面白法人カヤック主催「地域通貨サミット」

先日参加した「月刊お金のはなし」8月号以降、私の中で地域通貨への関心に火がついたようです。

今回は神奈川県鎌倉市に本社がある面白法人カヤックさんが主催する「地域通貨サミット」(オンライン)。

以前から興味があった分野なので集中的に学ぶ機会が得られたのはラッキーでした。

イベントでの気づき、おもしろいと感じたことをレポートとしてまとメモしました。

「地域通貨サミット」の構成

プログラムは以下の3部構成でした

第1部 基調講演「自治体DXと地域通貨の可能性」
    登壇者:宮田裕章 氏(慶応義塾大学教授)

第2部 講演「コミュニティ経済と地域通貨」
    登壇者:栗田健一 氏(千葉経済大学短期大学部 准教授)

第3部 パネルディスカッション「地域通貨はこんなふうに使われている」
    パネラー:
     影山知明 氏(クルミドーヒー/胡桃堂喫茶店 店主)
     藤井靖史 氏(西会津町最高デジタル責任者 ほか)
     古里圭史 氏(公認会計士・税理士 飛騨信用組合 非常勤監事)
     柳澤大輔 氏(面白法人カヤック 代表取締役CEO)

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以下、まとメモです。

「⇒」は個人的な意見、感想を示します。

第1部  第1部 基調講演「自治体DXと地域通貨の可能性」

非常におもしろかった第1部なのですが、残念ながら車での移動中にぶつかってしまったため、耳だけ参加でした。

頼りない記憶だけを頼りにまとメモしたので、内容もやや頼りない感じです💦

資本主義とデジタルがもたらしたもの
・資本主義はすべて排他的に独占、消費する
・デジタルの一番の特徴は「共有できること」
・一つの主体がデータを有していたものが共有されると、どういうものが幸せにつながるのかということがわかってくる。それが可視化できる。
・今までもなんとなくこうじゃないかという価値観があっても、広がらなかったのは可視化できなかったから

⇒ 可視化されることで、不確かだったものに「根拠」が加わり、多元的な尺度や価値観が社会に提示される可能性がある

中国のデジタル人民元と信用スコア
・いろんなデータを統合してその人の信用性がスコア化される
・納税データを使うことで、きちんと納税する人であれば信用度が高く、お金を貸しても返ってくるのではないかとの仮説
・これまでの「信用」の尺度は資産(=お金)を持っているかどうか。持っていない人は借りられない
 → これまでお金を借りられなかった人も、お金を借りられる、あるいはもっと多くのお金が借りられるようになる

より早い段階からの貧困救済も可能に
・生活保護はどうにもならなくなった状態を救済する制度としては良い制度
・ただ、貯金がない状態で初めて受けられるようになるため、そこから浮上するというのはなかなか困難になるおそれ
・デジタルを活用することで、そうなる前に救える仕組みを考えることも可能
・お金がなくても信用度が高ければお金を貸してもらえる
・信用度が高ければお金を持っていなくても大学に入れる、逆にお金を持っていても信用度が低いと大学に入れない仕組みをつくることも可能
・信用度判定にお金以外の基準が生まれる
 → 多元的なものさし
・お金に代わるものがあっても一つのものさしではダメで、多元的だからこそ意味がある
 → 多様性があることが大事
・「最大多数の最大幸福」から「最大多様の最大幸福」を追求する時代になる

地域通貨の意味
・地域ごとの大事にしたいことを、「地域通貨」で可視化(価値化)する

地域通貨の経済効果
・単純にお金が使われることよりも、行動が引き起こされることが経済効果を生むという考え

デジタルマネーの可能性
・データをとることができる
・どこで誰が何お金を使っているか
・共有できる

失敗した地域通貨の共通点
・法定通貨によりすぎて、法定通貨にからめとられてしまっている
 → 地域通貨の価値を失う最も大きな原因
・ポイントカード的

●日本が優位性を示すには
・シリコンバレーや中国と同じことをしても何周遅れ
 → 日本独自の仕組みが必要
・1者(社)の利害関係からくるものではなくて、世界が「いいね!」と乗ってきやすいものをいかにつくるか
・地域通貨がその地域を豊かにするために使われることが大事
・地域独自の使い方が成立していることが大事
 ⇒ その地域で大事にしたいことは何か
   それを表現する手段であること
   お金+α(お金以外の価値)
・そもそも何のために使い始めたか
・そのために地域通貨をデザインする
・地域通貨の原点は多様な豊かさ、その地域ごとの豊かさにある

⇒ 地域通貨は、お金ではない価値を可視化するからこそ意味がある
  海士町の地域通貨ハーンも、お金ではない使われ方をどうつくるかがポイントだと思う

第2部  第2部 講演「コミュニティ経済と地域通貨」

地域通貨の広がり
・日本では2000年ころから広がりはじめ、最も多いときで300くらいの地域通貨があった
・表に出てこないものを合わせると1000くらいあったと推測される
・きっかけは『エンデの遺言』、シルヴィオ・ゲゼルの貨幣思想が紹介されたことによる

地域通貨の歴史
・価値が変わらないお金は、持ち続けてしまうと経済が停滞する
 → 減価するお金という発想。「腐るお金」
・持っていることが得にならないお金
・特定の分野から多分野での活用の広がり

いろんな日本の地域通貨

①むチュー(東京都武蔵野市)
・地域ボランティアと地域種店を結びつける
・ボランティアという行為が地域通貨という新しいもので評価できるようになった
・商店街に行ったことがないボランティアの人が、商店街を訪れるきっかけになった

②オール(埼玉県戸田市)
・子どもを対象にした地域通貨
・商店街が子どもを集め、チームをつくり、地域通貨を使って商店街でモノを仕入れ、販売を実体験する
・地域経済を学ぶことを目的とした学習ツールとしての地域通貨
・ボランティアなどで稼いだ地域通貨で商品を買う、サービスを体験する
・地域を舞台として、地域で稼ぎ、地域で使うということを学ぶという教育要素を加えた

③モリ券(高知県)
・森林ボランティアの報酬として利用
・森林保全×地域経済
・モリ券が使われた商店は換金できるが、モリ券を受け取ったボランティアが換金することはできない
・お金とは別

④よろづ(神奈川県相模原t市)
・通帳で出入を管理(実物はない)
・何かしてもらいたい人に対して、できる人が価値提供
・「ー(マイナス)」ばかりで借金しても悪くない、負い目がない
 → 他の人に多くの「+(プラス)」を生み出している
 → 多くの良さを引き出している
・いつか返そうという意識も生まれる

⑤電子地域通貨アクアコイン(千葉県木更津市)
・スマホで使える
・データがとれる
・事務局の負担が少ない(数えなくていい)

●持続可能な地域通貨の条件として考えられるものは?
・事務局に過度な負担がかかると続かないケースが多い
・デジタルは一つの手段
 → アプリ化すれば広告も乗せられる

●地域通貨について学べる本

『コミュニティ経済と地域通貨』
『地域通貨』
『イラストで学べる地域通貨のきほん』

第3部 パネルディスカッション「地域通貨はこんなふうに使われている」

取り上げる地域通貨
・ぶんじ(国分寺)
・白虎(会津大学内デジタル通貨)
・さるぼぼコイン(電子地域通貨)
・まちのコイン(カヤック)
・一つの特徴として、何万人もの人が使っているという大きな地域通貨はない

影山氏 ぶんじ(国分寺地域通貨)
・個人間での使用が多い
・清掃活動、ぶんじワーク(農業、イベントの手伝い)に参加するともらえる
 → まちのため、誰かのために汗をかくともらえる
・ぶんじガチャ 100円で100ぶんじ
 → 寄付するという行為(2年で15万円集まった)
・紙幣の裏面のふきだしにメッセージを書いて渡すのが約束事
 → 感謝の気持ち
 → 使用履歴が裏面に残る
・アナログの良さ

●藤井氏 白虎(会津大学内デジタル通貨)
・地域のデジタル化の一つのアプローチとしての地域通貨
・温度差→対流→構造化という順番で組み立てる
・復興予算がどう使われているかを可視化するという研究から立ち上がった
 → 地域にほとんどお金が残らない
・一番おもしろかったのはイベント内通貨
 誰が一番がんばっているかがデータで可視化できる
・カンボジアの世界初のデジタル通貨につながった
・小さな価値交換ができる仕組みを作りたい
・白虎は大学内で使える地域通貨
 友だちを車に乗せたときにも使える(白タク法に抵触しない)

●古里氏 さるぼぼコイン
・飛騨信用組合=地域内の金融機関組合
・組合の中で回す地域振興券を電子化することで、もっと広がりやすくし、域内の経済循環を生むことが目的
・デジタルだけど、アナログの良さを出したい
 → 決裁したお店にメッセージを送れる機能を付けた
 → お客さんと店側でまったくコミュニケーションがなかったものが、メッセージをきっかけにコミュニケーションが生まれた
 ⇒ おもしろい!
   コミュニケーションを生むツールとしての地域通貨の可能性
・1回使われて換金されてしまうと効果が薄い
 → BtoBの仕組み化が課題

●柳澤氏 まちのコイン
・お金で買えない価値がまちに増える
・換金できない
・地域ごとにいろんな使い方ができる

●地域通貨の魅力、可能性は何か?
・データがとれる、経済が見える、ストックではなく流れが見える(デジタルの場合)
 → 流量が見えればどこに経済政策を打てばいいかが分かる
・地域のデータを地域でマネタイズできるといい
・割引券になってしまうとマイナスになってしまう
 → お店の人にとっては良いことではない
・使う側がテイクの動機だとそうなる
 → GIVEの動機、GIVEに対する感謝として使えるように
・受け手側が送り手側を育てる
・「使って良かった」と思えること
 → お金と違う道をたどるならマスト
地域通貨は法定通貨のような無色透明なドライなものではない
 ⇒ 色があっていい
   良い「えこひいき」=地域にとって大切にしたいお金以外の判断基準
になる
・コミュニケーションの量と質が変わるのではないか
 → 狭いコミュニティに流通させるので濃度が高い
 → コミュニティの隅から隅まで行き渡るコミュニケーションを創り出せる
・最初は課題解決。キャッシュレスの手数料が高かったのでそれをなんとかできないかという発想から生まれた
 → 小さな価値交換でも使えるようになる

●苦労していることは?
・経済圏が広がっていくと偽造防止が必要
・店舗が広がらないと利用者が広がらない、利用者が広がらないと店舗が広がらない
・逆に食堂だけで使えるものであれば使う(学生は食堂で使えればいい)
・一つ一つが持続可能な状態にして、つなげてスケールすればいい
・金融機関が関わらないと換金できない
・キャッシュレスで簡単にできることで失われてしまうモノ
 → 商品を受け取っている、そこで働いている人がいる、そういうことを想像する力
・大手は入りづらい構造がある
・デジタルだけどアナログを目指している
・地域通貨の運営の難しさはデジタルでも同じ
・運用は楽(数えなくていい、データとれる)
 → 銀行業法、資金決済法など、法律の中で仕組みを動かすと、いろんな法律との兼ね合いでやらなければならない事務仕事がある
・セキュリティの問題

●こんなことができたらいいな
・まずみんなが使えるインフラにしてから、地域通貨の本質のコミュニケーションにアプローチしていく考え
・使ったら、楽しいとかワクワクするようにしていきたい
 → 使った額の●%が基金にプールされて、何かやる時にそれを使えるとか
 → 地域通貨を使うことでみんなの夢とかアイデアが形になっていくような文化
・価値交換のデザインの可能性を広げたい
・人同士が会った瞬間に価値が生まれる、価値交換するという仕組み
 → イベント内通貨は人に声をかければかけるほど、イベント内の価値の総量が増えていく
 → 1人1回しか発行できないので、コミュニケーションがたくさんとられて盛り上がった
 → アニメイベントだった。お金を集めると投票できる仕組み。集める動機があった
・つかう量ともらう量のバランス
・「通貨の民主化」がキーワード
 → 日本の造幣局しか発行できないのがイレギュラー
・誰かが何かをしてくれたとき、手元のナプキンに「ありがとう」の気持ちをその場で100ぶんじとして発行するという発想
・エゴに基づいた経済システムから、贈与・感謝に基づく経済システムへの転換
・新しい銀行つくりたい
・既存の制度とうまくつながりながら新しい仕組みを目指す

効果測定は?
・法定通貨とは違う経済圏をつくっている
・お金で測れない価値経済圏
・お店同士のつながり
・回転数
・流量。ストックはあまりみない
・地域通貨はきっかけ
 → まちに関わる時、特定のテーマもってないと関わりづらい
 → 地域通貨は共通 これをもっていれば
・お金を勝手にデザインしていいというのが一番おもしろい!
・どんなお金があったらワクワクするか
・ただキャッシュレスのツールだとほかのものでいい
 → 楽しく、ワクワク
・「おらが町のお金」
 → まちを自分たちが誇りをもって生活できる場所にすることにつながる

・地域で楽しくやっている、その集合体が日本である

地域通貨サミット を通じて考えたこと(アイデアなど)

●農業での活用可能性
・援農ボランティアに対して、一部を野菜、一部を地域通貨として対価を支払う
・次に来る楽しみ
・地域の農家で野菜を買うときだけ使える
・一方で使われないと「腐らないお金」になってしまうおそれがあるので、どう設計するか

●企業会計との兼ね合い
・お金でない価値を企業会計にどう位置づけるかという疑問
・お金とは別の、地域通貨による地域における企業の価値形成という可能性

●副業に活かせるか
・公務員など金銭的な副業が禁止されている職業でも、地域通貨という手段によって地域活動などで生み出している価値を可視化することができるのではないか

●基金的な使い方
・使えば使うほど地域に価値が高まっていくような仕組みがつくれないか
・地域のプレーヤーが地域通貨をシェアし合える仕組み(ローカルファンディング)
・1者(社)に蓄えられて循環しないのは問題だが、地域内で循環しつつも、地域全体では価値が蓄積されるのは望ましいことだと思われる