まなびしごとLABの風間です。
こんにちは!

2026年1月30日(金)、連載「『サード・ラーニング』のすすめ」の第2回「共創による学びを俯瞰する ~ 地域連携プロジェクトから紐解く「学びの生態系」のヒント ~」をnote上で公開しました。

今年から始めた連載企画の第2回です。

noteで公開中ですが、こちらにも転載していきます。

(noteへのリンク)
【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第2回 共創による学びを俯瞰する ~ 地域連携プロジェクトから紐解く「学びの生態系」のヒント ~|風間崇志/地域プロジェクトパートナー

【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第2回 共創による学びを俯瞰する ~ 地域連携プロジェクトから紐解く「学びの生態系」のヒント ~

1 はじめに

本記事は、連載『「サード・ラーニング」のすすめ』の第2回です。

初回となる第1回の連載では、私たちが意識的、あるいは無意識的に「他者評価」さらされている現状と、そこから脱却するための「サード・ラーニング(第3の学習)」という概念についてお話ししました。

【連載】「サード・ラーニング」のすすめ:第1回「選ぶ」学びから「つくる」学びへ ~ 他者評価の鎖を解き、自律的な学びを取り戻すための探究|風間崇志/地域プロジェクトパートナー

「サード・ラーニング」とは、個人の学びとしての「ファースト・ラーニング(第1の学び)」、学校や会社など組織での学びである「セカンド・ラーニング(第2の学び)」に対して、多様な属性を持つ他者が集まるコミュニティにおける共創の場において生まれる学びのことです。

そして、サード・ラーニングで得られる成果として、以下の2つの特徴があることを述べました。

  1. 自己と他者、そして両者からなるコミュニティという3つの領域を重ね合わせることにより、自己評価と他者評価をバランスさせることができる
  2. 学び合いの延長に生じる何らかのコト(プロジェクト)によって、個人の学びや成長にとどまらない、社会のアップデートや変革につながる可能性がある

しかし、一方で、もしかすると次のような疑問を思い浮かべた方もいるかもしれません。

  • 他者による評価がないと、結局は「ぬるい交流」で終わってしまうのではないか?
  • 会社や学校での学びは、二の次にしていいということか?
  • そもそも、サード・ラーニングの現場では、具体的に何が起きているのか?
  • それは個人や組織や社会にとって、一体どんな「いい効果」や「変化」をもたらすのか。また、それをどのように「評価」すればいいのか。

これらの疑問を抱くのは当然かと思います。

サード・ラーニングは、既存の学びを否定するものではありません。むしろ、第1・第2の学びで得た力を、社会というフィールドで実践し、さらなる個人や組織での学びへとつなげるという「学びの生態系」をつくる最後のピースであると考えています。

 そこで今回は、私がこれまで地域で関わってきた共創プロジェクトを題材とし、学びの場としてのサード・ラーニングがどのように機能したのか、そこでどのようなことが起きたのかを考える上でのヒントを探っていきたいと思います。

2 サード・ラーニングをどう見るか

実際の事例を取り上げるにあたって、先に挙げた疑問を踏まえて、以下の3つの視点から、サード・ラーニングとしての共創プロジェクトを眺めてみることにしました。

①【場】の性質
「本気の学び」か、単なる「交流」かといった、その場の空気や性質、メンバー同士の関わり方に関する視点

②【変容】の成果
サード・ラーニングやそこで生まれたプロジェクトを通じて、個人・組織・社会に何が起きるのか、どう変わるのかについての視点

③【評価】の尺度
個人・組織・社会に起きたことや変化を、何を基準として、どう測るのかについての視点

先に述べておくと、いずれのプロジェクトも順調に進展したといえるものばかりではなく、なかには道半ばで自然消滅のようにフェードアウトしていったもの、現在進行形で試行錯誤が続いているものも含まれています。

しかし、そうした葛藤や失敗の過程こそに、サード・ラーニングとしての学びのヒントが詰まっているように思えます。
(なかば言い訳のようなものかもしれませんが・・・)

ではさっそくこれらの視点から、実際に私が関わっている4つの共創プロジェクトを眺めていくことにします。

3 共創プロジェクトに見るサード・ラーニング

(1)比企起業大学
一つ目に取り上げるのは、私が公務員を退職し、起業するきっかけともなった比企起業大学です。
起業に興味のある方、既に起業している方が、「ミニ起業」について学んだり実践したりする場です。

・【場】の性質
受講者の属性は、まだ起業していない方・既に起業している方、会社勤めをしている方、年齢層、お住まいの地域、家族構成、手がけている事業領域も含めてさまざまです。
自分のホームグラウンドといえる組織や普段の仕事とは離れた比企起業大学という場に、学びを求めて参加しています。
起業という出口がはっきりしていることもあり、高い意欲が感じられます。

・【変容】の成果
こちらも起業を軸に考えると分かりやすく、大きくは起業する(している)人、起業しない(していない)人に分けられます。
また、会社勤めは続けつつ、副(複)業的に自分の事業を開始する方もおり、起業への関わり方や規模感もさまざまです。
なかには卒業生同士のつながりから、連携して事業を実施するケースも生まれています。
比企起業大学で学び、仲間と出会うことで、最初の一歩が踏み出しやすくなるというのが大きな特徴ではないかと考えています。

・【評価】の尺度
比企起業大学では、起業したことかどうかだけでなく、それによって起業した人や家族にどのような変化が起こっているかについてIRアンケートを実施しています。
その結果、学習内容の活用が年商に与える影響や年商が起業満足度に与える影響、起業満足度が健康満足度、家族満足度、人生満足度の関係などに影響を与えることがわかりました。
何を評価するかでプロジェクトの捉えられ方も変わることが分かり、評価の重要さを知るきっかけとなりました。

(2)県立高校での探究学習
2つ目は県立高校での探究学習です。
それまで「やらされ感」の強かったプログラムを、自己理解と社会との関わり方を大きな軸としてアップデートしました。
そして学校の中だけでなく、学校の外での活動や学校の外の人と関わりを通じて学びをつくっていこうという実践です。
これまで他者評価が強かった学校という閉じられた場に、探究学習による学びと自己評価を取り入れていこうという試みが行われています。

・【場】の性質
教員も生徒も「正解がない」状態からスタートし、教員・生徒・外部講師(あるいは地域の方々)との対話を重ね、より良い学びをつくるためにはどうしたらいいか、プロジェクトをより実りあるものにするにはどうしたらいいかを考えながら、実践を行っています。
「これをやってもいいですか?」と大人の顔色をうかがう必要はなく、やりたいことは基本的には何でも試せるような心理的安全性の高い場になるように、試行錯誤を続けています。
総合的な探究の時間という限られた時間の中ではありますが、少しずつ学校関係者以外の大人の関与といった要素を取り入れつつあります。

・【変容】の成果
「何を(what)」したか以上に、「どう(how)感じたか」という内省により得た学びを重視しています。
言葉だけでなく、「やりたいことをやるのは楽しいが、楽ではない」ということを、他者との協働や失敗の経験を通じて身をもって学んでいます。
また、学校外の地域の方との関わりにより、社会や誰かの役に立つことに対するやりがいや楽しさを得られたことも成果と考えられます。

・【評価】の尺度
学校として何を成果として評価するか、それをどのように検証していくかは試行段階であり、今後は従来のテストでは測れない内発的な動機やキャリア観などをどう可視化していくかという評価の尺度を構築していく段階に入っています。
またそこに生徒自身の自己評価をどう位置づけていくかも課題です。
そうしたことからプログラムをさらに磨き上げをかけていく予定です。

(3) ここから武蔵コンソーシアム(宇宙・産学官・地域連携コンソーシアム)
比企地域を中心とする自治体、民間企業、教育機関、個人が参画するコンソーシアムです。
地域の自然や歴史といった資源を使って、それぞれの会員が持つ強みを活かしながら、連携しながらプロジェクトを生み出し、地域活性化につなげることを目的としています。

・【場】の性質
組織や官民の壁を越えて多様なプレーヤーが参画し、これまでにない出会いやネットワークが生まれる土壌ができています。
一方で、単独の組織内で考案されたプロジェクトが多いのが現状です。
当初の目的に沿うような連携プロジェクトを実現するためには、意識的に関係者間をつなぐコーディネート機能、「ちょっとしたお節介」な関わり方が必要だと考えています。

・【変容】の成果
個々のプロジェクトだけでなく、まずはセクターを超えた多様な参加者同士のネットワークが形成されていることは大きな成果と考えられます。
それによって参加者の意識や地域との関わり方も変化する可能性があります。
これまでもいくつかのプロジェクトが生み出されてきています。
ただ参加しているメンバーの多様性を考えると、まだまだ予知は大きいといえそうです。
今後の展開として、属性を超えたつながりによる地域課題の解消や社会的インパクトが大きい具体的な事業への期待が高まっています。

・【評価】の尺度
ネットワークを活かし、会員相互と地域にとっての「実利」へとつなげるコーディネート機能の強化が課題です。
各会員が抱えているニーズやお困りごとを細やかに拾い上げ、「つながること」から、具体的な「地域の変化」へと価値を変えていく段階にあります。

(4)キタサカまちづくり部
住民が「部活動」のように楽しみながら、自分たちが欲しい場所や活動を自分たちの手でつくる「学びと遊び」が混ざり合う実践です。
北坂戸周辺エリアで活動している個人や団体はいるけれども、どんな人がどこでどんなことをやっているかが分からない、お互いがつながっていないということから、地域のプレイヤーの可視化やネットワークづくりからスタートしました。

画像

・【場】の性質
勤め先や仕事の属性に関わらず、「キタサカ」というエリアへの関わりや好奇心を起点に、多様な活動や関心を持つ人たちが集まっています。
これまで知らなかった人同士が交わることで、「何かが生まれそう」な雰囲気が生まれています。
一方で、参加したことのない方にとっては、どんな人たちが集まっているのかが見えづらく、新たに参加しづらいという声も聞いています。
また、そのときそのときの関わりだけでなく、継続的なつながりや顔の見える関係づくりの必要性を感じています。

・【変容】の成果
点在していた個人プレーヤーが結集したことで、空き店舗活用などの具体的なアクションへとつながっています。
一人では踏み出せなかった一歩が、仲間ができることで踏み出すことができる機会の創出にもつながっています。
また、内輪の集まりだけでなく、外から見える具体的なアクションが生まれたことで、地域に関わる団体との新たな関わりも生まれています。

・【評価】の尺度
ハイパーローカル(超地域密着)な実践ゆえの認知度の課題はありますが、地域外からの参加者も訪れるなど、地域を超えた交流のハブになりつつあります。
一方で、具体的なアクションをさらに進める上では、一定の責任や信用が伴うことについても考えていく必要があります。
この熱量をビジネス化や社会的インパクトのあるプロジェクトへと昇華させ、持続可能なモデルへと育てる方法を検討していく段階にあります。

4 サード・ラーニングの要素

画像

先に挙げた4つのプロジェクトに共通しているのは、関わる人々が組織や仕事の看板を背負いつつも、いったんは横に置いておき、あくまでも個人として交わっている点です。

また、そのことによって、個人、組織、地域・コミュニティという3つの層のそれぞれにおいて、既存の第1、第2の学びでは得られないインパクトをもたらすのではないかと考えています。

・個人
仕事上の役割やスキルは持ちつつも、組織での肩書きは重視されない場において、「組織の力を使わなくても、自分の力で他者の役に立てる」という自己効力感が生まれます。また、他者評価のモノサシではなく、手触り感のある他者やコミュニティへの貢献が、自己評価の視点を取り戻させてくれます。

・組織
外部の多様な視点に触れたメンバーが組織に戻ることで、硬直化した「組織の常識」に健全な違和感を持ち込みます。サード・ラーニングでの経験は、既存組織を内側からアップデートするイノベーションの種となります。

・地域・コミュニティ
地域のことは 「行政がやってくれる」「誰かがやるだろう」という他人事の視点が、共創プロジェクトを通じて「自分たちがこのまちをどうしたいか」「このまちで自分たちはどうありたいか」という当事者意識(じぶんたちごと)へと変容します。この主体の誕生こそが、持続可能な地域社会の基盤となります。

以上を踏まえ、サード・ラーニングを構成するために必要不可欠な3つの要素を抽出してみたいと思います。

①相互越境
単に個人が組織の外に出るだけでなく、その場に集まるそれぞれの人たちが、お互いの所属組織から離れた中間領域に集う場であること。名刺や他者評価という制約のなさが、個人の創造性を解き放ち、それらが交わることで新たなイノベーションのきっかけを生みます。

②対話と共創
情報の共有だけで終わる会合や単なるつながりだけではなく、価値観を揺さぶり合う対話やプロジェクトの共創があること。結果だけに限らず、そのプロセスそのものが学びであり、最強の学習教材となります。また、プロジェクトを実施した結果として、社会的なインパクト創造にもつながります。

③「自分たちごと」の獲得
最初は個人のささやかな好奇心や違和感から始まったものが、対話や共創を通じて、「私たち」の意思に代わり、コミュニティが形成されていくこと。どの組織にも属さないコミュニティだからこそできる、自分たちが考える幸せや楽しい社会をつくっていくプロセスを味わうことができます。そしてそのプロセスにこそ、社会人としての深い学びが宿ります。

5 結び:次号に向けて

本稿では、私が実際に関わっている現場やプロジェクトを題材に、サード・ラーニングの全体像やその要素を抽出することを試みました。

次回以降は、サード・ラーニングで起こる「個人」「組織」「地域・コミュニティ」という3つの層における変革に焦点を当てつつ、学習や教育分野におけるさまざまな理論や私自身の実践なども踏まえながら、サード・ラーニングの意義や可能性、今後の展望についてさらに考えを深めていきたいと思います。

これまでの連載

第1回
「【連載】「サード・ラーニング」のすすめ」をスタートしました(2026年1月15日) – まなびしごとLAB

メルマガ「月刊 地域でしごとをつくるマガジン」を発行しています

毎月はじめに、メルマガ「月刊 地域でしごとをつくるマガジン」を発行しています。

前月に取り組んだ各プロジェクトの状況、一般社団法人ときがわ社中の活動、地域でのしごとづくりに役立つ本のご紹介、今後の予定などをまとめています。

サンプルや登録フォームはこちらのページからご覧いただけます。

地域でのしごとづくりに取り組んでいる皆さまのお力になれたら嬉しいです!