オンラインセミナー「土から見つける地域の魅力」

2021年9月10日(金)、DMOの成功事例として取り上げられる「せとうちDMO」さんと「週刊ホテルレストラン」さんによる特別企画として、オンラインセミナー「土から見つける地域の魅力」が開催されました。

10月から「新規事業や新商品のコンセプト開発」をテーマにした研修プログラムを実施するとのことで、その導入編としてのプレセミナーとのことです。

講師は、ときがわネットワークで一緒に活動していた地域プロデューサー・南雲朋美さんでした。

地域の魅力を「土から見つける」という切り口が興味深く、南雲さんがどのように地域の資源をリサーチしているのか知りたいと思い、参加しました。

結論から言うと、「地域のルーツを知ることは、それだけで武器になる」と感じました。
その象徴的なものが地域の歴史です。

たとえば城下町や街道の宿場町だった地域は、それだけでストーリーになりそうなネタがゴロゴロあります。
先日、埼玉県の小川町にいったら、駅前の商店街には魅力的なお店が多くて、やはりそれも「和紙」や地域の歴史、それらに基づくまちの雰囲気が影響しているのではないかと感じました。

今回のセミナーは「土」や「地形」という観点からも、地域の魅力づくりにつながるヒントが得られるという内容で、非常に勉強になりました。

例によってセミナーで気づいたこと、考えたことのメモを公開します。

以下、まとメモです。

まとメモ

新型コロナによる観光への影響

●新型コロナの影響
・延宿泊者数
 → 日本人はピークだった2019年の約半分に
 → 外国人は10年前に逆戻り。感覚的にはほぼ0とも
・倒産件数
 → 実は旅館、ホテル業、旅行業はリーマンショックや東日本大震災時より倒産件数は少ない
・旅行を自粛している理由
 →「感染リスク」が7割近い

観光がもたらす地域経済への影響

・観光の復活=地域経済の復活
・海外旅行に行けない分、国内需要が見込めるのでは?
 → マイクロツーリズム(星野リゾート 星野社長)
・海外に行けなくなった分の消費が、国内に振り分けられているというデータがある
 → どこかに旅行に行きたいというニーズはある
・特に住所地と同じブロック圏内の地域を訪れる人の数、訪れる回数も増えている
・観光がもたらす地域経済への貢献度は大きい

目標は「地元にしかない魅力で戦略をつくれるようになる」

●観光とは
・光(知恵=地域に息づいている魅力)を観ること
 ⇒ 光を探し出して、お客様に提案すること
・どのように魅力を発見して事業に落とし込むか

南雲さんプロフィール

・Hewlett-Packard社に16年間
・慶応義塾大学
・星野リゾートで広報8年 広報、ブランディング
・スペイン横断700キロを40日間で歩いた
 人間は6割は地面を見て歩いている
・佐賀県で有田焼のブランディング
・誰でもいいから来て!ではなく、自分たちが求める人に来てもらえるような仕組みを作る
 → たとえば地域の魅力を活性化しているビジネスをやってくれる人を優遇する方がいい
・星野リゾートのコンセプトメイキング
・都立大学、慶応義塾大学講師

「土」「地形」「歴史」

●米はどこでも作れるか?
・地域によって条件が異なる
・「土」・・・ギュッと握ると少し固まる程度であれば稲作ができる
・「地形」・・・貿易ができる
・「歴史」・・・土が稲作に合わなくても、かんがい設備、技術などを磨き上げて、米をつくれるようにした
 → これも魅力になる

●鹿児島県の事例
・台地上の山(シラス台地)火砕流でできた台地
・3万年前に世界規模の爆発があった ⇒ 関東ローム層の10cmがこのときの灰
・古事記の「天孫降臨」で天照大神が天岩戸に隠れて地上は真っ暗に
 → 日食ではなく噴火のせいでは?
 → そういう説もあるといわれているが、学術的な場だと言いにくい
 → お客様に言い伝えとして話すことはできる
・シラス=米ができない土
 日本一台風が多い地域 穀物はなぎたおされてしまう
 → さつまいも
   さらさらした土 ミネラルが多い
   じゃがいもよりさつまいもはミネラルが必要
   おいしいさつまいもが育つ
 → 名物「焼酎」
・薩摩藩=強い。江戸から遠いのになぜ幕府の脅威だったのか?
 → 偉人たちがいたからではなく、地の利
 → ガラス(薩摩切子)、鉄砲の伝来

●スペインの事例
・砂漠のような場所 緑がない、水がない
 → 食べ物は羊と芋
 → 粒が小さい凝縮されたぶどう
 → 肉に合うワインになる。地元のワイン
・雨が多い地域
 → 乳牛 水が多く必要
 → 果実 水が多く必要
 → チーズやジャムが出る
 → 実が大きくてフレッシュなぶどうから、魚介に合うワインになる
・地域の食べ物に合うワインをわざわざ選ばなくても、その地域にできたワインを選べばいい
・同じ地域から生まれた産物は合うようになっている。

●川と文明
・小さな川をたどって広い川になると街が出てくる
・船という輸送機関
・世界のものが集まってくる=文化が集まってくる
・川があったから文明が生まれた

●地域の魅力
・経済が成立している=そこにある必然性がある
 → 地域の魅力

地元の魅力のつくり方

●魅力のつくり方
・フィールドリサーチ
 → 現地を歩く 特徴を見つける、疑問を持つ
 → 地元の人に聞く 博物館、資料館などの専門家に文書にしにくいことを聞く
・魅力の相関図をつくる
・ここからどれを売りに使うかを選択する
・コンセプト
・ビジョン、ミッション → 戦略 → コンセプト → 計画

地理とは
・土地には理(ことわり)がある

融資を受けるには

●市場規模
・市場のこの部分を狙っていくことを明示する
 → 初年度、次年度・・・を数字で示していく
・事業計画=企画書のようなもの
 説得力のある企画書をつくる

感想

フィールドリサーチの手法は私が学生時代にやっていた民俗学のフィードワークと似ていて、非常に親近感があります。

それをもって地域それ自体や、地域の商品・サービスのルーツを探り、それがストーリーにつながるというお話は思わず膝を打ってしまうほど納得感がありました。

何気なく目にしている何でもない路傍の石にも、秘めたる歴史があるのかもしれません。
改めて身近にあるものに注目する、当たり前と思っていることに疑問を持つ姿勢の大事さを感じます。

持続可能な地域とかSDGsとか、上っ面だけいい言葉、よく聞く言葉を並べてみても、結局は自分の言葉で表現できなければよそよそしく感じてしまいますし、お客さんもそれが伝わってしまいます。

自分の地域や商品・サービスのルーツを知り、自分の言葉でその魅力をストーリーとして語れることが大事なのではないかと思いました。

南雲さん、ありがとうございました!