公民連携の中間支援の可能性

公務員の仕事を振り返って思うこと。

「公務員はいろいろやりすぎ」

とにかくスクラップ・アンド・ビルドがない。
昔からの定型的な仕事に加えて、トップから下されるオーダーによる新規事業、国から県から権限移譲されてきた仕事が膨れ上がり、ごちゃごちゃしている。

もっと公務員がやるべき仕事をシンプルにして、それ以外は外注、もしくは民間に委ねてしまえばいいのにと思っていた。
もちろんすべて丸投げにするということではない。
重要なのは行政と民間企業の強みを活かして、共創して、より大きな価値を創り出していくということだ。

その点、戸田市の政策研究所の取り組みはおもしろい!
ルーティンワークに忙殺されがちな各部署の仕事から切り離して、課題の分析や新たな取り組みの研究を常態化するというもの。

残念ながら常勤は1名だが、政策形成アドバイザーが設置されており、官民の連携の受け皿にもなっている。
もう少し関わる人数を増やして、行政課題と民間課題、総じて地域の課題が混ざり合うような場になるといいのではないかと感じる。

今、仲間とやろうとしているのは、そういう地域の課題が集まってくるような場づくりだ。
行政からはトップや幹部クラスから直接、あるいは部署ごと、学校ごと、民間からは企業や自営業者、大学からということもあるかもしれない。
そうしたところの課題が集まってきて、一括できるような場。

もちろん自分たちですべて解決することはできないけど、課題があるところにはビジネスチャンスがある。
うまく地域内のプレーヤーや地域外の企業などをコーディネートしながら、いろんな地域課題に取り組み、課題を解決しつつ、フィールドとしての地域価値を上げていけるようなことができたらと考えている。

民間との連携といっても、お金が必要なことばかりじゃない。
どうしても行政は、民間に何かを頼む=お金が必要という思考になりがち。
そこをうまく、WIN-WINの関係をつくり出すことができれば、予算に縛られない仕事ができるようになる。

この良い事例が埼玉県横瀬町の「よこラボ」。
行政はほとんど予算を使わずに、民間企業主体で同時進行的にさまざまな取り組みが動いている。
実際に横瀬町に行ったことがないのが残念だけど、キーマンとのいえるお二人からいろいろお話を伺って、すごく可能性を感じている。

もう一つは長野県塩尻市のMICHIKARA。
『日本一おかしな公務員』(山田崇)を読んで、これには惹きつけられた。
塩尻市の方は大企業との連携が多く、かなりインパクトも大きくなったり、横展開している様子。
こちらもかなり興味深い。

これらのような取り組みを他の地域でも展開できたら、理想的な公民連携の形が広がっていくような気がしている。
地域活性化がうまくいっている事例を見ると、公民連携がうまくいっている地域が大半。

何より、いろんな世界に生きる人たちと一緒に仕事ができるのはおもしろい!
公務員を辞めて、民間の立場で行政や企業と仕事をする中で、一番そのことを強く感じております。

まとメモ

競争と共創の「公民連携」の可能性

●公民連携とは

・公民連携とは「Public Private Pattnership」であり、「公(Public)」と「民(Private)」が「連携(Partnership)」することにより、「何か」を達成していく取り組みになる。そして、この「何か」は自治体により異なる

・行政と民間が相互に連携して住民サービスを提供することにより、行政改革の推進、民間の利益拡大に加え、住民サービスの向上や地域活性化等を目指す取組である

・自治体の一方通行的な公民連携では持続性が担保されない。民間のメリットも考えてこそ、公民権例は継続的に発展していく

●「新しい公共」とは

・「古い公共」は、多岐にわたる公共部門の全てを自治体が単独で担う状態

・「新しい公共」とは、自治体(行政)だけが公共の役割を担うのではなく、地域の様々な民間(住民や民間企業等)が公共の担い手の当事者として活動する

●政策が減れば公民連携は・・・

・縮小時代は政策を減らさなくては、自治体の持続性はない。いまは多すぎる政策が公害化している
 → 「政策公開」

 ⇒ 新規事業をつくっても、既存事業をスクラップせず、どんどん政策が増えてしまうのが問題。
   さらに国からどんどん権限移譲も進んでくるので、ますます基礎自治体がやることが増える

自治体シンクタンク「戸田市政策研究所」の軌跡

・職員一人ひとりの政策形成能力を向上させ、市全体の政策形成力を高めることによって、政策を的確に実践していくため、2008年4月に自治体シンクタンクとして政策研究所を設置した

・体制は、所長に副市長、副所長に政策秘書室長、主任研究員(2名)を配置している。主任研究員は課長級と係長級の2名。専属で業務に従事しているのは係長級(副主幹)の職員1名。学術的立場からサポートする役割として、学識経験者1名を政策形成アドバイザーとして委嘱している

→ 研究テーマに応じて他の担当との兼務による研究員の発令を行い、更に「プロジェクトチーム」や「ワーキングチーム」を構成することで調査・研究活動を進めている

⇒ 研究所とはいえ専属は1名。人材育成という意味では政策形成までのプロセスを内製化しているのは、すばらしいが、たとえば首長のブレーンのような戦略パートナーが民間にいるとさらに活発化しそう(学識経験者もいいけど、できれば企業や個人)。このポジションはまさに官と民のつなぎ役でおもしろい!

・政策研究所の機能は、大きく「調査研究機能」と「政策支援機能」の2つ

・自治体シンクタンクとして政策研究所を設置した背景としては、日常の多忙な業務に追われてしまい、中・長期的かつ分野横断的な行政課題に対し、積極的に調査・研究を行う機会が失われていることにあった。また、現在は、職員一人ひとりの政策形成能力の向上が不可欠であり、これらの課題を解決する手段として、自治体シンクタンクが採用された

・現在、様々な課題がいくつも同時に発生しており、その一時的な対応策である「対策」に終始している自治体も見受けられる。そうではなく、しっかりと先を見据えた「政策」を推進できる体制が必要であり、その結果、住民の福祉の増進につなげていくことが肝要である

戸田市の教育改革の取組

・何を実現したいかという教育意思をしっかりと持ち主体的に関係を構築する限りにおいて、外部のリソースを活用することは素晴らしい効果をもたらしている
 → 社会との連携によって時代のニーズに応じた最先端の教育を取り入れられる
 → 学校管理職や教師も視野を広げ、学校内だけでは生まれにくかった意識改革が進んでいる
 → 実社会とつながることで、子どもたちが出ていく未来社会を思い描くこともより容易になる

・クラスラボというコンセプトを掲げ、学校や教室を様々な研究の場として提供することをオープンにしている。学校や教室は教育の最前線である。現場における管理職や教師の生きた知見も、学校以外では得ることはできない。このような場を実践研究の場(ラボ)として外部に提供できることが、基礎自治体の持つ最大の強みである

・教育長、教育委員会事務局、学校、校長会、校長が日々、SNS等により積極的な情報発信を行っている。日々の思いや取組、イベントへの参加、誰とどのような話をしたかなどについて常に発信することで、戸田市が今どのようなことを考え、社会に何を求めているかを伝えている。これらの情報に対して、コメントを通じて情報交換ができるとともに、思わぬ連携のマッチングが成功することもある

・学校における働き方改革
 学校における産官学民との連携は、外部の知のリソースを活用するという意味で中長期的には教職員の負担を軽減するという面がありつつも、導入期においては連携先との調整や、外部のものを現場に取り入れるための研究や作業等のために一定の負担がかかるのも事実である。
 様々な教育改革が実を結ぶには、教師が自己研鑽や授業準備等のために時間を確保するよう、全力で負担軽減を図っていくより他はない

【教育政策シンクタンク】
・外部の研究者に頼る調査分析のみでは、市や教育委員会が所有するデータを外部に提供することに伴う加工のコストや個人情報面での制約のほか、教育委員会の意思が十分に浸透しない研究となりうることや、コスト面での継続性といった問題が起こり得る
 → 基礎自治体としては全国初のデータの管理、分析、実践等を一括して自前で行う教育政策シンクタンクを設置

・優れた教育政策や教育実践をエビデンスベースで検証し、知見を蓄積・発信していくことが目的

・教育委員会の政策担当職員を中心に、EBPM(Evidence-based Policy Making)に識見のある有識者をアドバイザーとして加えた体制を想定。産官学民の外部機関等との連携も継続