ビジネスを継続するための2つのキーワード

今回ご紹介する本は、影山知明さんの『ゆっくり、いそげ』という本です。

著者の影山さんはもともと有名なコンサルタント会社であるマッキンゼー&カンパニーにいた方ですが、今は西国分寺でクルミドコーヒーというカフェを経営されています。

タイトルである「ゆっくり、いそげ」というのは、お金儲けとしての「ビジネス」と減速する生き方としての「スロー」のどちらかだけではなく、どっちもというニュアンスが込められているそうです。

このタイトルも興味深いのですが、今回はこちらの本から得たビジネスを継続するための2つのキーワードについてご紹介したいと思います。

2つのキーワードとは「特定多数」「不等価交換」です。

「特定多数」

まずは特定多数についてです。

著者は、経済・経営が成り立つには一定の規模が必要で、「不特定多数」でも「特定少数」でもなく、「特定多数」がいいということを述べています。

どういうことかというと、「不特定多数」のお客さまを相手にしようとすると、どうしても「多くの人に、普遍的に認められる価値」である必要があり、総花的なものになってしまいがちでお金とか金銭的価値に目が行ってしまうといいます。

また、ビジネス的にはいわゆる「誰でもいい」という状態になってしまうと、1人に対応できる時間が少なくなって結局は誰にとっても十分満足がいくものとはならなくなってしまうおそれがあります。

その結果、逆にクレームにつながってしまったり、安いものを求めるお客さまばかりになってしまうといったことが起こってしまって、あまりいい状態ではなくなってしまいます。

一方で「特定少数」はどうかといいますと、お客さまは少ないほどいいというわけでは必ずしもなく、極端にいうとお客さまが1人しかいなければ売上をすべてそのお客さまに依存することになってしまいます。
仮にそのお客さまがいなくなってしまうと経営が立ち行かなくなってしまうわけですね。

だから著者としては「特定多数」がいいということを述べているのです。

ただし、この「多数」がどのくらいの数を指すかについては業種や経営形態によっても変わってくるかと思います。

ここで重要なのはむやみやたらに多すぎても少なすぎてもダメで、自分の事業にとって最適な複数のお客さまを持つということだと私は解釈しました。

多すぎないお客さまを相手にする、お客さまのターゲットを絞ることで、一人一人のお客さまに十分な時間を使うことができますし、質の高い商品やサービスを提供することができます。

そして少なくとも複数のお客さまがいるので、仮に1人がダメになってしまってもほかのお客さまがいるので安心して取り組むことができます。

この「複数のお客さまがいる」という状態はビジネスを継続するためには大事なことです。
また、その状態を常に保つためにも、新規のお客さまのリストをつくっておくことが非常に重要なことになります。

「不等価交換」

次に集めたお客さまに何を提供するかというと、当然ながら商品やサービスということになります。

そしてその対価としてお金をいただくわけなんですけれども、その取引は価値とお金の交換ということができます。

そのときに相互に交換するものが「不等価」であることが大事ということを著者は述べています。

それが2つ目のキーワードである「不等価交換」です。

お金とモノ、あるいはモノとモノを交換しようとするとき、よく「等価交換」という言葉を聞くかと思います。

つまりあなたが持っているものと、私が持っている同じような価値のモノを交換しましょうねというのが等価交換です。

これに対して著者は、交換を等価にしてしまうのはダメだといいます。

なぜかというと、お客さまが得られた価値と支払った金額を同じにしてしまうと、その都度、関係が精算されてしまう。
そうすると関係が続かなかったり、新しいお客さまを増やすための口コミが起こらなくなってしまうということなんです。

交換が不等価であるからこそ、より多くを受け取ったと感じる側が、その負債感を解消するために次に贈る気持ちを抱くということなんですね。

つまり支払った金額よりも、受け取った商品やサービスの価値が高ければ、またこようと思ったり、誰かに紹介しようという気持ちになるんですね。

これが等価だとどうなるかというと、期待したものと支払うお金がイコールなので、失望はしないかもしれませんが、大きな満足は得られませんし、感動することはありません。
ましてや受け取った価値の方が少ないと感じたら、失望や不満に変わって、もう行かないとなってしまいますよね。

逆に受け取る価値の方が高いからこそ、感謝や感動を感じて、「また行こう」「誰かにお薦めしよう」という気持ちになるのです。

また、「先にGIVEする」ということがビジネスの成功の秘訣として言われることがあります。
これは別にボランティアでいいことをするということではなくて、お客さまからいただく金額よりも大きな価値を提供する(交換する)ということなのではないかと私は感じました。

このような不等価の交換、お客さまからいただくものよりも多くをお返しするという「GIVE」としての交換が、お客さまにリピーターになっていただいたり、新しいお客さまを紹介してもらうことにつながります。

仮にどんなに金額の小さなしごとだったとしても、次のしごとにつながる可能性のある大切なしごとですので、一つ一つのしごと、一人一人のお客さまを大切にするという気持ちはいつまでも持ち続けていきたいと思います。

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以下、参考として本書で気になった箇所をまとメモとして公開しています。
(「⇒」は個人的な意見、感想メモです。)

また、忙しくて本を読む暇がない、ここに書かれていることを何度も読み返したいという方に向けて、音声配信アプリstand.fmのチャンネル「地域でしごとをつくるラボ」でも本書『ゆっくり、いそげ』のご紹介をしています。

よろしければこちらも合わせて活用してみてください。

stand.fm「地域でしごとをつくるラボ」でのご紹介はこちら

まとメモ

まえがき

・経済=経世済民。政治や生活も含めて「社会をつくる」というニュアンス
  → いつからか「ビジネス」という言葉に置き換えられていった
  → 「経済」→「ビジネス」→「お金儲け」
  ⇔ 「スロー」

・「ビジネス」と「スロー」の間をいくもの=「ゆっくり、いそげ」。AかBかではなく、どっちも。

第1章 1キロ3000円のクルミの向こうにある暮らしを守る方法

・グローバル経済が、市場を媒介として、「不特定多数」の参加者間での価値の交換を可能とするシステムであるとするならば、それに対して、同じように市場を媒介としながらも、「特定多数」の参加者間での価値の交換を可能にするようなローカルシステム。
そうすることで、普遍的には必ずしも「価値のあるもの」と見なされないようなものでも、「私」と「あなた」といった特定的な関係においては価値として認められるということが起こるのでは

・経済・経営が成り立つには一定の規模が必要。・・・「特定少数」ではダメ。内輪な関係だけでは経済・経営は成り立たない。・・・だから「不特定多数」でもなく「特定少数」でもなく「特定多数」
  ⇒ 自分の経済・経営が成り立つための「多数」とはどのくらいか?
  ⇒ どんなビジネスにおいても当てはまるか? 
  ⇒ たとえば「高単価商品を少数のお客さまに提供する」場合はどうか
  ⇒ 自分ではなく、「地域」の経済・経営と置き換えたときにはどうか?
    こちらの方がイメージしやすいかもしれない
  ⇒ 少なくともお客さまは「1人」ではダメだということ。「複数」顧客が必要。「複数」から連想されるのは少なくとも4人以上か

・特定多数観での複雑な価値のキャッチボールを成り立たせるためには、多くの場合、身体性を伴う直接で密度の濃いコミュニケーションが必要

・「里の風情を守る」「安心・安全の食材」「日本の食糧自給率改善」といったメッセージも、それが直接の体験ではなく文字情報での伝達となってしまうと、受け取る側はどうしても左脳的な、理性的な情報処理となってしまう。それでより高い価値を受け入れられる人は、やはり世の中には少数派。
 → それよりもむしろ、「おいしいから」「気持ちいいから」「楽しいから」という入口から価値を感じてもらう方が、より多くの人に受け取ってもらえる交換になる

第2章 テイクから入るか、ギブから入るか。それが問題だ

・お客さんはお店に対して「負債ゼロ」の状態だと、次へと「贈る気持ち」は呼び起こされない

・交換を「等価」にしてしまってはダメ。「不等価」な交換だからこそ、より多くを受け取ったと感じる側(両方がそうと感じる場合もきっとある)が、その負債感を解消すべく次なる「贈る」行為への動機を抱く。・・・こうしたお客さんの側への「健全な負債感」の集積こそが、財務諸表にのることのない「看板」の価値になる
 ⇒ 負債感は「感謝」「恩」「感動」と置き換えられる

・限られた国土の中、同じ顔ぶれの中で長期間にわたって関係を構築していく度合いがより強いとすると、交換をいかに途絶えさせないかという方向での知恵こそが求められる
 ⇒ 地域経済循環の考え方につながる。地域での「買い支え」「売り支え」

第3章 お金だけでない大事なものを大事にする仕組み

・「売上・利益の成長」をみなで目指すという社会の方向付けは、「世の生産量を府明日」という目的にはかなったシステムデザインだった。・・・生産や取引の効率を極限まで高めようと思えば、より大きなものへと統合し、「規模の経済」を働かせようとするのが論理的な帰結だ

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