これからの「価値」とは

出版前から重版が決まるなど、SNS上で話題になっていた『プロセスエコノミー』
だからというわけではないおですが、内容に非常に興味を惹かれたので買ってみました。

一言でいえば、「すごくおもしろい」!

(貧弱なボキャブラリーで恐縮です)

クラウドファンディングでは最近、つくった商品を売るのではなく、つくる前からお客さんやファンの方を巻き込んで商品を一緒につくるというものが多く見られます。

ストーリー性の高いものが購入に結びつきやすいということで、「応援購入」という言葉も出てきています。

こうした「応援購入」は、まさにプロセスエコノミーといっていいのではないかと思います。
つまり何かをつくる「プロセス」そのものに価値があるという考え方です。

そのプロセスに一緒になって参加してもらうことで、お客さんは単なる消費者というよりも、ファンやサポーター、あるいは「仲間」のような感覚を持つことができるというわけです。

このプロセスエコノミーの考え方はすごく興味深いです!

言葉自体はこの本を通じて知りましたが、知らず知らずのうちに確かにそういう動きが周りに起こっていることに気づきます。

私がお世話になっている比企起業塾・比企起業大学も、起業について学べることももちろん良いのですが、なんといっても「仲間ができる」ことが非常に大きな価値であると感じていました。

地域のミニ起業家(または候補者)による一種のコミュニテイのようになっていて、本書で書かれているように、口コミによって仲間が仲間を呼んでくるようなことも起こっています。

今の時代はいろんなもののコモディティ化が進んで、性能の良し悪しは差別化が難しくなっています。
(というか、それを消費者側が判断できない。)

また、VUCAの時代といわれるように、「何が正解か」が曖昧・不確実な時代ともいわれています。

そういう時代においては、「正しさ」ではなく「楽しさ」、個人としての「好き」が相対的に存在感を増してきているのではないかと感じていました。

そんなところで、「人間は正しさだけでは動かない。楽しさが必要」というような言葉を聞く機会があったり、本書にも登場する『ファスト&スロー』を思い起こしていたところで本書で紹介されているのを見たり。
なんとなく「そういうことなんだな」と妙に納得してしまいました。

(タイミングってホントに不思議ですよね・・・来るべき時に来るというか。)

というわけで、小さなまちで活動する、小さな存在である私としては、日ごろから自分一人ですべてやるのではなく、いろんな人とつながりながら共にしごとをつくる、「共創」していくことを大切にしています。
そのようなしごとのつくり方は、まさにプロセスエコノミーと親和性が高いと思います。

プロセスから周りに関わってもらう。
ぜひ今後も意識していきたいと思います。

あと、「正しさ」だけでなく、「楽しい」!
つい堅苦しくなりがちな私としては強く肝に銘じていきたいと思います!
(↑ほらまた堅くなった)

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本書で気になった箇所をまとメモとして下記に書き出しています。

「⇒」は個人的な感想です。

まとメモ

・もはや完成形で差をつけるのってしんどい。・・・このような人もモノも埋もれる時代の新しい稼ぎ方が、プロセス自体を売る「プロセスエコノミー」です。なぜならプロセスはコピーできないから

・プロセスに価値を乗せるには、作り手がそこにストーリーを込めたり、なぜやるか(Why)という哲学を示すことが大切

・これまでは先行者利益をいかに誰よりも早く握るかで、ビジネスの帰趨が決まると考えられていた
 → プロセスエコノミーの時代ではユーザーがコミュニティ化し、新たなユーザーをひきつけるループのほうが大事

第1章 なぜプロセスに価値が出るのか

・(「乾けない」世代は)「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」という(セリグマンの幸せの5つの軸のうち)後者の3つの軸に幸せを置いています。物質的なモノより内面的なコトに価値を感じる

・(チームラボ 猪子寿之さん)
 コンテンツやモノ、サービスは”コミュニティとセットで欲しくなる”、つまり、”コミュニティとセットになって価値が上がる”

・自分のアイデンティティを支えてくれる、自分の所属欲求まで満たしてくれることをブランドに求め始めている

・今や、会社はコミュニティではなくなり、人生の選択肢をはっきりとは示してくれません。人は自分一人で選択する場面に出会い、「この選択肢で正しいのか」という底知れぬ不安に駆られます

・現代において、人々の所属欲求を満たし、人生の進むべき道を照らすことは、商品の品質と同様かそれ以上に大切になってきている

・「すべてのサービスは自分が自分らしくなるためにある」。これがマーケティング4.0の重要な視点です。受動的な消費者に甘んじるのではなく、誰一人置き去りにしない世界を構築するために、消費者もメーカー活動に参加し社会変革に挑戦していく。

第2章 人がプロセスに共感するメカニズム

・自分のプロセス(生き様)を開示し共有することで、個の熱狂が集団の熱狂へと広がるのです。

・人間が新しい変化を起こすときには、理屈や正義を並べていくら論理脳にアプローチしても簡単にはいきません。ワクワクを共有し、キュンと動く感情脳にアプローチしたほうが効果的なのです。そして感情脳にビビッと訴えるのは、ロジックではありません。ストーリーでありナラティブ(narative=話術、語り口)です。

 ⇒ 「人は正しいだけでは動かない。楽しさが必要」という山崎亮さんの言葉とも共通する

話を聴いている人が、進んで一緒に歩きたくなるようなストーリー、ナラティブを言語化する。そこに共感が生まれ、お客さんを一緒に冒険してくれる仲間にしていく。その仲間がまわりの人に声をかけて、さらに多くの仲間が寄ってくる。そして共にモノやサービスを作り上げていく。

第3章 プロセスエコノミーをいかに実装するか

・プロセスを公開し、反応を見ながら変えていくことは激動の時代には邪道でも何でもありません。途中で方針を変更することを前提とした修正主義こそ、決められた正解のない時代の歩き方なのです。

・機能や性能はコピーできても、個人の「好き」という価値観や偏愛はコピーできません。プロセスエコノミーにおいて大切なのは、その「自分だけのこだわり」の部分をいかに伝えていくかなのです。

第4章 プロセスエコノミーの実践方法

・プロセスエコノミーを実践するうえで最も大切なのは、あなたの中にある「Why」(なぜやるのか・哲学・こだわり)をさらけ出すことです。

・「What」「How」は一定のモノサシで測れるものであり優劣が決められますが、「Why」はその人の生き方に拠るものです。

・コミュニテイを作るうえでは、余白を敢えて作って、役割をたくさん用意することが重要なのです。

第5章 プロセスエコノミーの実例集

・プロセスエコノミーのおもしろさの源泉は「人の個性がにじみ出ること」

第6章 プロセスエコノミーの弊害

・なぜプロセスに人がひきつけられるのか。その人の「Why」が、ブレずにしっかりしている。その人しかもっていないモノサシを感じ、自分の中にも取りこみたい。そう思うからプロセスエコノミーの参加者になってくれるわけですし、深く入り込んだ人はセカンドクリエイターとして応援してくれるのです。
 ギャラリーにおもねり始めると、魅力的な自分の「Why」を見失ってしまいます。次第に虚構の自分を作り出すことになってしまうのです。

・自分の意志で能動的に生きていたはずなのに、プロセスエコノミーの中で観客の期待に応えることが目的になってしまう。そして、いつの間にか観客が主体になり、自分の人生のハンドルを握られた状態に陥ってしまう。
 ・・・そうならないようにするためには、他人が作った自分に乗っ取られないように自分の「Why」に常に立ち戻る。自分は何のためにやるのか。自分の一番大切にしている者は何か。常に自問し、振り返り続けることが大切です。

第7章 プロセスエコノミーは私たちをどう変えるか

・プロセスエコノミーの時代にはEX(エンターテインメントトランフォーメーション)という考え方が大切なのではないか(川原卓巳)
 → 「正しい」を「楽しい」にすると、そこに価値を感じられなかった人にも届き、色んな人を巻き込んでいける。

・人間が夢中になる3条件(楽天大学学長 仲山進也)
 「得意」「その得意がやっているだけで楽しい」「それが誰かの役に立つ」

・プロセス目的的であることが、フローとしての成長を加速し、成長に見合うやりたいことを探すようになる

・私たちは、「こうすればバズる」「こういうのが流行る」というモノをひたすら作る機械ではありません。私たちは「自分が作りたいものを作る」ために命を燃やすべきなのです。