筑波大学附属坂戸高校の総合学科研究大会

2023年2月11日(土)、筑波大学附属坂戸高校の総合学科研究大会に参加しました。

3年ぶりのリアル開催だそうです。
私は午前中の生徒さんの研究発表のみ参加しました。

「農業研究」や「販売実践」の授業の中では生徒さんの発表や活動を目にしてきましたが、成果発表を聴くのは初めてなので楽しみにしていました。

そして期待に違わぬ、いや期待以上の内容でした。

あまりの内容のすばらしさに、私も思わず本気モードでメモをとり、質問をせずにいられませんでした。

差しさわりない範囲でメモを書き留めておきます。

研究大会メモ

●筑坂のカリキュラム

・3年間を通じた探究 キャリ・コア科目
 1年次 産業社会と人間 自分を知る、社会を知る
 2年次 T-GAP グループによる課題解決学習
 3年次 卒業研究 個人の探究、論文執筆
・総合学科 多彩な選択科目
 生物資源・環境科学
 工学システム・情報科学
 生活・人間科学
 人文社会・コミュニケーション
・グローバル教育
 筑波大学と連携し、SEA Teacherプロジェクトに参加 
 東南アジアから教育実習生を受け入れ(2020年~)
・2年次から自分で時間割を決める
 必修科目+一般選択科目+科目群指定科目
・T-GAP TSUKUSAKA Grobal Action Program
 自分の興味×社会課題 →アクションにつなげる
・筑坂で得られる学び
 ①探究を止めない学び
 ②自己自立できる学び
・1年次 興味関心の幅を広げ、2年次で身近な課題に対する具体的なアクシ ョンを行い、3年次では将来につながる探究を自ら行うことで、段階的な探究スキルを身に付けることができる

研究発表メモ

ここからは生徒さんによる司会で、各年次からの学習や研究内容の発表がありました。印象的だった言葉をメモ

1年次

・自分で考える+他者(友人や先生)を頼ることが、自立できる学びにつながる
・自分の夢の発見 そこに向かって困難を乗り越えられる学びの力を身に付けられる

〇産社概要
・「産業社会と人間」 自分と身の回りのことを知る、探究する
・Will発掘ワークショップ
・Vision、Mission、Valueから自分のWillを導き出す
・2年次の科目選択に向けて、先輩や先生への相談会
・さまざまな探究の機会。とうもろこし探究、地域探究など

〇未成年の主張
・おもしろい×社会課題解決
・funny×interesting
・幸せ=不自由がないこと、満足、欲・・・いろんな見方、要素が合わさっている
・一つのことだけでは社会課題を解決することは難しい
・自分のおもしろいを掛け合わせていったら、少しでも社会が良くなるのではないか

〇ちやほや
・14歳ころから映像制作。MVなど
・HPもつくって依頼を受けている
・映像編集者は目立たない

〇わたしのやりたいこと
・好きなことで生きていきたい!
・パソコン好きだった → 一生好きと言えるかという疑問
・興味持ったらすぐ行動
・WEBもつくっている

〇My vision
・誰もがおいしく食せるクリエイティブな食品をつくる
・無駄なく、おいしく、楽しく
・ハッピークリエイティブクッキング
・地域の子どもと、楽しく作りながら、食育、家庭系食品ロスを削減
・中学生162名のうち、46%が食品ロスのことを知らないという現実
・家庭環境によって違う
・事業系食品ロスに比べて、家庭系食品ロスは認知度が低く、具体的な対策が少ない
・ハッピークリエイティブクッキングは食育、調理スキル、コミュニケーションが促進できる
・食を知り、考え、作り出す
・クックパッド クリエイティブクッキングと一緒にやりたい
・マルカートという団体で活動を始めている

(すばらしいと感じたこと)
・自分の興味関心と向き合う
・社会に対する注目、関心
・実践へのステップ

●2年次 T-GAP

・全36プロジェクトが生まれた
・10月に初めてT-GAPフェスタ。中学生を対象に開催

〇自己肯定感
・若者の自己肯定感の低さは社会課題
・いじめ、若年無業者の増加、親との関わり
・日本人の特性
・目的「ネガティブな考え方による自己肯定感の低下をなくしたい」
・カードゲームを使ったワークショップ
・ネガティブな言葉を、ポジティブな言葉に置き換える
・中学生より、保護者からの評判が良かった
・「子育て時の良きヒント」

〇規格外野菜「野菜チップス」
・飲食店でのアルバイト経験から
・チーム名 food×catch=footch
・規格外野菜の廃棄量 高止まり 178万7000t
・食品ロスの数字では把握できない(流通していないものとして取り扱われる)
・要因
 ①厳しい流通ルール
 ②廃棄コスト(加工・販売するより廃棄する方が安上がり)
 ③廃棄する方が簡単
・目標「加工・販売した方が利益になる」
・坂戸市内の農家から規格外野菜の仕入れ
・高校の乾燥機を使って野菜チップス製造
・校内で販売 50円/袋
・校内販売でのフィードバックを活かし、T-GAPフェスタでも販売
・評価 5点満点中4.28点、「規格外野菜に抵抗ない」88%
・農家への利益還元とフィードバック
どうしたら継続しやすくなるか? → 売る側ではなく、農家側のタイミングで野菜を出せるといい
・会場からの質問 
 どう価格設定したか? 何を目指しているかによって価格設定の方法が変わる
 → SDGsブランドで高く売られているものもある。高いと一般に普及しない
・私の疑問
 ⇒ 値段が安いと、「規格外野菜だから安い、価値が低い」という価値観は変わらないのではないか。市場の「規格外」でも、野菜としての味、質は、価値は同じという価値観をつくる必要があるのではないか。
 むしろ商品によっては「規格外」である方がおもしろさという価値につながる可能性もある。たとえば小さい野菜なら丸ごと漬物にできるなど。「腸活野菜」

〇包括的生教育
・原因
 ①日本の義務教育の遅れ
 ②選択肢の少なさ
 ③ネットでの誤った情報
・中学生への出前授業を実施
・埼玉医科大学 高橋先生からのアドバイス。小中高校で出前授業を行っている
・友達目線とアイスブレイクの必要性
・女子栄養大学のサークル設立に向けた取り組みと協働

(すばらしいと感じたこと)
・自分の興味関心
・仮説
・実践
・改善

●3年次

〇すいおう(芋)のレシピ開発
・坂戸市が特産化に向けて取り組んでいる
・葉は活用されているが、芋が廃棄されている問題
・認知度アップが必要
・レシピを考案し、認知度が高まることで、食品ロスが減り、地域活性化にもつながる
・3つのポイント
 ①商品化
 ②健康スイーツ
 ③SNS映え
・紅はるかに比べると甘みが少ない、繊維が多い、色は薄い
・市内洋菓子屋さんからアドバイスもらった
・デコレーションカップケーキ
・高校生15名を対象に食味調査
・SNSでいいねが5倍以上
・クックパッドにレシピ掲載した
・会場から質問
 SNS以外にどういったやり方があるか?
 → パティシエさんとのコラボや道の駅での販売もある
・私からの質問
 ⇒ なぜ高校生を対象に調査したか? ターゲットは高校生?
 → 特定の人だけではなく、広く食べていただけるように

 ⇒ ダイエット経験があるなど、ターゲット層を絞って考えるともっとおもしろい
  それによって価格、見た目などの商品の形や発信方法が違ってくる

〇CAVE型VR空間による没入感、ソーシャルプレゼンスへの影響
・ソアリンの没入感に注目
・VR HMD型とCAVE型がある
・新しいエンターテイメント創造に貢献したい
・実験結果
 没入感には違いが見られなかった
 ソーシャルプレゼンスは距離が離れている方が高まった
 会話が生まれることでソーシャルプレゼンスが高まるのでは

〇高齢者における市民大学
・高齢者の生きがいに教育
・高齢者教育 →生涯教育
・目的「市民大学の存在意義や役割を明らかにする」
・高齢者の社会参加でやりがいが得られる。方法が示されていない
・所沢市民大学でヒアリング
・地域参画と生き甲斐、健康維持
・市民大学は学びを深める場
・学び+社会参加が生き甲斐につながる
・市民大学は学びと地域の発展と社会参加に寄与する
・私の疑問
 ⇒ 市民大学がどのような理由で地域の発展に寄与すると考えたのか?
  具体的に聞きたい

〇スクールカースト
・生徒集団の閉鎖性が特徴
・いじめととらえられない、判断しにくい
・いじめと比べて、論文が少ない

〇『高瀬舟』の教材価値
・説明的文章が重視され、文学的文章が軽視されているのではないか?という疑問
・目的「多様な読みの可能性」
・有罪か無罪かの二元論化ではなく
・会場からの質問
 なぜ近代文学なのか?
 → 近代文学には、時代を生き抜く人間としての葛藤が表現されている

(すばらしいと感じたこと)
・自分がどう思うか、どう考えたのか、どうしたいのかが明確に主張されている
・関心を持った分野への問題の絞り込み
・実践
・他者との関わり(アドバイスをもらう、実際にやってみて評価を聞く、反応を見るなど)
・改善につなげる行動

●講評

・学問とは学んで問うこと。最も重要なことは「問う」こと
・アンケートは説明のために使うもの
・感情+理論 現状を乗り越える力になる
・冷静な頭脳と温かい心
・受け止めてくれる先生方。生徒はそれに応えたいと思う
・先生から何度も問いかけられると、自分が大切にしたいことがわかってくる。他者と同じように大切にしていることがあるという気づき
・コミュニケーション。話したいことが何なのか分からないと伝えられない。その表現方法はさまざま
・見てから定義するのではなく、定義してから見てしまうことが起こりえる。現場を見ることが、考え、判断する力を養う
・力をつけたことが、自分だけでなく、他者のためにも役に立つ
・誰かに未来を照らしてもらうのを待っているだけでなく、誰かの未来を照らせる人に自分がなるという気持ち

まとめ

最後に、今回の総合学科研究大会に参加して気づいたことをまとめてみます。

3年生の卒業研究だけでなく、1年生、2年生もそれぞれの学年で学んできたこと、取り組んできたことの発表があるので、それぞれの学年での学びの成果や学年が上がるにつれての変化が感じられました。

1年生は知識や経験が少ない傾向があるけど、尖っている。
学年が上がるとそれが丸く削られていくのではなく、その形を活かしながら磨かれていく印象を受けます。

尖っているものを、削って丸くしたり形を整えるのではなく、むしろ尖りを強調したり磨いたりすることで際立たせていく。
そこが個性になり、武器になるんだと思います。

進学という目先のことだけではなく、人生のキャリア、生き方といった先につながる学びの力が身に付けられるようなカリキュラムになっているということなんでしょうね。

また、在校生や卒業生が、高校のことや自分自身が学んだことを誇りとして語っていたことに単純に感動しました。
それが何より一番の学びの評価なのではないかと思います。

また、それは同時に外の人からの評価にもつながります。

同じことが地域にもいえます。
出身者が、出身地や自分自身を誇りに思えるまち。周りから見ても魅力的に感じられるはずです。

ますます筑波大学附属坂戸高校のファンになりました。

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