まなびしごとLABの風間です。
こんにちは!
2026年2月27日(金)、連載「『サード・ラーニング』のすすめ」の第4回「いきあたりばっちり」を育む学びの土壌とは? 〜 キタサカまちづくり部を例に 〜(実践編02)をnote上で公開しました。
今年から始めた連載企画の第4回です。
noteで公開中ですが、こちらにも転載していきます。
(noteへのリンク)
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第4回 「いきあたりばっちり」を育む学びの土壌とは? 〜 キタサカまちづくり部を例に 〜(実践編02)|風間崇志/地域プロジェクトパートナー
第4回 「いきあたりばっちり」を育む学びの土壌とは? 〜 キタサカまちづくり部を例に 〜(実践編02)
1 はじめに
第3回では主だった学習理論の変遷について解説しました。
行動主義や認知主義の「正解に効率的にたどり着くことを目的とする学び」から、構成主義の「自ら意味をつくる学び」へ、そして社会構成主義や状況学習論の「仲間と共に、実践の中でつくられる学び」へと、学びの捉え方は時代とともに変化してきました。
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第3回 学びの「地図」をアップデートする ~ 「学び」の変遷からサード・ラーニングのヒントを探る ~|風間崇志/地域プロジェクトパートナー
このことは、AからBに変わったというよりは、「A以外にもBやCという考え方もあるよね」ということだと考えています。
実際に行動主義や認知主義で明らかにされた、人間の学びに関する癖や反応が、現代の教育にも活かされていることからも分かるかと思います。
とはいえ、私のここでの興味は、個人の学び(第1の学び)や学校・企業での組織の学び(第2の学び)よりも、異なる属性の多様な個の集まりによる学び合いにあります。
私はこれをサード・ラーニング(第3の学び)と捉えています。
そこで今回は、実践編の第2回として、私が埼玉県坂戸地域(特に北坂戸駅周辺エリア)で立ち上げた「キタサカまちづくり部」の活動を事例として取り上げ、サード・ラーニングの場において具体的にどのようなことが起こっているのかを見ていきたいと思います。
結論を先に述べておくと、地域はサード・ラーニングの最高の実験場であると私は考えています。
2 キタサカまちづくり部の歩み
まずはキタサカまちづくり部の歩みを簡単に振り返っていきます。
① 坂戸CCC(Clean up & Coffee Club)

2024年2月に仲間とともに開始した活動です。
集まった人と一緒にゴミ拾いや掃除をして、終わったらコーヒーを飲む。
文字にしてしまうとただそれだけの活動です。
ですが、それだけの活動だからこそ、気負わずに開催できて、参加者の方も気軽に参加できるということへの気づきがありました。

地域のことに何か関わりたいと考えていても、何から始めたらいいのか分からないという方は意外と多くいるのではないかと思います。
そういった方にとっては地域活動に気軽に入っていける受け皿にもなっています。
また、よくある自治会などでの一斉のゴミ拾いなどとは違って、自己紹介をしてから20~30分程度、ぶらぶら歩きながら軽いゴミ拾いをするため、会話も弾み、ただのゴミ拾いが「楽しい」とすら感じられたのも大きな気づきとなりました。
そこではゴミ拾いは目的ではなく、つながるための手段にすぎないのです。
この活動の立上げをきっかけとして、地域でつながる場、仲間集めの場を築いていく土台をつくることができたのではないかと思います。
②キタサカ・ミーティング

2025年2月に開始しました。
坂戸CCCをはじめ、大学や高校、団体など地域で活動する方々と出会う機会が増えてきた時期に、仲間と「そういえば地域で活動する人たちが集まる機会ってないよねー」という話をしていたのがきっかけで始めたものです。
地域で活動する人はたくさんいるはずなのに、どういう人が、どこにいて、どういうことをしているのかが分かりづらいというのはよくある話だと思います。
今、そういう場がないならば、自分たちでやってしまえばいいじゃんというノリから生まれました。

場所は北坂戸駅前にある城西大学のにぎわいサロンを利用させていただきました。
地域の人にあまり活用されていないというお話を大学関係者から聞いたためです。
「地域の人たちが集まる機会(場)をつくる」×「大学が借りている施設の利用を拡大する」という課題と課題の掛け合わせから生まれた活動ともいえるかもしれません。
具体的な何かをつくるという目的で始めたものではありませんでしたが、参加者同士の自己紹介ややってみたいことの共有から始まり、しだいに対話の場になっていきました。
と同時に、お互いのリソースや情報が交換されることで、やりたいことが実現するということが起こってきました。
私としてはただ人が集まる場をつくっただけなのですが、人同士がつながることで共創が起こるということを目の当たりにしたのです。
※なお、現在はキタサカ・ミーティング単独での実施はしておらず、後述する空き店舗活用プロジェクトの中で並行して運用しています。
③ 北坂戸団地商店街 空き店舗活用プロジェクト

2025年8月に、関係者とのふとした対話がきっかけとなりスタートした活動です。
こちらもいわば「商店街の空き店舗をなんとかしたい」×「高校生が自由に使える場所が欲しい」という課題の掛け合わせから生まれたものです。
活用の現場は、北坂戸団地商店街の中にある空き店舗。
スケルトン(床、建具、照明器具などをすべて取り払った空の箱)の状態であるため、一見何もないように見えます。
いえ、何度見ても何もないです笑
当然、何もないので、何かに使おうとしたらすべて自分で用意しなければいけません。
それには手間と費用と時間がかかります。
そのため使われずに放置されてきたといえます。

でも逆にそれだけ自分たちでできる余地がある、と私たちは考えました。
たとえば直近では、コンクリートの床が破損して凸凹になってしまっているところを、仲間を集めてモルタルで補修し、そこに砕いたガラス片やビー玉、思い入れのある小物などを埋め込むというイベントを企画しました。
北坂戸団地商店街の空き店舗活用プロジェクト第8弾「UMERU」を開催しました(2026年2月20日)|風間崇志/地域プロジェクトパートナー
確かに手間はかかるのですが、手間をかけたからこその価値が生まれたと思っています。
具体的には、場づくりの段階から高校生に関わってもらうきっかけをつくることができました。
これは既に完成している店舗だったら生まれなかったことです。
お店ができてから「お客さま」に来てもらうのではなく、お店づくりの段階から「仲間」として来てもらう。
これは大きな違いだと考えています。

高校生だけでなく、私たちもこうしたお店づくりに関しても素人なので、失敗ありき、すべてが試行錯誤の取り組みですが、毎回、参加者の皆さんと対話しながら、少しずつ前に進んでいる感覚が得られて達成感と楽しさを味わっています。
以上の3つの活動を見ていただくとなんとなく感じるのではないかと思いますが、最初からこうしようと思ってやったことというよりは、いきあたりばったりが多い活動です。
なんとなくこういうふうになったらいいなという方向性はありつつも、まずは身近なできるところから少しずつ実行に移していったらこうなったというのが正直なところです。
実際、坂戸CCCはキタサカまちづくり部の発足前から続けている活動であり、キタサカまちづくり部立ち上げ後はその活動の一環に位置付け直しています。
補足をすると、ややこしいのですが、2023年7月から個人的な活動として、「キタサカ探究部」という名称で北坂戸のことをよく知るためのフィールドワークや食べ歩きを行っていました。
その段階ではあくまで個人的な活動に過ぎなかったので、サード・ラーニングの生まれる場ではありませんでした。
ただ、将来的には地域の部活動と呼べるような活動にしていきたいという想いはあったため、「~部」という名称にこだわっていたという経緯があります。
それでもやってみると、「ああ、こういうことがやりたかったんだ」という方向に収まっているのが不思議です。
厳密にコントロールするのではなく、集まった人たち同士で対話しつつ、よりよきものをつくってきた感覚があります。
その結果、「いきあたりばっちり」と思えるような方向に進んでくることができました。
このことから、キタサカまちづくり部の活動を詳細に見ていくことで、サード・ラーニングの重要なヒントを得られるのではないかと考えました。
3 何かが起こる「土壌」を育む3つの要素

これらの活動が単なるイベントに終わらず、学びを駆動させる場となっているのは、そこに「何かが起こりうる土壌」が備わっているからではないか。
そこで、キタサカまちづくり部の活動を詳細に見比べてみて、共通する3つの要素を抽出してみました。
その3つの要素とは、
①多様性
②可変性
③創造性
です。
以下、順に見ていきましょう。
① 多様性
どの活動も個人としての参加が基本となります。
そして多様な個人の集まりによって、全体としても多様性が生まれています。
毎回違う参加者の方が集まるわけですが、会社などの組織に属している方もいると思います。
が、どこの組織に属しているかなどはこちらから聞いたことはなく、あまり気にしたこともありません。
(本当はもっと気にした方がいいのかもしれませんが笑)
参加者の方もあえてそれを表には出さず、肩書きを脱ぎすてて個人として来たいから来ているという態度に見えます。
また、どの活動も基本は途中参加も途中退席も自由。
「いつ行っても、いつ帰ってもいい」「誰が来てもいい」というゆるさが安心感を生み、全体としての多様性につながっているのではないかと思っています。
一方で、発信の内容で内輪感が出過ぎると、新たな人が参加しにくくなってしまうので、見せ方・見え方も意識した方がいいかなと思うようになった今日この頃です。
② 可変性
明確なゴール(正解)を定めず、「こんなことをしたい」程度にとどめています。
そうすることで参加者の自主性が入り込む余地が残り、「こういうのはどうか?」という提案がしやすくなります。
これは、参加者の方には「お客さま」という受け身では来てほしくないからです。
実は「参加者」という言い方もあまり好きではなく、メンバーや仲間という表現がいいなとも思っていたりします。
提案いただいたものに関しては、その場で「いいね!じゃあやろう」という雰囲気になればGOの合図と捉えます。
それを実行の判断基準にしているといえるかもしれません。
どんなふうにでも変わっていける可変性は、なんでも起こりうる冒険性ともいえるかもしれません。
③ 創造性
テーマの抽象度とも共通するかもしれませんが、毎回の企画については明確なタイムスケジュールは設けていません。
何か具体的な作業があるときもかなり時間の余白を取ることにしています。
そうすることで雑談や脱線が生まれやすくなり、結果としていろいろなものが生まれてきます。
たとえるとすると、土を押し固めるのではなく、密度を下げてふかふかにすることで空気や新たな何かが入り込んだり、そこから何かが芽吹きやすい環境になるというイメージ。
そこからこぼり落ちたものでも、何かの拍子に芽吹くこともあります。
そこから生まれる何か、生まれそうな何かにワクワクできる。
そういう創造性のある雰囲気を大事にしています。
4 何かが起こりうる土壌で生まれる「想定外の変容」

先ほど「何かが起こりうる土壌」がキタサカまちづくり部の活動にはあるということを書いてきましたが、ではそこでどんなことが起こりうるのでしょうか。
一言でいえば、そこで起こりうるものは「想定外の変容」です。
もちろんすべてが想定外というわけではありません。
通常、人同士が出会えば当然起こりやすいことは起こるとして、ここではキタサカまちづくり部で見られた2つの「想定外」に焦点を当てて考えてみたいと思います。
①良いノリと良いおせっかい
「何もしなくていい」という余白の中で、自分の好きや得意を活かして、勝手に動きはじめる人たちが出てきました。
「これはどう?」「こうしたらいいんじゃない?」とどんどん提案も飛び出してきます。
そして一人が始めると、それにつられるように続く人たちが出てきます。
(もちろん私自身も)
この「良いノリ」の連続はコミュニティの雰囲気を非常に盛り上げてくれます。
また、動こうとする人たちに対して、「こういうのもあるよ」「これも使っていいよ」と良い意味でのおせっかいをする人たちも現れてきます。
「良いノリ」と「良いおせっかい」との相乗効果で、小さなことから始まった活動に推進力が生まれるのです。
多様な個人同士がつながることで、個人のやりたいことの実現と共創が生まれやすい環境があるといえます。
②複線的なシナジー
運営が管理しないからこそ、メンバー同士が勝手にコラボし、予想外の副産物として複数のプロジェクトが立ち上がってくることがあります。
坂戸CCCから派生してキタサカ・ミーティングが生まれ、キタサカ・ミーティングから空き店舗活用プロジェクトにつながったように。
また、参加者同士がつながることで、新しい事業や企画につながった例も生まれています。
これは主催者としては非常に嬉しい誤算でした。
いえ、誤算というよりは、そういうことが起こったら嬉しいなとは思っていました。
でもそれは自分ではコントロールすることはできません。
集まった人同士の掛け算なので、運営側にできるとしたら、どんな人を呼び集めるかということでしょうか。
なぜこれらが「想定外の変容」かというと、ポイントは運営者が強制しなくても、参加者の間ににじみ出してくる「かもしれない」という意味での「想定外」ということです。
つまり必ず起こるとはいえない、コントロールできないということです。
先ほども述べた通り、運営側にできるのは、どんな人を呼び集めるかを考えること。
そういうことが起こりそうな人たちに集まってきてもらえるような、おもしろい場をつくるということが必要なのだと思います。
そういう場をつくるために必要な土壌に含まれるのが、先に挙げた3つの要素なのです。

お金をかければプロが効率よく解決できることも、あえて自分たちの手と知恵を使い、何かをつくるプロセスを共有することで不自由さ・不便さを価値に変えることができます。
創造性が別の創造性を生む循環、自分たちでつくっている感覚こそが最高のアウトプットだと考えています。
このことは、キタサカまちづくり部の活動が、直接利益を得るための活動とは切り離されていたということが大きいかもしれません。
利益を得るための活動として捉えていたら、何が何でも自分が思い描くゴールへと参加者を導こうとしていたのではないかと思います。
そんなことをしていたら、ここまで「みんなでつくっている」感覚は得られなかったでしょう。
少なくとも、今のようなフラットな関係は築けていなかったのではないかと思っています。
事業性を考えない「遊び」だからこそ、おもしろさドリブンでさらにおもしろくを追求していけるノリが生まれやすいのだと思います。
もちろん、100%事業活動とは無関係と言えばウソになります。
やる以上は続けたい、続けるためにはどこかで収益を上げる必要があります。
特に3番目の空き店舗活用プロジェクトに関しては、少なくともある程度のコストがかかる取り組みであるため、将来的には事業化していきたいのが本音です。
ですが、どちらかといえば、やはり3つの活動のいずれも収益が目的というよりは、地域の人たちとの関係性を築くことや自分たちの地域をよりよくしていくための活動という意味合いが強いです。
そのために私が大切にしたいのは、集まった人たち同士の学び合い、そしてお互いが出会うことで生まれる共創の場づくりなのです。
5. おわりに
振り返ってみれば、これらの土壌は最初から狙い通りに作れたわけではありません。試行錯誤の中で気がついたら、心地よい学びの場ができていたというのが正直なところです。
しかし、この「いきあたりばっちり」な場を、再現可能なものにするためには、これらの要素を横展開できる「フォーマット」としてメソッド化していくことが今後の大きな課題です。
つまりどうやったら意図的にサード・ラーニング的な場をつくり、そこから何かを生み出しやすくできるかということです。
そのメカニズムを探り、言語化していくことこそが、本連載の大きな目的の一つといえるかもしれません。
これまでの連載
第3回
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【連載:番外編】「サード・ラー二ング」のすすめ:参考書籍①『学びのコミュニティづくり』|風間崇志/地域プロジェクトパートナー
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