まなびしごとLABの風間です。
こんにちは!
2026年10月23日(金)、連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第20回:「なぜ、地域教育を事業として成立させる必要があるのか? ~地域教育とお金の問題を考える④~」をnote上で公開しました。
今年から始めた連載企画の第20回です。
noteで公開中ですが、こちらにも転載していきます。
(noteへのリンク)
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ|風間崇志/地域プロジェクトパートナー|note
1 はじめに

第17回から19回にかけて、「地域教育とお金」を大きなテーマとして、地域教育とコーディネーターという仕事の価値について考えてきました。
第17回では、地域に必要な人を、どうすれば仕事として成立させられるのかを考えました。
連載「サード・ラーニング」のすすめ 第17回: 「コーディネーターを『ちゃんと仕事にする』には ~ 地域教育とお金の問題を考える① ~」
第18回では、そのためには、コーディネーターがどんな価値を生み出しているのかを、きちんと伝える必要があるのではないかと述べました。
連載「サード・ラーニング」のすすめ 第18回:「コーディネートの『価値』をどう伝えるか ~ 地域教育とお金の問題を考える② ~」
そして第19回では、プロジェクトの成果をどう測るかについて考えました。
活動の結果として何ができたのかだけでなく、そのプロセスを通して、どんな学びや変化、関係性が生まれたのか。
そうした成果を見つけ、次のプロジェクトにつなげていくことが大切ではないかということを述べました。
連載「サード・ラーニング」のすすめ 第19回:「変化の「価値」をどう測るか ~ 地域教育とお金の問題を考える③ ~」
こうして振り返ってみると、地域教育に関わるコーディネーターの仕事は、単に人を紹介するだけでなく、時間も専門性も必要だなあと改めて実感します。
また、そういう役割がこれからの地域教育においてはますます重要になるのではないかとも感じました。
だからこそ、その価値をしっかりと伝え、対価を得られる「仕事」にしていくことが必要だという想いも強くなりました。
地域教育とお金を考えるシリーズの締めくくりとして、ここで今一度考えてみたいことがあります。
そもそも、なぜ事業として成立させる必要があるのでしょうか。
私自身のことだけを考えるのであれば、自分が活動できる間だけ、ボランティアでも、多少無理をしてでも続ければいいですし、自分がいなくなった後のことまで考えなければ、わざわざ事業として成立させる必要はないのかもしれません。
もちろん、私自身も経営者なので、仕事として収入を得たいという思いはあります(笑)。
ただ、今回考えたいのは、私自身がどうやって稼ぐかということではありません。
例えば、学校と地域の連携を考えてみます。
地域の人と学校をつなぎ、先生方の負担を減らしながら、子どもたちの学びを豊かにする役割を担う人がいたとしても、その人がいなくなったら、また先生方が自分で地域の人を探し、連絡し、調整しなければならない。
結局、特定の誰かが頑張り続けなければ、学校と地域の連携が進まないという状況は変わらないのです。
それでは、一時的に課題が見えなくなっただけで、課題を解決したことにはならないのではないでしょうか。
本当に課題が解決したというためには、特定の誰かだけの頑張りに依存せず、次の誰かが役割を引き継いだり、チームとして機能することができる仕組みが構築される必要があるのではないか。
そして、そのためにはコーディネーターという役割が「仕事」として成立する必要があるのではないか。
そんなふうに考えるようになりました。
では、どうすればそのような状態をつくることができるのでしょうか。
今回は、この問いについて考えてみたいと思います。
2.コーディネーターの仕事が成立しないと、何が起こるのか

まずは改めて、コーディネーターの役割が仕事として成立しない場合に、どんなことが起こりうるのかを考えてみることにします。
地域教育のプロジェクトには、学校の先生方、子どもたち、地域の人や専門家、そしてコーディネーターなど、さまざまな人が関わります。
それぞれの立場から整理してみます。
● 学校の先生方
地域の人や企業と一緒に学びをつくることは、子どもたちにとって貴重な経験になります。
一方で、協力してくれる人を探したり、活動内容や日程を調整したりするには、多くの時間と労力が必要です。
コーディネーターが仕事として関わる仕組みがなければ、こうした業務を先生方が担うことになります。
その結果、地域との連携に関心があっても、日々の業務に追われて取り組めなかったり、担当する教員によって活動の内容や質が変わったりする可能性があります。
● 子どもたち
地域には、学校の中だけでは出会えない仕事や生き方、専門的な知識を持つ人たちがいます。
そうした人との出会いは、子どもたちの興味・関心を育てたり、将来の選択肢を広げたりするきっかけになります。
しかし、連携を支える仕組みがなければ、出会える人や体験できることが限られてしまいます。
また、学校や担当者によって、学びの機会に差が生まれることも考えられます。
● 地域人材にとって
地域の中には、「子どもたちのために何かしたい」「自分の経験を役立てたい」と考える人たちがたくさんがいます。
しかし、学校側のニーズが分からなかったり、誰に相談すればよいか分からなかったりすると、思いがあっても関わるきっかけをつかめません。
また、仮に関わりができたとしても、細かな調整や準備の負担が大きくなり、継続的に関わることが難しくなるおそれもあります。
● 専門家や企業にとって
専門的な知識や技術を持つ人、地域貢献や人材育成に取り組みたい企業にとっても、学校との連携は新たな価値を生み出す機会です。
ただ、学校が何を求めているのか、どんな形で関わればよいのかが分からなければ、最初の一歩を踏み出しにくくなります。
せっかくの知識や経験が、子どもたちの学びにつながらないまま終わってしまうこともあります。
● コーディネーターにとって
そして、コーディネーター自身にも影響があります。
専門性や経験を積み重ねても、それに見合う対価を得られなければ、別の仕事で生計を立てながら活動することになります。
結果として、活動に使える時間が限られたり、経験を次の人に伝えたりする余裕がなくなったりします。
必要とされている役割であっても、それだけでは担い手が増えるとは限りません。
こうして見ると、コーディネーターの仕事が成立しないことによる影響は、コーディネーター個人だけの問題ではないことが分かります。
先生方の負担が減らず、子どもたちの学びの機会が限られ、地域人材や専門家の思いも活かしきれない。
そして、連携を支える人も育たない。
それぞれの人に意欲や能力があっても、それらをつなぎ、継続的な活動にしていく役割が不安定なままでは、地域教育の可能性を十分に活かすことが難しくなってしまうのです。
では、コーディネーターの仕事を事業として成立させることで、こうした状況をどう変えられるのでしょうか。
3.事業として成立させることは、何を意味するのか

では、コーディネーターの仕事を事業として成立させると、何が変わるのでしょうか。
まず考えられるのは、必要な仕事に対して、きちんと対価を支払えるようになることです。
学校と地域をつなぐには、相手を探す時間も、打ち合わせをする時間も、活動を振り返る時間も必要です。
実際に人が集まる当日だけでなく、その前後にも多くの仕事があります。
そうした仕事に対価が支払われれば、コーディネーターは活動に必要な時間を確保し、経験や専門性を積み重ねていくことができます。
無理をして時間を捻出するのではなく、仕事として責任を持って取り組めるようになるのです。
ただし、事業として成立させる意味は、それだけではありません。
最も大切なのは、個人の頑張りに頼っていた役割を継続できる仕組みに変えていくことだと考えています。
例えば、コーディネーターが一人で学校と地域をつないでいる場合、その人がいなくなれば活動が止まってしまうかもしれませんが、学校との関係や地域人材の情報、連携を進めるためのノウハウを蓄積し、ほかの人と共有できればどうでしょうか。
一人で抱えていた仕事をチームで担ったり、新たな担い手を育てたりすることも可能になります。
経験を次の人に引き継ぐことで、これまで築いてきた関係や仕組みを残していくこともできます。
また、事業として継続するためには、誰にどんな価値を提供し、その対価を誰から得るのかを考えなければなりません。
例えば、学校にとっては教員の負担軽減や学びの充実、企業にとっては人材育成や地域との新たな接点、自治体にとっては地域全体で子どもたちの学びを支える仕組みづくりが価値になるかもしれません。
こうした価値を明らかにすることで、学校だけに費用負担を求めるのではなく、企業や自治体など、複数の主体が役割に応じて費用を負担する形も考えられます。
もちろん、事業にすれば、すべてがうまくいくわけではありません。
収入を得ることが目的になり、本来大切にしたい子どもたちの学びや地域との関係がおろそかになっては本末転倒だからです。
だからこそ、何のためにこの仕事をするのか、誰にどんな価値を届けるのかを問い続ける必要があります。
事業として成立させることは、単にお金を稼ぐことではなく、必要な役割を続けられる状態をつくり、その価値を次の人や組織へとつないでいくこと。
私は、そこに大きな意味があると考えています。
4.自分が続けられることから、次の人が担えることへ

では続けられる状態をつくるために、私たちはどうすればいいのでしょうか。
私自身、地域教育や地域のプロジェクトに関わる仕事を続けてきました。
自分が動くことで人がつながり、新しいプロジェクトが生まれる。
それは面白いですし、やりがいもあります。だからこそ、多少無理をしてでも続けようと思うことがあります。
ただ、自分が続けられることと、他の人が続けられることは同じではありません。
自分の経験や人脈、個人的な頑張りによって成り立っている仕事は、ほかの人がそのまま引き継げるとは限りません。
仕事の進め方が見えなかったり、必要な時間や労力に見合う収入が得られなかったりすれば、引き継ぎたい人がいたとしても引き継ぐのが難しくなってしまいます。
また、「地域のためになる仕事だから」という理由だけで、次の人にも無理を求めるわけにはいきません。
では、どうすれば次の人が担える仕事になるのでしょうか。
例えば、必要な要素として次のようなことが考えられるのではないかと思います。
- 仕事の内容を明らかにする
人を紹介するだけでなく、目的の整理、関係者との調整、プロジェクトの立ち上げ、振り返りなど、どんな役割が必要なのかを言葉にして残す。 - 経験やノウハウを共有する。
個人の頭の中だけに仕事の進め方をしまい込まず、記録や対話を通じて共有する。ほかの人が学び、実践できる機会をつくる。 - 一人で抱えず、チームで担う。
すべてを一人でできる人を探すのではなく、それぞれの得意分野を生かしながら、複数の人で役割を分担できる形を考える。 - 仕事に必要な対価を確保する
誰がどんな価値を受け取り、そのために誰が費用を負担するのかを考える。善意や持ち出しを前提にせず、継続できる収支をつくる。
こうした取り組みは、すべて当たり前のことのように見えるかもしれませんが、これまで暗黙知に行われてきた部分が多く、すぐにできることばかりではないかと思います。
仕事として成立させるためには、受け取る価値に対して対価を支払ってくれる「お客さま」を確保することも必要です。
(ここが教育という領域においは一番難しいことかもしれません!)
それでも、自分が活動できている今だからこそ、次の人が担える状態をつくることに意味があるのだと思います。
ただし、ここでいう「次の人」は、必ずしも私と同じ仕事をする人でなくてもいいと思っています。
地域の中で役割を分担したり、学校や企業、自治体がそれぞれできることを担ったりする形も考えられます。
大切なのは、自分と同じ人をつくることではなく、地域の教育において必要な役割が地域内で担われる状態をつくることです。
地域教育を支える仕事を個人的な活動で終わらせないために、引き続き考えていきたいと思っています。
5.おわりに

実は、これまであまり書いてきませんでしたが、次の人に引き継いでいく必要があると考える理由は、もう一つあります。
ごく当たり前のことですが、私自身も年をとるからです(笑)
例えば、高校との関わりを考えてみます。
もちろん高校生は毎年入れ替わりますが、私が年を重ねても、相手が「高校生」なのはずっと変わりません。
つまり、私と高校生との年齢差は、これからどんどん大きくなっていくのです。
その間の隔たりは、誰がどうやって埋めていく、あるいはつなげていく必要があるのでしょうか。
だからこそ、地域には、学校や企業、行政といった領域を超えた「横のつながり」だけでなく、世代を超えた「縦のつながり」も必要なのだと思います。
そのためにも若い世代が地域のプロジェクトに参加し、経験を積み、やがて次の世代と一緒に活動できるような状態がつくれたらと考えています。
そうした循環が生まれれば、地域で培われた経験や関係性を、少しずつ次の人へとつないでいくことができます。
そのためにも、地域教育を支える仕事を、特定の誰かの頑張りだけに頼るのではなく、次の人が関われる仕事として成立させていきたい。
私自身がプレイヤーとして関わり続けていきたいのはもちろんですが、私がいなくなっても、地域の中で人がつながり、新しいプロジェクトが生まれ続けるような地域になっていくにはどうしたらいいのか。
そのために何ができるのかを、これからも考え、実践し続けていきたいと思います。
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これまでの連載
第19回
連載「サード・ラーニング」のすすめ 第19回:「変化の「価値」をどう測るか ~ 地域教育とお金の問題を考える③ ~」
第18回
連載「サード・ラーニング」のすすめ 第18回:「コーディネートの『価値』をどう伝えるか ~ 地域教育とお金の問題を考える② ~」
第17回
連載「サード・ラーニング」のすすめ 第17回: 「コーディネーターを『ちゃんと仕事にする』には ~ 地域教育とお金の問題を考える① ~」
第16回
連載「サード・ラーニング」のすすめ 第16回: 地域に大学があるということ ~ 地域そのものを学びの場にするという発想 ~
第15回
連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第15回:コーディネーターという「専門職」について ~学びの未来をともにつくる『第3の当事者』~
第14回
連載「『サード・ラーニング』のすすめ」第14回:「学びを共創するコーディネーター ~ なぜ学校・地域・企業をつなぐ『第3の当事者』が必要なのか ~」
第13回
連載「サード・ラーニングのすすめ」:第13回「地域と学校の協働を生み出すための処方箋とは ~ 子どもの居場所づくり共有会の事例から ~」
第12回
連載「サード・ラーニングのすすめ」:第12回 「お願いする」から「協働する」関係へ(地域編)~ 地域学校協働本部が生み出す双方向の学びの実現に向けて ~
第11回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第11回 「開かれた学校」のその先へ(学校編) ― 地域とともにつくる「これからの学び舎」のカタチ ―
第10回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ(実践編):第10回 「完売御礼」に学びはあるか ― 起業体験がただの「商売ごっこ」に終わるとき ―
第9回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第9回 自分で決める力を育てる教育としての「アントレプレナーシップ教育」 — 育てたいのは「起業家」なのか —
第8回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第8回 プロジェクトの後に何が残るのか? ——「やりっぱなし」のPBLから脱却するために
第7回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第7回 プロジェクトは教科書を超えるのか? ~経験からの学び~
第6回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第6回 伴走者を超えて「共に創る」 ~ 「第2回弥生祭」での実践から ~
第5回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第5回「社会」が求める探究と「自分」のための探究 ~ 私たちにとって「探究」とは何か ~
第4回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第4回 「いきあたりばっちり」を育む学びの土壌とは? 〜 キタサカまちづくり部を例に 〜(実践編02)
第3回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第3回 学びの「地図」をアップデートする ~ 「学び」の変遷からサード・ラーニングのヒントを探る ~
第2回
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第2回 共創による学びを俯瞰する ~ 地域連携プロジェクトから紐解く「学びの生態系」のヒント ~
第1回
「【連載】「サード・ラーニング」のすすめ」をスタートしました(2026年1月15日)
番外編
【連載:番外編】「サード・ラー二ング」のすすめ:参考書籍①『学びのコミュニティづくり』|風間崇志/地域プロジェクトパートナー
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前月に取り組んだ各プロジェクトの状況、一般社団法人ときがわ社中の活動、地域でのしごとづくりに役立つ本のご紹介、今後の予定などをまとめています。
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