学校応援団
保護者だけでなく地域の方々のボランティアを募り、授業支援や見守り活動、環境整備など、学校に関わる応援団として担ってもらう仕組みです。
③ コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)
地域住民や保護者が学校運営にも参画し、「どんな子どもを育てたいか」を学校とともに考える仕組みです。
この3つは似ているようで役割が異なります。
特にコミュニティ・スクールは、従来のようなただ学校を支援する仕組みではなく、地域とともに学校をつくる仕組みとして、近年、導入する学校が増えています。
今回は、このコミュニティ・スクールに焦点を当てながら、学校と地域の新しい関係性について考えていきたいと思います。
2 「開く」から「ともにつくる」へ

コミュニティ・スクールとは、「学校運営協議会」を設置している公立学校のことです。
2004年の法律(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)改正により、位置づけられました。
学校運営協議会とは、簡単にいえば学校と地域住民、保護者が互いに目標を共有しながら、地域とともにある学校づくりを進めようという仕組みです。
ここでは、コミュニティ・スクールの導入の背景について、簡単に整理しておきたいと思います。
コミュニティ・スクールの前身として、学校評議員制度というものがあります。
これは、1990年代後半に教育改革の課題として、開かれた学校づくりが提起されたことを受け、2000年に導入された制度です。
地域住民や保護者などが学校評議員となり、校長先生が学校運営について意見を聞く仕組みがつくられ、開かれた学校づくりに向けた第1段階のシステムになりました。
地域の声を学校に届けるという意味で、大きな意義がありました。
しかし、学校評議員制度には、評議員はあくまで校長の求めに応じて意見を述べる立場にとどまるという課題がありました。
学校運営について最終的に決めるのは学校であり、地域はどうしても外側から見守る立場になりやすかったのです。
そうなると当然、「意見は言ったけれど、その後どうなったのか分からない」ということがあったり、勝手な意見を言いたい放題に言うということも起こりました。
あくまで学校は学校、地域は地域という枠組みは変わらないままでした。
そこで、開かれた学校づくりの第2段階として生まれてきたのがコミュニティ・スクール(学校運営協議会)です。
コミュニティ・スクールでは、学校運営協議会を通じて地域住民や保護者が学校運営に参画します。
学校評議員制度とのもっとも大きな違いは、権限と当事者性にあります。
学校評議員制度では、評議員は校長の求めに応じて意見を述べるだけでしたが、コミュニティ・スクールでは、地域住民等が学校運営の当事者として参画し、どのような子供を育てたいかという目標やビジョンを共有することとされています。
また、校長が作成する学校運営の基本方針に対する承認の権限を持つため、運営に一定の責任を負うというのが大きな特徴です。
大切なのは、ただ学校の意見を聞いたり、意見を述べたりすることではなく、どんな子どもを育てたいかを一緒に考えたり、そのためにどんな学校教育を行えばいいかを考え、ともにつくっていくことができるということだと思います。
学校評議員制度からコミュニティ・スクールへの移行は、学校をともにつくる関係への変化だといえるでしょう。
学校だけが教育を担うのではなく、地域も当事者として子どもたちの成長に関わるための土台となる仕組みとして期待されています。
3 コミュニティ・スクールで変わる学校

さて、開かれた学校づくりに向けた第2段階のシステムとして、コミュニティ・スクールが導入されたことにより、地域住民や保護者が学校運営により積極的に参画することが可能になりました。
では、そのことによって学校や先生にどのような影響が生じるかについて考えて見たいと思います。
コミュニティ・スクール導入によるメリットとして、主に次のようなものが挙げられます。
【学校・先生にとってのメリット】
① 学校課題を地域と共有できる
不登校への対応や部活動の地域移行など、学校が抱える課題は複雑化しています。コミュニティ・スクールが機能すると、こうした課題を学校だけで抱え込まず、地域全体の課題として考えられるようになります。
② 学校の理解者・応援者が増える
先生方の仕事は授業だけにとどまりません。学校行事の企画・運営や校務、保護者対応など、学校におけるあらゆる出来事に関わっています。一方で、近年では教員の働き方改革などの必要性が叫ばれています。そのような中で、保護者だけでない、学校の事情の理解者、学校に関わってくれる応援者を増やす仕組みでもあります。
③ 先生が本来の仕事に集中しやすくなる
地域人材が授業支援や体験活動に関わることで、先生方は授業づくりや子どもとの関わりにより多くの時間を使えるようになります。先生方が不得手なことでも、地域の人の力を積極的に頼ることで、先生だけではできない質の高い学びを子どもたちに提供することもできるようになります。
また、コミュニティスクールによって、影響を受けるのは学校や先生方だけではありません。
当然ながら、学校で学ぶ主体である児童生徒にとっても大きなメリットがあります。
コミュニティ・スクールによる児童生徒のメリットとして、次のようなものが考えられます。
【児童生徒にとってのメリット】
① 多様な大人との出会いが生まれる
地域にはさまざまな仕事や生き方をしている大人がいます。親や先生以外の、そうした大人たちとの出会いは、自分の視野を広げ、将来の選択肢の拡張にもつながります。
② 本物に触れる体験
地域の人やモノゴトを学びの題材とし、地域全体を学びのフィールドと捉えることで、教科書だけでは学べない生きた学びが生まれます。本物に触れる体験は何より大きな学びのきっかけとなります。
③ 学校以外の居場所
地域とのつながりは、子どもたちにとって安心できる居場所や応援してくれる大人を増やすことにもつながります。
もちろん、まだまだコミュニティ・スクールの取り組みは発展段階であり、すべてが理想的に進んでいるわけではありません。
また、地域との関係づくりには非常に時間がかかる側面もあります。
ただ、このような学校と地域の協働の仕組みには、ここに挙げたもの以外でもまだまだ大きく、そして多くの可能性があると私は考えています。
4 コミュニティ・スクールの今後の課題

これまで見てきたように、コミュニティ・スクールには多くの可能性があり、また今後も大きな発展可能性があると思います。
しかしながら一方で、その可能性を阻む課題も見られるのが現状です。
以下では、私が考えるコミュニティ・スクールの課題について述べていきます。
課題① 承認のための会議
校長の求めに応じて意見を述べるだけだった学校評議員制度に対して、コミュニティ・スクールでは承認などの一定の権限があるのが特徴です。
しかし、実際には、学校が用意した資料を確認し、「承認」して終わるといったシャンシャン的な形式的な会議になっているケースも少なくないようです。
課題② 地域が当事者になりきれない
課題①と表裏一体ですが、地域の側も、学校から会議の場が設定されるのを待つという姿勢になってはいないかということです。
学校から相談されるのを待つだけの関係では、地域は当事者になれません。
本来であれば、地域側からも自発的に提案が生まれる状態が理想だと考えています。
しかし現状では、そのような双方向の関係を築けている地域はまだ多くないようです。
課題③ 対話の頻度が圧倒的に足りない
年に数回の会議だけで信頼関係を築くことは簡単ではありません。
学校も地域も、お互いのことを十分に知らないまま話し合っているケースもあります。
だからこそ必要なのは、会議だけではない日常的な対話だと考えています。
課題①、課題②とも密接に関わる根幹的な課題かもしれません。
上に述べた課題は、私も学校運営協議会に関わる中で、自戒として感じていること含めて書き出したものです。
先日、埼玉県主催のコーディネーター研修で、長野県のある小中学校での実践事例をお聞きして、非常に大きな刺激をいただきました。
・埼玉県主催の地域学校協働活動推進研修「コーディネーター研修会」に参加しました(2026年5月26日)
そこではまさに、
「こんな学びができるのではないか」
「こんな地域資源を活用できるのではないか」
と地域側からの提案がなされ、先生方とともに協働して実践する仕組みがつくられていました。
それを見て、
「ここまでやっていいんだ」
「学校と地域が協働で取り組むからこそ、子どもにとっても大人にとってもよりよいことができる」
という新しい視野を開くことができました。
学校だけ、地域だけではなく、学校と地域がどのように協働して、その地域ごとに真のコミュニティ・スクールをいかに実現していくか。
それがこれからの取り組みいかんにかかっています。
5 おわりに

今回は、私が今注目しているコミュニティ・スクールの概要について、自ら関わる中で感じていることも含めて整理してみました。
その中で改めて感じたのは、学校評議員制度にしてもコミュニティ・スクールにしても、どのような会議体かという問題ではないんだよなあ、ということでした。
単なる「会議」では、本来の目的である「どんな子どもを育てたいか」という議論が生まれませんし、当然ながら実行に移すための行動も生まれません。
確かに先生方が忙しい中で年数回の会議を設けるだけでも負担が大きいという事情もあるかもしれません。
地域の方に遠慮して・・・ということもあるかもしれません。
でも、こうした形式的な会議に終わるのでは、それこそ骨折り損ということにもなりかりかねません。
本来、コミュニティ・スクールが目指しているのは、どのような会議体であるか、何を話し合うかということではなく、学校と地域がどういう関係性を築くかということに尽きると思います。
もっといえば、そこでどのように話し合うか、話し合ったことをどう行動に移していけばいいのかという対話が生まれることにこそ、意味があるのではないかと考えています。
そして、そのような積み重ねが、子どもたちはもちろん、先生方も含めた関わる大人たちにとって、学校をよりよい学びの場とし、そのための学校と地域の関係づくり、ひいては地域全体をより良くしていくといった実践・行動につながっていくのだと思います。
次回は、コミュニティ・スクールとの両輪をなす、地域側の具体的な活動を担う「地域学校協働活動」について取り上げてみたいと思います。
これまでの連載
第10回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ(実践編):第10回 「完売御礼」に学びはあるか ― 起業体験がただの「商売ごっこ」に終わるとき ―
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第9回 自分で決める力を育てる教育としての「アントレプレナーシップ教育」 — 育てたいのは「起業家」なのか —
第8回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第8回 プロジェクトの後に何が残るのか? ——「やりっぱなし」のPBLから脱却するために
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第7回 プロジェクトは教科書を超えるのか? ~経験からの学び~
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第6回 伴走者を超えて「共に創る」 ~ 「第2回弥生祭」での実践から ~
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【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第5回「社会」が求める探究と「自分」のための探究 ~ 私たちにとって「探究」とは何か ~
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第1回
「【連載】「サード・ラーニング」のすすめ」をスタートしました(2026年1月15日)
番外編
【連載:番外編】「サード・ラー二ング」のすすめ:参考書籍①『学びのコミュニティづくり』|風間崇志/地域プロジェクトパートナー
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前月に取り組んだ各プロジェクトの状況、一般社団法人ときがわ社中の活動、地域でのしごとづくりに役立つ本のご紹介、今後の予定などをまとめています。
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