「農業研究」での馬ふん堆肥に関する研究発表

2023年2月15日(水)9:30-11:00、筑波大学附属坂戸高校の「農業研究」の研究発表にお邪魔しました。

今年度の農業研究では、ときがわ町にある養老牧場、ホースケアガーデンさんの馬ふん堆肥を題材として取り上げていただいています。

この日は9月から取り組んでいた研究成果の発表がありました。

この日、発表があったのは以下の4つのテーマ。

  • 外来雑草種子および担子菌類の有無について
  • 外来雑草種子の有無について
  • フジ化粧カブ栽培における馬糞堆肥の効果について
  • 木くずを使った馬糞堆肥がコマツナに与える影響の、他の馬糞との相違点の観察実験および食味調査
  • 馬糞堆肥と学校堆肥の比較から見える馬糞堆肥の活用可能性

専門的な内容については私の及ぶところではありませんので、研究の結果わかったこと、発表を聴いて感じたこと、疑問に思ったことを差しさわりのない範囲で以下に書き留めておきます。

研究発表を聴いてのメモ

①外来雑草種子および担子菌類の有無について

【目的】
馬糞堆肥から生えるキノコについて検証し、安全性を明らかにする

【考察】
・菌やカビが発生したが、キノコの子実体は生じなかった
・キノコ自体が発生したという報告は、馬ふん堆肥を撒いた場所にあった菌やカビの影響による可能性がある
・馬糞堆肥の熟成が進むことで、発生する菌が減少すると推測される
・発生した菌やカビの同定は行うことができなかった

【感想・疑問】
・別のグループの発表では、熟成することで「土壌生物や微生物が活性化する」との指摘もあった。これらの関係は? 量は減るけど動きは活発になる?
・なぜ菌とカビが2段階に分かれて増加・減少したか?
・このことが何を意味するか?

外来雑草種子の有無について

【目的】
馬糞堆肥中に、一般に土の中にない雑草がないか、作物の悪影響がないかを調べる

【考察】
・堆肥が発酵する段階で、種子が熱処理された可能性がある
・発芽した雑草では、馬糞堆肥のみが入っていたプランターの雑草が群を抜いて成長していた。このことから肥料としての効果が期待できるのではないか
・雑草の種類の特定はできなかった

【感想・疑問】
・種子が発芽したものと発芽しないものがあった。両者の違いはどんなことが考えられるか?
・雑草が発芽しないのは馬ふん堆肥のメリットになる可能性

フジ化粧カブ栽培における馬糞堆肥の効果について

【目的】
・馬糞堆肥の栽培上の有効性を検証する
・土壌改良に高い効果が表れ、ほかの堆肥よりもフジ化粧の紫色の発色がよくなるのではないか(仮説)

【考察】
・土壌改良材としての効果の違いは見られなかった
・ほかの土壌改良材に劣らず栽培可能である
・馬糞堆肥で栽培したカブ(フジ化粧)は、ほかの堆肥のものよりも色が濃く表れていた
・食味調査等の結果
 色・・・馬糞堆肥のカブが最もポイントが高い
 形・・・馬糞堆肥のカブが最もポイントが高い
 触感・・・馬糞堆肥のカブは、堆肥なしの次にポイントが低い(固い)
 嗜好・・・馬糞堆肥のカブは、めばえ堆肥の次にポイントが高い
 収量・・・4種類のうち、もっとも低い収量だった

【感想・疑問】
・発色の違いは個体差による可能性はあるか?
・発色が良くなることで、農作物の価値向上につながる可能性があるのではないか(観賞用、加工用など)
・馬のエサとなるビートの栽培に馬糞堆肥が使用できるか?(ホースケアガーデンの鈴木さんからお聞きした情報を共有した)

木くずを使った馬糞堆肥がコマツナに与える影響の、他の馬糞との相違点の観察実験および食味調査

(写真撮り忘れました。すみません・・・)

【目的】
・木くずが主成分のホースケアガーデンの馬糞堆肥と、他の馬糞堆肥との有用性の比較
・ホースケアガーデンの馬糞堆肥と、麦わら・稲わらが主成分のもの、もみ殻が主成分のものとを比較
・有用性を確認することで、町の活性化を促進

【考察】
・収量については3種類の馬糞堆肥に明確な差は見られなかった
・木くずが主成分の馬糞堆肥で栽培したコマツナは、糖度は高かったが、評価が良くなかった。虫食いのため、身を守るために苦みやえぐみが出たものと考えられる
・もみ殻が主成分の馬糞堆肥で栽培したコマツナは、全体的に評価が高かった
・木くずが主成分の馬糞堆肥が虫への抵抗力が小さいかどうかは検証が必要

【感想・疑問】
・町を活性化するための馬糞堆肥の有用性を確認するために、なぜコマツナを題材としたのか?

馬糞堆肥と学校堆肥の比較から見える馬糞堆肥の活用可能性

【目的】
・馬糞堆肥の施用による土壌の性質への影響を調査する

【考察】
・炭素分が不足し、完熟していないという結果
・微生物の活性度が一番高い
・より長く発酵させることで、土壌生物や微生物の活性化が期待できる

【感想・疑問】
・土壌生物や微生物の活性化がどのようなことが期待できるか?

講評

U先生
・研究にワクワクしながら取り組んでいたか?
 → 1のみ挙手
・3年次になると卒業研究がある。ワクワクしているか?
 → 3分の1ほどが挙手
・研究とは、新しいことを知る、発見していく活動
・ワクワクすること自体が研究の目的ではないが、学術的にすばらしいという以外にも、研究には自分の人生にとって、地域にとって意義がある。
実験した人にしか言えないことがある。これを今後の展望として大事にしてほしい

S先生
・人から言われてやることは飽きてしまう、続かない
・卒業研究そのものは完結するが、その先が本番
・農業研究は1人ではなく、グループでの活動。「協働力」が大事
・グループの中で、一生懸命やっている人とそうでない人の濃淡
・「なぜ自分だけがやっているのか?」
 仲間に感謝する。たくさんやっているというのはたくさん学べるチャンス
・「あまりできなかった」
 ラッキー・・・ではない。できた人はそれだけたくさんのことをやって、学んでいる、スキルが身につく。そういう人から学んでほしい
・筑坂ではこの「差」を大切にしている
・お互いが学び合う、農業研究はコーチングの機会


・多様な視点から、馬糞堆肥の活用方法について研究いただくことができた
・ホースケアガーデンの鈴木さんからも感謝
・馬糞和紙、微生物の働きによる土壌への影響など、今回の研究をきっかけにつながった取り組みもあった
・とにかく感謝!

===

研究に取り組んでいただいた生徒さんたちには、3月19日(日)の本屋ときがわ町でも発表いただくことになっているので、来月も楽しみです!

ホースケアガーデンの鈴木さんやときがわ町長にもぜひお聞きいただきたいと考えています。

筑波大学附属坂戸高校の生徒の皆さま、先生方、ありがとうございました!

これまでの「馬ふん堆肥」研究の様子

これまでの取り組みの様子も公開しています。

合わせてご覧いただけますと嬉しいです^^

筑波大学附属坂戸高校「馬ふん和紙」研究チームの特別ゼミを行いました(2023年1月16日)
筑波大学附属坂戸高校で馬ふん堆肥を使った実験が始まりました(2022年11月16日)
筑波大学附属坂戸高校「馬ふん堆肥」活用研究 ~研究計画発表②~(2022年10月12日)
筑波大学附属坂戸高校「馬ふん堆肥」活用研究 ~研究計画発表①~(2022年10月7日)
筑波大学附属坂戸高校における「馬ふん堆肥」活用研究 ~ときがわ町フィールドワーク~(2022年9月13日)
筑波大学附属坂戸高校における「馬ふん堆肥」活用研究スタート!その2(2022年9月7日)
筑波大学附属坂戸高校における「馬ふん堆肥」活用研究スタート!(2022年9月2日)

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