『地域に愛される大学のすすめ』

まなびしごとLABの風間です。
こんにちは。

今回取り上げるのは『地域に愛される大学のすすめ』(NPO法人オンデマンド授業流通フォーラム大学イノベーション研究会 編)です。

最近、高校や大学と地域との連携に関わることが増えたため、地域をフィールド、題材としたプロジェクト型の学び、いわばLPBL(Local Project Based Learning)を個人的な探究テーマとしています。

こちらは大学と地域との連携の具体的な事例について書かれた本です。

5エッセンス

まずは本書から印象に残った5つのエッセンスを抽出しました。

地域の教育力は「ある」、そして「大きい」、しかし地域で学生を育ててもらう仕組みを、大学が組織的に、継続して実現していくのは「ものすごく大変だ」ということだ。地域と付き合うのは、簡単ではない。そこで学生を育てるには、地域にまるっきりおまかせでは、できるはずがない。教員も一緒に地域に入り、一緒に関係をつくり、活動していかなければならない

→ 地域に丸投げするのではなく、大学・教員も一緒に活動する

教育が目的だから、「この子はだめだ。もう連れてくるな」というところとは付き合わない。「この子はだめだから、叱っておいたよ、先生」と言ってくれる地域と付き合う。若者を地域の中でどう育てるのか、なぜ育てるのか、理念を共有する姿勢が、地域にも必要だ

→ 地域側が学生をお客さまとして見ない。一緒に育てる

教員の研究活動と学生の教育の綱引きは常に存在する。ゼミや講義を通してレベルの高い事例や理論を学んでも、活動そのものは学生の身の丈に合っている必要がある。「学生が自分でできるもの」でないと、学生のモチベーションも情熱も維持できない。一方で先生の指導が入ってこそ、質の高いプロジェクトにもなり、地域ニーズを満たすことも可能になる

→ 理論と実践を結びつける

高い学生満足度は、学生の8割が群馬県出身で、7割が県内に就職する同大にあっては、学生募集でも重要な意味を持つ。「地域からお預かりして地域にお返しする、そういう役割の大学です。だから、学生たちが大学に満足してくれれば、彼らが進んで入学志望者を連れてきてくれるんです」

→ 地域に必要とされる大学であること

大学はこうした育て学び合う関係を地域の中に築くための絶好の装置です。地域と大学が学生の教育のために手を携えることで、地域は「人を育てる地域」になり、「学び合う地域」になる。そして、学生は地域で活動することで、地域に興味を持ち、地域を愛することになる。断言しますが、地域にとってこれ以上「お得」なことはありません

→ 学生の教育に関わることが、地域のためにもなる

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その他、本書で気になった個所をまとメモとして書き留めます。

まとメモ

第1章 松本大学

・地域の教育力は「ある」、そして「大きい」、しかし地域で学生を育ててもらう仕組みを、大学が組織的に、継続して実現していくのは「ものすごく大変だ」ということだ。地域と付き合うのは、簡単ではない。そこで学生を育てるには、地域にまるっきりおまかせでは、できるはずがない。教員も一緒に地域に入り、一緒に関係をつくり、活動していかなければならない

・松本大学は、教育のなかに、地域の力を借りる仕組みをシステムとして整備する。主なものは以下の3点だ。
  「社会活動」という授業を導入、カリキュラムの整備
  学外で学ぶ仕組みとしての「アウトキャンパス・スタディ」の設置
  地域の専門家を招へいする「教育サポーター制度」の導入

・教育が目的だから、「この子はだめだ。もう連れてくるな」というところとは付き合わない。「この子はだめだから、叱っておいたよ、先生」と言ってくれる地域と付き合う。若者を地域の中でどう育てるのか、なぜ育てるのか、理念を共有する姿勢が、地域にも必要だ

・人は学んで幸せになる道を見つける。一方で人を育てることは人間の本質的な喜びでもある。長野県の「互いに学び合い教え合う」学習の風土が、松本大学の地域連携を、支えている

・地域づくり考房「ゆめ」(松本大学・松商短期大学部の学生の地域連携活動拠点)の取り組み

・地域の持っている危機感やニーズの度合いが弱いと、ちょっとした状況の変化に左右されてしまう。それならもういいかな、と地域の側が思ってしまったり、あるいは、学生の努力を無駄にしてしまうような結論を出そうとする。そこで教員が入って、地域のニーズを一緒に再確認し、目的を明確にし、プロセスを整理し、調整する。地域に関わる松本大学の先生たちは、地域コーディネーターの役割も兼ねる

・「地域が本腰を入れてやろうとすることだから、学生も本気で関わる意味があります」。そこから学生の「思いつき」が「思い」に変わり、大きく成長するための「学び」が生まれていくのだ

・教員の研究活動と学生の教育の綱引きは常に存在する。ゼミや講義を通してレベルの高い事例や理論を学んでも、活動そのものは学生の身の丈に合っている必要がある。「学生が自分でできるもの」でないと、学生のモチベーションも情熱も維持できない。一方で先生の指導が入ってこそ、質の高いプロジェクトにもなり、地域ニーズを満たすことも可能になる

第2章 共愛学園前橋国際大学

・高い学生満足度は、学生の8割が群馬県出身で、7割が県内に就職する同大にあっては、学生募集でも重要な意味を持つ。「地域からお預かりして地域にお返しする、そういう役割の大学です。だから、学生たちが大学に満足してくれれば、彼らが進んで入学志望者を連れてきてくれるんです」

・学生を「地域にお返しする」ときに、その帰っていく先で大学を評価し、愛してもらえることが必要だ。一方で「大学の評価は輩出する学生にかかっている。いまいる学生たちが、そして卒業生が、地域を耕し、温めてくれます」

第3章 南大阪地域大学コンソーシアム

・同コンソの教育プログラムを貫通する大きな特徴は、大学の学生や教員を、地域の企業や学校、自治体とつなぐことで成立するプロジェクト型だという点である。学生は「ミッション」を持って地域に出ていく。そのミッションを実行する現場が、人々が活きる社会としての「地域」である

・南大阪地域大学コンソーシアムの「キャリア教育」の定義は明確だ。生きていて、何かにぶつかったときに、ひるまず正しく思考してチャレンジする力を養うことである。地域の中で、あるいは地域のために実施するさまざまなプログラムを通して
  ・スキルとしての論理的思考リテラシーを獲得すること
  ・企業や地域との真剣勝負によって、社会の中で生きる自信と力を身に付けること
である

あとがき 地域は大学に何をもたらすのか

・産学官連携という言葉・・・残念ながら、大学が「学生を真ん中に置いて」、教育という視点から、産官を含めた地域や市民社会とつながることを意味する言葉とはなっていません。大学は第一義的には「人を育てる」目的を持った社会的な仕組みです。本来、その視点から産学官連携が語られてもいいはずです

・学生が「地域で学ばせてもらう」ことの意味は、「大学だけではできない学び」をつくることです。では地域にとって、学生がやってくることにどんな意味があるのでしょうか。・・・「学生を教育する」ことに社会が関わって当然だという視点が日本社会に欠けているためかもしれません。

・地域側に「教育」という視点が欠けていると、やってくる学生を「便利な若い労働力」として使ってしまうことがままあります。それでは学生も楽しくありません。・・・「無理やりやらされている」ところから脱却できず、学生が自由な発想で地域働きかける作用が失われてしまいます

・大学はこうした育て学び合う関係を地域の中に築くための絶好の装置です。地域と大学が学生の教育のために手を携えることで、地域は「人を育てる地域」になり、「学び合う地域」になる。そして、学生は地域で活動することで、地域に興味を持ち、地域を愛することになる。断言しますが、地域にとってこれ以上「お得」なことはありません

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