「高くて良いもの」を売ることが小さな会社の唯一の道

本棚を整理している時にタイトルが気になって読んだ本です。

『小さな会社こそ、高く売りなさい』

読書記録によると、2018年に一度読んでいたようですが、起業して個人事業主になった今読んでみると実感がまるで違いました。(2018年当時はまだ公務員でした)

私が本書を読んで最も印象に残ったのは、4つの商品戦略のくだりです。

考えられる商品戦略としては、「安くて良いもの」「高くて良いもの」「安くて悪いもの」「高くて悪いもの」の4つがあるといいます。
このうち「安くて悪いもの」「高くて悪いもの」というのは一言で言ってしまうと「詐欺」にほかならないので、実際は「安くて良いもの」か「高くて良いもの」の2パターンに限られてきます。

このどちらを選択するかが、小さな会社にとってはまさに生死の境目で、小さな会社にとっての選択肢は「高くて良いもの」しかないというのが本書の主張です。

なぜなら「安くて良いもの」という戦略をとった場合には、広告費にかけられるお金や人といったリソースを潤沢に持つ大きな会社との競争になってしまい、小さな会社は潰されてしまうからです。

比企起業大学ではしつこいくらい「弱者の戦略」を学び、実践しているように、いかに大きな会社に勝つかというよりも、いかに大きい会社と戦わないようにするかということが非常に重要だと思います。

小さな会社は常にこのことを考えなくてはいけません。

「高く売る」というのは、単に利益を大きくする、儲けるために行うのではなく、大きな会社と戦わずに小さな会社が生きる残るために欠かせない手段ということなのです。

「高くて良いもの」を売るための3つのヒント

ではどうしたら「高くて良いもの」を売ることができるのかということになります。

本書にはそのための3つのヒントがあると思いました。

1つ目は、違いを分かりやすく伝えること。
2つ目は、時間で解決するビジネスを売ること。
3つ目は、高く買ってくれるプレミアム客を集めること。

違いを分かりやすく伝える

AIDMAの法則もAISASの法則も、資本力のある大きい会社が理想としている法則であるとしつつ、すべての段階において「違い(Difference)」を掛け合わせることで、大手との「違い」を「伝わりやすく」することが小さな会社の武器になるということが述べられています。

時間で解決するビジネスを売る

大きい会社は安く売ることができることから「お金」で解決するビジネスを得意としています。
そのため小さな会社としては「時間」や「健康」など、金で買えないものを狙うべきということが述べられています。

特に時間は「金では買えない」というほかにも、「問題解決」という緊急性と、需要と供給のバランスが逆転する「売り手有利」というメリットもあるということが書かれています。

「地域でのしごと」に置き換えると、近い距離にいるのですぐに駆け付けられたり、大手だと面倒くさくてできない細かなニーズに応えることで、「かゆいところに手が届く」存在になることができるのもこれに当てはまるのではないかと思います。

高く買ってくれるプレミアム客を集める

本書では次のように述べられています。

小さな会社は、たくさん客を集めて、その中からプレミアム客を絞り込むのではなく、絞り込む段階からプレミアム客をつかまえて、その中から優良なプレミアム客を残していく戦略の方が適している

つまり最初から高く買ってくれるお客さんを集めることが大事ということです。

比企起業大学でも「お客さんを選ぶ」ということを学びますが、それに近いかと思います。
自分の消費やサービスを買ってくれるお客さんは誰か、その人はどこにいるのかを考えながらお客さんづくりをする必要があるということですね。

そして一方では、「付き合いたくないお客さん」が来ないようにすることも大事です。
付き合いたくないお客さんはクレーマーになったり、値下げを要求してきたりしてくる存在であることが多いと思います。
その割には安いものしか買わないので利益率も落ちる。
そうすると忙しい割には儲からないという事態になり、なにより似たような「悪いお客さん」を呼び込むことになってしまいます。

そうならないためには自分にとっての「プレミアム客」「付き合いたいお客さん」をしっかりと明確にして、お客さんを「選ぶ」という視点が大事ではないかと思いました。

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以上、『小さな会社こそ、高く売りなさい』から考えたことでした。

以下、本書で気になった箇所をまとメモとして公開しています。

「⇒」は個人的な感想、メモとなります。

まとメモ

・小さな会社が商品を高く売るためには、「高く買ってくれる客」を集めることが大前提となる。

・金と時間と人のない会社は、「安く売る」というロジックに陥りやすい

第1章 なぜ、小さな会社は「値上げ」ができないのか?

・A「安い・良い」、B「高い・良い」、C「安い・悪い」、D「高い・悪い」の4つの商品戦略のうち、世の中で売れる商品は、AかBしかない
 → 小さな会社はAの「安い・良い」というポジションを狙うことができない。ここで競争しても、大きい会社には勝てない
 → 小さな会社が生き残るためには、B「高い・良い」という戦略を立てるしかない

・小さな会社だから、インターネットを駆使する戦略をとるのではなく、小さな会社だからこそ、インターネットへの依存率を下げる戦略を模索していかなければ、いつまでも消費の食物連鎖から抜け出せない

・利益を高くとっているのに、お客には安く売っているように見せる売り方が、最も実践しやすい「高く売る」戦略

第2章 小さな会社が大きい会社と戦うための「プレミアム商品戦略」

・小さな会社のビジネスは、すべて”客質”で決まる

・最初から「安く商品を買う」という目的で来店したお客は、高くて良い商品が売られていても買ってくれない

・「高く売れる商品を作ること」よりも、「高く商品を買ってくれる人」を集めることが、スモール・プレミアム戦略の上での、高くても売れる商品作りには必要

・小さな会社が作ったシェアは大きい会社に簡単に覆されてしまう。それよりも、小さな会社は質の良い客を、どれだけ先に多く獲得できるかに全力を傾けて、大きい会社に潰されない参入障壁を作ることの方が大切

・小さな会社の場合は、「集客」と「商品開発」をセットで考えなくてはならない
 → 集客をイメージしながらプレミアム商品を作ること

・価格の高い商品を買わせる場合は、買い手側に確実な「安心感」がなければならない

・小さな会社は、新規のお客を増やすことを必ず行わなければならない。そして、入口商品を作ることからも目を背けることはできない。なぜならば、客を捕まえて、育成するアクションをとらなくては、いつまで経っても客の質を上げられず、安売りから逃げられないからである

・大きい会社は良い商品を安く売るプロである。小さな会社が商品力と価格で対抗することは、負け戦に飛び込むに等しい。・・・小さな会社の「伝わりやすさ」は、大きい会社と戦うためのの唯一の武器

・AIDMAの法則もAISASの法則も、資本力のある大きい会社が理想としている法則である。小さな会社では記憶される前に客に逃げられるか、検索された段階で大きい会社に客を持っていかれるか、どちらにせよ「高く売る」という消費の流れからは大きく遠ざかってしまう

・「D-AIDMA」「D-AISAS」
「違い(Difference)」を掛け合わせる
 → ピンポイントだけ差別化するのではなく、すべての段階で「違い」をアピールする

・小さな会社は「時間」や「健康」など、金で買えないものを狙う

・「時間」は、「金では買えない」というメリットの他に、「問題解決」という緊急性と、需要と供給のバランスが逆転する「売り手有利」という2つのメリットを抱えている

・大きい会社が得意とする「金」で解決するビジネスではなく、「時間」で解決するビジネスだからこそ、小さな会社でも勝てる

第3章 小さな会社が少ない広告費で闘うための「プレミアム集客戦略」

・小さな会社が、価格の高いプレミアム商品を作っても売れない理由は「集客」ができていないから

・小さな会社は、たくさん客を集めて、その中からプレミアム客を絞り込むのではなく、絞り込む段階からプレミアム客をつかまえて、その中から優良なプレミアム客を残していく戦略の方が適している

・小さな会社が「広告費」も「商品点数」もない状態で、客を集めるためには「企画」の量を増やす
 ⇒ 小さくても手数を増やす

第4章 小さな会社がライバル会社よりも高く売るための「プレミアム販売戦略」

・小さな会社の「経営者」と「従業員」と「客」は、似てしまう
 → ケチな経営者の会社には、ケチな客しか集まらない
   ひねくれた経営者の店には、ひねくれた客しか集まらない
   リピートして商品を買わない経営者の店には、リピート客は集まらない

・小さな会社は「商品点数」を増やすのではなく「売り方」を増やして、購入チャンスを広げる