「なぜネギ1本が1万円で売れるのか?」のタイトルに一目惚れ

今回取り上げるのは、『なぜネギ1本が1万円で売れるのか?』です。

この本に出会ったのは、2022年1月の「本屋ときがわ町」でした。
この日開催された「読まないまま集まれる読書会」に参加するために読んだことがない本を探している中で、タイトルに惹かれて購入したものになります。

実はもう一冊似たようなタイトルで『1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』という本もあったのですが、身近にネギの生産農家さんがいうことやタイトルにより惹かれた方ということで、読書会用の本はこちらに決めました。
(もちろんレンコンの方も買いました笑)

この本、なんといってもタイトルがいいです!
表紙を見るだけで、いろんな疑問が湧いてきます。

  • なぜネギなのか?
  • なぜ1万円なのか?
  • なぜネギが1万円で売れるのか?
  • 誰が買うのか?
  • どうやって売っているのか?
  • ほかのものに応用できるのか?

そんな疑問を持ちながら読書に入ることができました。

著者は「ねぎびとカンパニー」の清水寅さん。
タイトルや肩書からするに農業関係であることは間違いありませんが、ビジネス全般に共通する学びがあるのではないかという期待が高まりました。

ビジネスのヒントが盛りだくさん

えてして内容も期待どおりで、たくさんの学びがありました。

ここではその中から「営業のポイント」「日本一になるには」「高単価で売る方法」という3つのエッセンスについて考えてみました。

①営業のポイント

一つ目は「営業のポイント」です。

営業というとどうしても「売り込む」とか「売る」というイメージが強くあります。

ですが、自分が売られる側の視点に立ってみると、こちらが望んでもいないのに無理やり売り込んでくる営業マンなんて邪魔者以外の何者でもないのは明らかです。
邪魔者どころか「敵」とすら思えるかもしれません。

そのせいもあって「営業=売る」というイメージもあって、これまで気が引けて熱心になれないというか苦手意識がありました。

ですが、最近は比企起業大学で学んできたことが自分の中に定着しつつあります。
特に今年は自分でお客さまを獲得する「営業」が一つの大きなテーマにしています。

そんな中で、この本に書かれていた営業のポイントはすんなりと私の頭に入っていました。

著者は「相手の事情を知ることが営業の肝である」と述べています。

どうしたら相手が社内で評価されるか、相手が得をするのかということですとか、どうなってしまうのが嫌で逆にそうならないようにするためにどういうことを望んでいるのかを知ることが重要ということです。

そういった相手の事情を知って相手が望む提案をすることができれば、相手もわざわざこちらのほうから出かけてきてくれる(営業に来てくれる)のはありがたいと思うはずだ、ということなんですね。

自分の都合で売り込みにいくのではなく、相手が欲しいと思っているものを持っていってあげるということが顧客目線での「営業」ということなのだと思います。

まず相手が「何に困っているのか」「何を望んでいるのか」を知ることが何よりも重要です。
そのためには積極的に「聴く」ことです。
その姿勢を大切に「営業」を行っていきたいと思います。

②日本一になるには

2点目は「日本一になるには」ということです。

最初の疑問になった「なぜネギなのか?」の答えとして、「3年で日本一になる」ための作物として選んだのがネギであるということが書かれていました。

細かい理由は本書をお読みいただくとして、ここで重要なことは最初から「日本一になる」ことを決めて、「どうやったら日本一になれるか」という視点から事業をつくり上げていったということです。

ときがわ町の渡邉町長もかつて、ご自身が経営されていた豆腐屋さんで「日本一になる」ためにいろんなことを試されたそうです。
「日本一になることは確かに難しいかもしれない。けれども日本一になると決めてやらなければ実現できない。」ということをおっしゃっています、

ただ個人がどんなに頑張って数とか時間をやみくもに増やしても、圧倒的な1位の強者にはなかなかかないません。
そのため「日本一になれる分野をつくり出す」「細分化する」ということがポイントだと思います。

日本一に限らずとも、まずは小さな地域での小さな1位をつくり、実績を積みながらステップアップするというのは比企起業大学でも学んできたことです。

「1位」にはお客さまや相談や情報が集まってくるという大きなメリットがありますので、常に意識しておきたい内容ですね。

③高単価で売る方法

3つ目は「高単価で売る方法」です。
これはまさに「1本1万円のネギを売る理由」の核心になる内容になります。

ねぎびとカンパニーでは年間200万本ほどのネギを出荷しているそうなんですが、200万本のネギのすべてを1本1万円で売るとわけではないというのが大きなポイントです。

1本1万円でも売れるということはそれだけ品質の高いネギだということがわかります。
おそらくそれだけのネギを200万本つくるのは不可能ですし、逆に200万本つくることができていたとすると1本1万円で売ることはできなかったのではないかと思います。

事実、ねぎびとカンパニーでは、1本1万円で売れるのはせいぜい10本くらいで、しかも必ずできるとは限らないといいます。
だからこそ希少性があり、そこに価値が生まれるのです。

ねぎびとカンパニーの販売戦略は次のようなものです。

特別に立派なネギをおいしい時期にだけ贈答用として限定販売をする。
そうするとネギマニアのような人たちが先を争って購入し、売り切れてしまう。
そのことがほかの200万本のブランド価値を高めることにつながる。

ということが書かれていました。

1本1万円で売れるようなネギをつくっている農家のネギなら、ほかのネギもすばらしいに違いないというイメージがお客さんの中にできるようになります。
それによってそれまで2本198円と比較されていたネギでも、1本1万円のネギとの比較になって2本298円でも安いように見えるというわけです。

つまり200万本の中の10本だけを高く売ることができれば、残りのネギも高く売ることが可能になるということなのです。

このような売り方は市場で競りにかけるというような従来のやり方ではたどり着かなかったことで、直接売ることのできるお客さまがいたからできたことだといえます。

お客さまが何を欲しがっているのかを常日頃からキャッチし、それに答えることのできる商品をつくることに取り組んだことの成果が、ここに凝縮されているのではないかと感じました。

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本書には農業に限らず、ビジネスにおいて大切な要素がたくさん詰まっていました。

読書会をきっかけにこのような本に出会えたことに感謝ですね!

音声アプリstand.fmチャンネル「地域でしごとをつくるラボ」

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まとメモ

以下、参考として本書で気になった箇所をまとメモとして公開しています。
(「⇒」は個人的な意見、感想メモです。)

プロローグ

・普通の産業では、原価をもとに価格が決められます。ところが、農業の世界では、原価に関係なく、競りで価格が決まってしまう。

・東京や大阪といった大都市では、値段の高いブランド野菜や有機無農薬野菜が売られています。しかし、ネギはどちらかというと日常使いの存在だと意識され、高級野菜のジャンルには入れてもらえていなかった。いいものであっても、安く売られるしかなかった。
 ⇒ 「日常的」なジャンルに入れられてしまうと高単価では買ってもらえない

第1章 一番になりたい症候群

・営業の肝は、相手の事情を知ること

・どんな作物なら、3年で日本一になれるのか? スーパーを何軒もはしごして研究しました
 ⇒ 「日本一になる」と決め、どうすれば「日本一になれるか」を考えた結果としてのネギ

・何でもいいから一番になる。一番になれなければ負けだと思えば、負けたときに悔し涙を流すでしょう。それぐらい本気になれるからこそ、目の前の仕事に集中して、人生は豊かになっていく

第2章 なぜ1本1万円だったのか

・ファミリーレストランでもファーストフード店でもスーパーでも、チェーンでは同じ品質の野菜を大量に欲しがっています。彼らがもっとも恐れているのは欠品であって、それを避けるためなら、多少は多く支払ってもいいと考えている。「高い値段で買うから、同じものをまとめて仕入れさせてよ」というニーズがあるわけです

・直取引の最大のメリットは、1年間、安定した売上が確保できること
  → 市場を通すと、ネギの値段は乱高下します。品薄の時期には倍になるし、品物があふれている時期は半分になる
  → 倍になるメリットはほとんど享受できないのに、半分になるデメリットが経営を揺さぶる。デメリットのほうが大きい
  → スーパーが毎日、定額で買ってくれることが、ものすごくありがたかった。それだけで経営が安定するし、事業計画もたてやすくなる
  ⇒ フローよりストック型の収益の方が安定化には役立つ

・限定品として販売するかぎり、売れ残りリスクはない。逆に、それが売り切れることで、うちのブランド価値は高まる
 → 200万本のなかの10本だけを高く売ることができれば、残りもおのずから高くなる。・・・アッパーの商品を作れば、全体が底上げされる。たった10本の超高級ネギが、残りの200万本の単価を引き上げた

・「営業に行って、どう交渉したらいいんですか?」と質問してきますが、交渉テクニックの問題ではないのです。そう考えている時点で負けている。取引相手が何を望んでいるかを、まずは調べないといけない

第4章 羊の世界を一歩も出るな

・交渉ごとの基本は、自分が困っていることを助けてもらうより、相手が困っていることを先に解決すrこと。どんなにお金に不自由していても、「何でも作りますから、助けると思って仕事をください」と泣きつくんじゃあ、足元を見られて買い叩かれる。だから、ちょっと生意気な態度で、スーパーの悩みを「解決してあげた」わけです

・考えられるすべての手をすでに大手メーカーが打っているという意味で、加工食品は成熟産業なのです。素人の入り込むすきがない。
 農業はこれまで国に守られ、競争のない業界でした。羊しかいない世界です。そんな羊たちが、トラやライオンがうじゃうじゃいるサバンナに出ていって、真っ向勝負を挑もうとしている。6次産業化とは、そういうことだと思います。

・では、羊は、どこで勝負すればいいのでしょうか? 決まっています。いまいる世界から外に出ないことです。なにしろ、ここには羊しかいません。自分がライオンまでいかなくても、キツネぐらいに強くなれば、簡単に勝つことができる
  → 自分たちの強みは何か? 作物を育てることです。それなら、その延長線上に突破口を見つければいい

・僕はプロ農家でなく、一般消費者をメインターゲットにすえた。家庭菜園に植えるために、ホームセンターで苗を探す層です。彼らにとって農業はビジネスではなく、趣味です。だから、「いかに安いか」より、「いかに確実に育つか」のほうに関心を向ける。どんなに安かろうが、全滅してしまっては、趣味としてやる意味がゼロだからです。
 ターゲットが違うと、当然優先する順番、売り方もかえていく必要があります

・苗の場合、作り手の意識と、一般消費者のニーズにズレがあった。そうした市場のズレを見つけることが、ビジネスの肝だと思っています

・ダイソンみたいな会社にしたいのです。掃除機といったらダイソンです。総合家電メーカーみたいにあらゆる家電を作っているわけではないのに、特定の分野では圧倒的に強い。・・・ネギと聞いたら、誰もが「それなら、ねぎびとカンパニーだよねえ」と連想する会社になりたい。ネギはもちろん、苗でも肥料でも微生物資材でも管理機でも、「まずはねぎびとカンパニーに当たったみようか」という存在に
 ⇒ 特定分野で圧倒的に強くなれば、相談が寄せられる。情報が集まってくる

第5章 部活のような会社にしたい

・楽しく働くことほど、生産性を上げる方法はない

・苗の定植にせよ、雑草取りにせよ、ネギ掘りにせよ、大きな畑で作業するより、小さな畑で作業するほうが、時間当たりの作業量は増えます。そのつど達成感が得られるほうが、やる気が出るのです。
 だからといって、仕事が楽すぎてもダメです。そこそこ負担が大きい方が、人間はやりがいを感じる。そこそこ忙しいけれども、ゴールは見えている。これこそ楽しく働くための、重要な条件です

・「従業員を本気にさせる」ことこそ、社長の仕事

・会社経営の本質は1個しかないと思っています。従業員たちが「明日、会社に行きたい!」と思えるかどうか

エピローグ

・失敗。それは成功を生むための技術です