2022年11月29日(火)15:45~17:00、県立鳩山高校で開催された学校運営協議会にて、「学校と地域の連携」をテーマとした研修を実施しました。

高校の先生方から、「地域との連携を進めたいけど、具体的な一歩が踏み出せない」とのご相談があったことがきっかけでした。

学校運営協議会の委員さん8名、生徒会のメンバーになっている生徒さん8名、先生方11名の参加をいただきました。(お忙しいところありがとうございます!)

一方的に教えるのは参加者にとってつまらないですし、せっかくいろんな所属の参加者が集まっているので、グループワークを取り入れつつ双方向型でテーマについて一緒に考える時間にするというスタンスで臨みました。

実施記録として研修会の様子を差しさわりない範囲で公開します。

0 オープニング

まず、自己紹介とともに、この日の2つの目的を共有しました。

  • なんのために学校と地域の連携に取り組むのかを明らかにする
  • “第一歩”を踏み出す

そして今回のキーワードを「自分事」に設定しました。

その意図としては、自分自身の中に連携を動機づけるという狙いがあります。

理由は、これまで同じような連携のテーマでワークショップを行ったこともあるそうですが、ブレストやKJ法を使ってアイデア出しは盛り上がっても、なかなか実行に踏み出す動きが見られなかったというお話を伺ったからです。

「学校」と「地域」の連携という主体がぼんやりしている状態で議論を進めたために、「誰がやるのか」があいまいになってしまったのではないかと考えました。

そこで今回は、まず「連携」を自分の中に落とし込む時間として位置づけることにしました。

本論に入る前に、まずは個人で連携に対する「期待」と「不安」を書き出していただくことにしました。

その後、座ってばかりいると退屈ですので、立ち上がって3~4人で意見を共有していただきました。
いきなり話が弾んでいるグループもあっていい雰囲気です。
高校生の皆さんも積極的に発言している様子が見られました。

グループでの意見交換後は、全体で出た意見を共有しました。

参加者からの意見

●期待
・鳩山町は高齢化が進んでいるので、若い人の視点を取り入れることができる
・町が活性化する
・学校と地域がWIN-WINの関係になる

●不安
・新しいことをはじめるときは、やはり労力がかかる
・連携で何ができるかわからない
・やっているうちに、なんのためにやっているのかわからなくなる

1 「連携」とは?

次に、「学校と地域の連携」ということについて、

・「誰」と「誰」が?
・どういう状態になることか?

について一緒に考えていきます。

ポイントとしては、連携を「組織」対「組織」ではなく、「人」の問題として捉え直すこと。
それによって、連携を自分事として捉え、当事者意識を持つということを大前提に考えます。

逆に他人事、当事者意識がないと、「誰かがやってくれるだろう」という姿勢になって、具体的なアクションに結びつきづらいと考えたからです。
連携を組織対組織のイメージのまま捉えていると、他人事になりやすいように感じます。

まず一人一人の中で、「誰と誰がどういう状態になると連携しているといえるのか」ということを言語化していただくことにしました。

参加者からの意見

・学校とは、職員も生徒も全員、地域は住民すべてが、自分のこととして行動すること
・行動を起こしたいけど起こせないでいる人が、行動を起こせる人の手を借りて行動できるようになること

2 なぜ連携が進まないのか

こうした前提を踏まえて、次に「なぜ連携が進まないのか」その要因について考えてみることにします。

私が考える連携が進まない/続かない3大要因は以下のとおりです。

  • 「やらされ感」 他人事、他責 
  • 「やらないといけない」 義務感
  • 「こうあるべき」 完成/完璧主義

他人事や他責は、「自分がやりたいわけではない」「誰かがやるだろう」「誰かに言われたから」という感情につながり、主体的に動くことができなくなります。

義務感も同様で、自分がやりたいわけではないので、なんのためにやっているかわからなくなったり、意欲的になれなかったりします。

完成/完璧主義は、失敗が怖くなり、完璧じゃないと動けなくなってしまうので、結局一歩が踏み出せないことになります。

このような要因を踏まえて、次に連携を進める中で起こりそうな問題と対策について、みんなで考えることにしました。

ポイントとしては、そういう問題が起こった時に、「私」ならどうするかを考えること。
誰かが解決するのを待つのではなく、自分はこうするということを考えていただきました。

参加者からの意見

●起こりそうな問題
・自分と相手、その他の関係者のやりたいことが食い違う
・新しい業務が負担になり、忙しくなってしまう
・人事異動(特に管理職)

●その対策
・共通するやりたいことを見つける
・やらないことを先に決める
・属人的な仕事にしない。管理職の理解を得る

3 連携を進める/続けるためのポイント

ではそのような問題を乗り越えて、連携を進める/続けるにはどうしたらいいのか。
私から3つのポイントをお話ししました。

  • 主語を「私」にする
  • 共通の「やりたい」を見つける
  • 完璧主義ではなく、修正主義

まず主語を「私」にすることで、徹底的に連携を自分事として落とし込んでいきます。

次に、相手との接し方として、一方的にお願いするのではなく、「一緒にやろう」という言葉を使うこと。
そうすることで相手の印象も変わります。

そして自分のやりたいことだけでなく、相手も困っていることややりたいことに目を向けられるようになると、自分事が「自分たちごと」の連帯感が生まれます。

自分のやりたいことと相手のやりたいことが100%重なるということは難しいかもしれませんが、なるべくそれに近づけていくことが重要かと思います。
また当たり前ですが、お互いがやりたくないことはやる意味はないので、やらないこととします。

最後の修正主義に関しては、そもそも連携で何が正しいという「正解」があるわけでもないので、自分にも相手にも完璧を求める必要がないということです。

正解がないがないということは満点もないということですので、100点が満点ではなく、1000点、10000点とどんどん良い点を目指していくことができます。
上限値を決めなくていいということです。
そのため、減点主義ではなく、加点主義が有効といえます。

4 学校と地域の連携を進めるために

ここまできたところで、次に具体的なアクションに向けて動機づけを行っていくことにします。

まず掲げた問いは、

「あなた」は何のために学校/地域との連携に取り組むのか?

ということです。

学校が、地域が、ではなく「あなた」となっているのがポイントです。
「私が、学校と地域の連携に取り組む理由はこうである」といえる状態を目指そうということです。

今後変わっていくこともあるかもしれませんが、現時点での自分の中での動機づけをしていただきました。

その上で、次に掲げた2つの問いは、

  • あなたがやりたいことは何ですか?
  • そのために最初にやることは何ですか?(ベイビーステップ)

こちらもまず個人で書き出していただいた後、グループで共有していただくことにしました。

終わりの時間が迫っていましたので十分な時間はありませんでしたが、皆さん議論に夢中になっているようでした。

あるグループからは、「頑張ろうね!」という声も上がっていました。

参加者からの意見

●やりたいこと
・花を植える。鳩山町を花でいっぱいの町にしたい
・地域の仕事見学・体験
・地域合同の防災訓練。炊き出しを行って、みんなで食べる
・家が農業をやっているので、地域で養蜂できないか
・株・投資の勉強
・文化祭で地元のお店に出店してもらう

連携を進める/続けるための4つ目のポイント

ここで私から連携を進める/続けるための4つ目のポイントを追加させていただきました。

これまで自分事で考えること、行動することの大切さをお伝えしてきましたが、それだけでは難しいことがあると感じたからです。

先月末に高校生の皆さんと意見交換させていただいたときに、こんな言葉がありました。

「友だちと一緒なら参加しやすい」

それが印象に残っていましたので、最後に4つ目のポイントとして、

「仲間をつくる」

ということをお伝えしました。

やはり一人だと知らない人と話したり、知らないところに行くというのは不安が大きいかと思います。
大人でもそうです。

そういうときに仲間がいると一歩が踏み出せるということがあるのではないかと思いました。

その際に、自分勝手でも相手に依存するのではなく、自分も大切にしつつ相手も尊重するという姿勢が大事だと思います。
それが仲間との信頼関係につながりますし、同じことが学校と地域の連携においてもいえるかと思います。

限られた時間の中で、参加いただいた皆さまがいろんな話をし合う場面が多く持てたのは収穫だと思います。
特に高校生の皆さまには、地域に応援してくれる大人がいるということを感じていただけたのではないかと思います。

研修終了後にはさっそく町役場のHさんが高校生のもとに駆け寄って商談(?)をはじめていました。
具体的な動きにつながりそうでワクワクします!

今日が連携の第一歩と位置付けて、2歩目、3歩目と進んでいけるよう、私も引き続き皆さまと一緒に取り組んでいきたいと思います。

鳩山高校の皆さま、学校運営協議会の皆さま、ありがとうございました!