比企起業大学 特別講座「ミニ起業の鉄則! 小さく始めて、長く続ける商売のポイント」

2021年9月11日(土)、比企起業大学2021春学期の特別講座として、「ミニ起業の鉄則!  小さく始めて、長く続ける商売のポイント」 が開催されました。

講師は日本経営合理化協会のオーディオ・ビジュアル局 局長である小澤勇一さん。

私は比企起業大学の講師として、全体の進行を務めさせていただきました。

私たちミニ起業家が経営を「小さく始めて、長く続ける」ためにどうすればいいかというポイントがみっちり詰め込まれた約1時間半となりました。

ミニ起業だけでなく、経営全般に共通する内容も多いと思います。
何度も復習したい、貴重なお話でした。

小澤さん、ありがとうございました!

ここでは私が個人的にメモした内容を公開します。

まとメモ

経営を長く続けるために

●経営の4つの変化
①顧客
②自社 
③社会の影響
 → お客様と自社がずれていく(コロナでオンライン化など)
 → お客さんの変わる行動に対応する
④未来の市場

●大事なのは「時流を抑える」+「キャッシュ」
・キャッシュがあればつぶれない
・そのために目的を変えずに手段を変える
・情報を取り続け、学び続ける
・仕事にまじめである

●事業経営の4大体系
①「何のために」 理念、哲学、人生観、ロマン
②「儲かる方向性」 戦略、環境、体質、手腕
③「戦い方」 戦術、販売力、企画力、組織力、財務、技術
④「数字」 目標

●経営は経験の科学
・有限な時間の中で経験できることは限られている。
 → 収録物は講師陣の体験の基づいた内容
   大事なところだけ話す
   伝えたいポイントは自然と熱が入る
 → 講話録は決断と実践の宝庫

●長く事業を続けていくための6つのポイント
(1)時の流れを知る
(2)売上が一番大事
(3)トガらせる
(4)歴史とストーリー
(5)市場を知る
(6)お客様に届ける

(1)時の流れを知る

●日本の立ち位置と市場の変化
・プランを何通りか持っておく
・このままだったら、景気が落ちたら、景気がよくなったら
・マクロから見た日本
 人口減少する日本と、人口増加する世界
・毎年7万社が廃業、倒産、65%が赤字
・労働人口 2015年から10年で約600万減少
・大・中小商圏の百貨店
 → 総合スーパー
 → 専門店、食品スーパ、ドラッグストアの業績が上がっている
・事業計画には「景況」を踏まえる
・少し先の未来に「旗を立てる」
 → こうなるのではないか
・ダメだったら引き返せばいい

(2)売上が一番大事「キャッシュが大事」

●「キャッシュが大事」
・信越化学の金庫番 金子さん(故人)の言葉(著書100冊以上)
・キャッシュがあれば会社潰れない
・お金を握っている人ではなく、売上をつくる営業の方が大事

●売上とは
・売上=単価×数量
・売上を上げるには、単価を上げるか、数量を上げるしかない
・単価上げるには価値を上げる必要がある
・数量を増やすには、販売力、お客さんの数
・値段を下げたら上げられない

→ ミニ起業家はお客さんを増やしすぎると「バタ貧」になるので注意

●販売方法は5つしかない
①訪問販売
②店頭販売
③媒体販売(カタログ、ネット)
④展示・イベント販売
⑤配置販売
・販路(販売方法)を増やすことは売上につながる
・自社はどの販売方法か(一つである必要はない)
・複合化できるものはないか

(3)トガらせる「引き算してからかけ算する」

●町の発明家になるな
・「こういう商品ができたんですけどどうですか?」
 → いいものをつくっても誰も知らなかったら誰も買わない(=町の発明家)
 → まずお客さんのニーズを見て、それに合った商品をつくる

●シンガポールといったら
・シンガポールといえば?
 → マーライオン、高級ホテル
・マレーシアといえば?
 → わからない
・シンガポールは日本向けにマーケティングを行った
 → 「シンガポール=マーライオン」のイメージ

●貴社といったら何ですか?
・「自社といえば○○」 
 → お客さんから〇〇が出てくれば認知度が上がっている
・自社にとっての「マーライオン」をつくる
・看板商品
 → 小売りであれば看板商品があればついで買いする

●シーンによって市場や競合が変わる
・シーンによって市場や競合は変わる
 → 売り方が変わる、お客さんが変わる
 → 誰向けの商品か、どのようなときに買うのか
・ワークマン
 作業服 ⇒新業態
・MIRAI SPEAKER
 BtoB⇒BtoC 元々は公共公益施設に売っていた
 → 小型化して祖父母向けのプレゼント

●貴社の競合はどこですか?
・競合はどこか
・顧客は誰か
・ライバルを特定する方法
 → お客さんに「もしうちのサービスがなかったらどこを選びますか?」
 → 自社とどこが違うかを知る
 → 差別化ポイント、強み

(4)歴史とストーリー「モノがあふれる時代には」

●自社が提供している商品・サービスのルーツを知る
・自社のルーツ、商品・サービスのルーツを知る
・商品の価値、ブランドづくりの糸口に
・顧客の信頼にもつながる
・歴史はマネできない

●お客さんに伝える
・共感 → 買う → 口コミで広げてくれる

●分解する
・自社が提供している商品・サービスの価値に焦点を当てる
・固定観念をなくす
・そのために商品ではなく「機能」を見る
・そこからストーリーをつくる

(5)市場を知る 「売る前に売上を知る」

●自社の商売サイズを知る
・国の無料データを使う
 (例)世帯数から年代ごとに一番多い世帯を知る(家族構成、年齢)
・統計局 家計調査、国民生活基礎調査、統計でみる日本

●豆腐の市場は?
・ときがわ町 4,753世帯
・(家計調査)豆腐の1世帯あたりの支出額 4,143円/年
       60代が一番多い
・ときがわ町で100%シェアの場合の商売サイズ
 4,753世帯×4,143円=19,601,679円
・実際とのギャップ
 → 町民以外、豆腐以外、BtoB、単価、通販、シェア

(6)届ける 「知った後、何をしますか」

●知らなければ誰も買わない
・探すときはどのように探しますか?
・人から聞いた後、何をしますか?
 → Google、SNS、スマホ・・・で探す
 → 検索に引っかかるように受け皿を用意しておく
・人間が欲しいところに、欲しいものを当ててあげる
・自社のサイトで個人情報を入力するのは警戒感を持たれる場合も
 → Amazon、楽天だと安心というイメージ
 → 代表的なものだけプラットフォーマーのサイトで出品し、まずは知ってもらう
 → ほかのものは自社サイトへ

経営の重要ポイントのまとめ

①シンボルをつくる できれば固有名詞にする
②自社商品のルーツを知る
③固有名詞にする
④顧客接点の軸を決め
 「商品」 商品力
 「手軽」 安く → ミニ起業家は望ましくない
 「密着」 コミュニケーションとることで長く付き合ってもらう

●想いを変えずに商品・サービスを変える
・壱番屋
 不動産仲介 ⇒ 喫茶店 ⇒ カレー
 喫茶店で売上を伸ばすために始めた出前用の商品
・ガトーフェスタハラダ
 和菓子 ⇒ 給食パン ⇒ ラスク
 店頭で売れた商品
・エニシング 
 漢字Tシャツ ⇒ 前掛け
 目覚ましテレビで取り上げられてブレイク
 前掛け専門店
 前掛けのルーツを追っている
 トヨタの創業ルーツである織機を使っている

感想

特別講座の後で、参加者から「起業の定義は?」という質問をいただきました。

この質問に対して、私は「本業がある場合、本業とは違う自分の『しごと』をつくること」という回答をしました。
その際、しごとの大小は問わず、もちろん法人である必要もないことをお話しました。

また、比企起業大学総長の関根さんからは、よりシンプルな「お客さんをつくること」という回答もありました。

このように比企起業大学では、起業のハードルを下げ、「年商〇億円」といったスタートアップのベンチャー的なものではなく、年収300~1000万円程度の「ミニ起業」を目指すことが特徴です。

さらに最近ではインターネットやSNS、クラウドサービスなどが普及しているおかげで、個人による情報発信や商品・サービスの売り買いのハードルも下がっています。

そのため以前に比べれば、起業すること自体は難しいことではなくなってきているといえます。

ですが次に私たち経営者が考えなければならないことは、「事業を継続すること」です。
これが難しい。

越谷市役所で創業支援に関わっていたときも、「創業した数」を目標値にしているものの、創業後の経過は追えておらず、悶々としていた経験があります。

いくら起業する人が増えても、すぐに廃業してしまっては何の意味もない。
起業した人が、事業を継続できることがもっと重要なことなのではないか。

今もその考えは変わっておらず、数ではなく質を求める比企起業大学の方針に共感する理由となっています。

先日参加した枝廣淳子さんのセミナーにもあったとおり、地域にとっては事業者が経営を存続していること自体が既に価値のあることです。
逆に経営を辞めてしまうことは、地域にとっては大打撃になります。

「小さく始めて、大きくせずに長く続ける」

その ”ミニ起業家魂” を今後も大切にしながら、自らの事業の経営と、比企起業大学でのミニ起業家育成支援に尽力していきたいと思います。

小澤さんは退席された後でしたが、「小澤」の「O」で集合写真の図