農林水産省主催「農村プロデューサー養成講座」第3回を受講しました

「農村プロデューサー養成講座」とは、農林水産省が「地域への愛着と共感を持ち、地域住民の思いを汲み取りながら、地域の将来像やそこで暮らす人々の希望の実現に向けてサポートする人材」である農村プロデューサーを育成するための講座です。

コースは、「入門コース」と「実践コース」の大きく2つで、「入門コース」は誰でもオンラインで受講することができます。
「実践コース」は、「講義」「実践を基にした模擬演習」「研修生自らの実践活動」という3段階で、こちらは受講申し込みをした上で選考があるそうです。

農村プロデューサーに関する詳細はこちら(農林水産省のページにリンクしています)

入門コースでは、いろいろな地域の取り組み事例を学ぶというもので、各回でさまざまな講師が登場します。

初回、第2回に続き、農村プロデューサー養成講座(入門コース)の第3回(行政分野)を受講しました。

ちなみに入門コース全6回の講師陣は以下のとおりです。

  • 第1回(総論分野) 小田切徳美さん(明治大学農学部教授) ← 第1回記事はこちら
  • 第2回(イノベーション分野) 谷中修吾さん(一般社団法人 INSPIRE代表理事/BBT大学教授) ← 第2回記事はこちら
  • 第3回(行政分野) 澤畑佳夫さん(地方考夢員©研究所所長) ← 今回はココ
  • 第4回(民間分野) 河村玲さん(株式会社 良品計画ソーシャルグッド事業部 スペースグッド担当部長)
  • 第5回(都市農村交流分野) 永岡里菜さん(株式会社 おてつたび代表取締役)
  • 第6回(地域実践分野) 多田朋孔さん(特定非営利活動法人 地域おこし事務局長)

今回は行政分野ということで、行政にありがちな●●計画などを作成する際の「座談会」の開き方、進め方が大きなテーマでした。

元公務員としてあるあるな内容でした!

第3回の内容に関するメモを以下に記録します。

「⇒」は個人的な意見です。

地域住民との合意形成に向けた座談会の在り方とは

第3回 講師:澤畑佳夫氏(地方考夢員©研究所所長)

市民協働の必要性

●プロフィール
・元茨城県東海村役場職員
・2019年4月から、地方考夢員研究所、一般社団法人農業会議所専門相談員

●農村プロデューサーとは
・活動目的は「農業を通じて持続可能な地域の実現を図ること」
・農村地帯でなくとも、農政課職員でなくとも担うべき理由がある

●まちづくり
・まちづくりはハードだけでなくソフト(歴史、文化、伝統、安全・安心・・・)も対象
・役所だけではつくれない

●人・農地プランの特徴
・通常の〇〇計画・・・「行政がやるべきこと」を決めてもらうことが目的
・人・農地プラン・・・その地区における「農業の未来設計図」。それぞれの主体がやるべきことを、責任を持ってやることが重要

 ⇒ 本来は〇〇計画というものはすべて、行政だけでなく地域に関わる個人、事業者、団体などが、果たすそれぞれの役割を決めるものだと思う。
   「行政がやるべきこと」だけと限定しているからまちづくりがジブンゴトにならずに、行政だけに依存したり、行政批判になったりしてしまうのではないか。

●計画づくりの最大のポイントは「地域住民の想いを徹底的に話し合うこと」
・反面、ほとんどの職員が目の前の業務で手一杯
・多様化する市民ニーズに役所の職員だけで対応するのは不可能
・市民協働の必要性
 → 市民、行政などがそれぞれの特性を活かし、共通する目的の実現に向けて連携すること
・自治体戦略2040構想研究会によると、2040年には公務員は今の半分になるといわれている

●職員が動きたくなる環境づくり
・新しい業務は敬遠される、上司から認められない
・小さなミスでも報道される
 → 職員はリスクを冒してまで頑張ろうという気持ちにならない
・「進めてよい」と言ってくれなければ職員は積極的に動きづらい
・人事異動は組織の論理が優先されてしまう

地域での合意形成に向けて

●ありがちな「座談会」の課題
・従来のやり方での通知文やホームページでの告知では人が集まらない
・「座談会」のイメージが悪い
「お願いする行政と拒む住民」
「追及する住民と言い訳する行政」
 → 行政と住民とが対峙関係になっていた
 → 本来、同じ目的に向かっていくパートナー関係であるべき

●ありがちな座談会への不満
・いつも同じ人ばかり話している
・声の大きい人の意見だけが通る
・ごく少数意見が、地域・団体の代表意見として取り上げられる
・どうせ意見を言っても変わらない
・その場で意見を言う勇気がない
・「〇〇のくせに」という声(女性、若造、よそ者)
 → 発言した人は気づいておらず、言われた人は次から来なくなる

農村プロデューサー養成講座(入門コース)第3回資料より

●これまでの座談会は「プレゼンテーション型」
・行政(事務局)が主導・提案
・たたき台 → 事前調整 → 実施
・「議長の仕事は参加者の意見を取りまとめることであって、行政の言うとおりに進めることではない」

●合意形成のポイント
・「満足ではないが納得はするよ」という言葉
・納得感はプロセス(どうやって決めたか)から生まれる
・会議はお互いの意見を「聴き合う場」

●座談会は約束(宣誓)からスタートする
・自分ばかり話さない
・頭から否定しない
・楽しい雰囲気を大切にする
・参加者は対等である
・みんなが気持ちよく話せるように協力する

農村プロデューサー養成講座(入門コース)第3回資料より

●参加者の笑顔による影響
・公開した写真に参加者の笑顔
 → 大きな反響があった

●日本型ファシリテーション
・一般的なファシリテーションは欧米型。そのまま日本で導入してもうまくいかない場合がある
・欧米・・・自分から発言する、論理的に話すことに慣れている
・日本・・・自分から発言しない、感覚・感性で話す人が多い
・発言させるスキル=日本型ファシリテーションが必要

●人を集めるには
・「人が集まらない」のは言い訳
 → 地域の特性、市民の意識が低い、天気
・人が集まらないのは企画力や広報・PR不足
・「人を集める」行動
 → 個別訪問、熱意を伝える
・1回目の座談会に魅力を感じなければ次回から来ない