『まちがキャンパス』

こんにちは。
まなびしごとLABの風間です。

今回取り上げるの本は、『まちがキャンパス ~アクティブ・ラーニングが学生と地域を強くする~』(眞鍋和博・石谷百合加 編著)です。

こちらもLPBL(Local Project Based Learning)関係の本。
地域をフィールド、題材としたプロジェクト型の学びについて探究しています。

本書の5エッセンス

まずは本書から印象に残った5つのエッセンスを抽出します。

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地域と大学が連携することだけで、地域の課題が解決したり、大学が社会に貢献していることになったり、学生が成長したり、即戦力となる人材が育成できるわけではありません。・・・単に連携して活動を行うだけでは、地域や大学のどちらかにとっては有意義なものであっても、他方にとっては無意味なものになってしまう可能性があります。それを回避するためには、地域と大学の双方(学生を入れれば三者)にとって有意義なものにするための仕組みや調整が必要になります

⇒ 地域と大学の双方がWIN-WINである必要がある

地域活動に参加したことが無い学生にとって、地域活動に参加する条件は「(安)易、近、単(短)」(通称「あん・きん・たん」と表現)の3つでした。これは、①気軽に取り組める易しさ(難しく、高度なことではない)、②生活圏の近く(自宅・大学付近)、③単発・短期間(時間や期間に縛られたくない)、という3条件です

⇒ 「あん・きん・たん」の3つが揃わないで参加したいと思ってもらうためには、それ以上の魅力が感じられる活動である必要がある

活動を軌道に乗せるためには、地道に活動を続け地域の信頼を獲得していくこと、地域と交流すべく働きかけていくことが必要です。また、地域側にも活動の目的や趣旨を理解し、学生の味方となって相互交流や相互理解を進めるために動いてくれるような人が必要です

とりわけ重要なのが、地域側と直接やり取りを行うコーディネーターです。地域と学生の双方の意見や相談に基づいて調整したり、トラブルを解決したりする中で、地域との間に信頼関係を築くことができるからです。彼ら・彼女らの存在が、活動の目的や趣旨、ノウハウなどを継承させていき、さらに活動を深化させていくこともできるようになるのです

コーディネーターの役割。学生教育の側面では、地域側との共同作業によるプロジェクト設計、プロジェクト進捗中の学生への関与、その他環境整備等々、その業務は複雑かつ多岐にわたります。プロジェクト設計においては、より学生の学びが大きくなるように、成長の度合いが大きくなるように、地域から寄せられる課題を学びの大きい「プロジェクト」へと昇華させなければなりません。単なる「無償の労働力」というボランティア的な側面から、活動を通して学びを獲得するSL(サービス・ラーニング)やPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)といった教育プログラムへ変化させていくのです

⇒ 大学と地域をつなぐコーディネーターの役割の重要性

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本書の後半では、やはり大学と地域の間をうまく取り持つコーディネーターの機能の重要性に焦点が当てられていたように感じます。

その他、本書で気になった個所をまとメモとして書き留めます。

まとメモ

はじめに

・大学の役割として、社会的な貢献を求められるにつれて「役に立つ」大学として実践的な教育が望まれています

・地域と大学が連携することだけで、地域の課題が解決したり、大学が社会に貢献していることになったり、学生が成長したり、即戦力となる人材が育成できるわけではありません。・・・単に連携して活動を行うだけでは、地域や大学のどちらかにとっては有意義なものであっても、他方にとっては無意味なものになってしまう可能性があります。それを回避するためには、地域と大学の双方(学生を入れれば三者)にとって有意義なものにするための仕組みや調整が必要になります

序章 地域共生教育センターとはどのような場所か

・学生の関心が非常に高く、地域からも求められる存在である421Lab.の活動を行う上で、重要な役割を果たしているのが、学生運営スタッフです。・・・学生運営スタッフがいることで、多くの学生が集まったり、非常に多くの活動を同時並行でき、かつ活動を通じて学生も成長しているのです

第1章 地域活動を通した学生の学び

・地域活動に参加したことが無い学生にとって、地域活動に参加する条件は「(安)易、近、単(短)」(通称「あん・きん・たん」と表現)の3つでした。これは、①気軽に取り組める易しさ(難しく、高度なことではない)、②生活圏の近く(自宅・大学付近)、③単発・短期間(時間や期間に縛られたくない)、という3条件

⇒ 「あん・きん・たん」の3つが揃わないで参加したいと思ってもらうためには、それ以上の魅力が感じられる活動である必要がある

第2章 地域で学ぶ学生の成長 壁を乗り越えて変化する意識と行動

・地域活動の初期段階で直面する課題
 ①事前の期待と現実とのギャップ
 ②与えられた役割が果たせない
 ③円滑に活動が進まない

・身近なロールモデルの出現により、地域活動に対する意欲が徐々に向上し始めます。当初は新しいことに挑戦したい、友達を作りたいといった、利己的な動機で参加したものの上級生のサポートを受けることで、次第にチーム内に自分の居場所があることを感じます。みんなに迷惑をかけられないという気持ちや先輩等に支えてもらった経験から、もっと他者に目を向けなければならないと気づき、次第にチームを意識するようになります。このような心理的な変化がプロジェクトに対する帰属意識の高まりに繋がるのです

・学生の成長を促す6つのポイント
 ①最も身近な相談相手の学生運営スタッフ
 ②メンターとしての教職員
 ③学生が集う場
 ④ミスマッチを防ぐ丁寧な募集
 ⑤活動と学びをサポートする研修
 ⑥頼りになる上級生

・高校までの学習モデルの価値観から脱却することができるか否かが、大学での講義やゼミからの学びだけでなく、実践活動を通じた学びにも大きく影響してしまいます。つまり、必ず正解があって、それを(導く方法も)教わるという受け身な姿勢から脱却することが必要なのです

第3章 地域で学ぶ、地域も学ぶ 地域活動の誕生、展開、効果

・数年前にあるゼミに所属する学生が、見守り活動に戦隊モノの衣装を着て行っていた時期があり、面白がってマスコミからも取り上げられたりしたものの、卒業と同時に活動が途切れてしまったという事があったそうです。見守り活動を30年近く継続している人たちからすると、学生らが勝手に活動を始めて、なんの実績もないのに注目ばかり集め、自分たちの都合で終わらせてしまったということに対して、「あまりにも責任感がない。場(自分たちの町内)を荒らされた」という被害者意識を持っていました

・これまでの経緯などによって、反目しあう形でスタートすることもあります。そのような状況から活動を軌道に乗せるためには、地道に活動を続け地域の信頼を獲得していくこと、地域と交流すべく働きかけていくことが必要です。また、地域側にも活動の目的や趣旨を理解し、学生の味方となって相互交流や相互理解を進めるために動いてくれるような人が必要です。この地域側の理解者・支援者の存在が、新しい試みとなる大学と地域連携活動を軌道に乗せるためには必要なのです

・地域と大学との連携の3つの効果
 ①既成概念の打破。学生の発想やアイデアが、大人たちの発見や内省を促す。学生が地域にとって外様だから生じる。地域の人にとっての日常や常識が通じないから生まれる

 ②ネットワークの拡大。学生側が大人との相互作用を通じて、そのつながりを構築し発展させるのと同時に、地域側にも同様の効果が生じている。異なるネットワークを活かすことで、新たな活動が誕生したり、課題が解決したりする

 ③地域コミュニティの構築。協調的行動を容易にすることにより、社会の効率を改善しうる信頼・規範・ネットワークなどの社会的仕組みとなるソーシャルキャピタルを生み出し、熟成させる場。学生や地域の大人にとっての学びの場

・地域と大学生が連携するためのポイント
 ①学生に幅の広い道を走らせながら横で伴走する姿勢
 ②地域側に学生を支援してくれる大人がいること
 ③活動は交流からスタートすること
 ④継続性を前提とした仕組み作り

・地域活動に関して言えば、1年生や2年生が中心であり、就職活動などの存在を考慮すれば4年間も継続する学生は非常に稀です。とすれば、学生よりも長期に携わる存在が大学に必要になります。その存在が421Lab.のようなセンターやコーディネーターの存在です。とりわけ重要なのが、地域側と直接やり取りを行うコーディネーターです。地域と学生の双方の意見や相談に基づいて調整したり、トラブルを解決したりする中で、地域との間に信頼関係を築くことができるからです。彼ら・彼女らの存在が、活動の目的や趣旨、ノウハウなどを継承させていき、さらに活動を深化させていくこともできるようになるのです

第4章 プログラム開発とコーディネーターの役割

・大学での地域活動を行うためには、様々な調整を行いつつ、活動をより教育的なものへと進化させる役割を担う人材が重要になってきます

・大学と地域との連携・協働の背景にあるそれぞれの事情は違いますが、なぜ連携したいのか、連携することでどのような効果を生み出すことができるのかなどをお互いに考える必要があります。また、教育活動としての理解です。実践では失敗から学ぶことも多いため、連携先にはある程度の失敗に対しては寛容に受け止めていただく余裕をもっていただかなければなりません

・大学と地域をつなぐということは、単に学生を地域に送り出すことではありません。地域と大学がつながるためには、お互いが地域での活動の意義を理解し、共有しなければなりません。そして、お互いが協働を通じて深い学びを得ることで、表面的ではない本当のつながりがもたらされます

・コーディネーターの役割。学生教育の側面では、地域側との共同作業によるプロジェクト設計、プロジェクト進捗中の学生への関与、その他環境整備等々、その業務は複雑かつ多岐にわたります。プロジェクト設計においては、より学生の学びが大きくなるように、成長の度合いが大きくなるように、地域から寄せられる課題を学びの大きい「プロジェクト」へと昇華させなければなりません。単なる「無償の労働力」というボランティア的な側面から、活動を通して学びを獲得するSL(サービス・ラーニング)やPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)といった教育プログラムへ変化させていくのです

・地域との良好な関係を築く5つのポイント
 ①学生の活動が地域の日常に組み込まれること
 ②活動の継続性
 ③学生の力
 ④地域受け入れ側のキーマンの存在
 ⑤4つのポイントが担保されることで生じる地域の運営主体者としての自覚、もっとこの地域をよくしたい、関わりたいと思うシビックプライドの醸成

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