「ときがわ本」を書いています!

突然ですが、「ときがわ町のまちおこし」に関する本を書いています。
タイトルは未定ですが、通称「ときがわ本」です(私の中だけの通称ですが・・・)

埼玉県東松山市にある、まつやま書房という地域の出版社さんから、比企起業塾メンター講師であるときがわカンパニー代表の関根さんのところに依頼があったものですが、光栄なことに、関根さんと共著として出版させていただくことになりました。
なんとか来年2月末の比企起業塾4期の活動報告会に間に合うように、執筆にいそしむ日々でございます。

おかげで、3週間ぶりくらいのブログ更新となってしまいました・・・。
タイムスケジュール管理は、私の一番の課題だなあと痛感しております。

で、ときがわ本なのですが、「人」と「仕事」を2大テーマに設定しています。
「まちおこし」というお題目をいただいたのですが、関根さんと「まちおこしって何だろうね?」と考えたとき、結局は、「人だよね」という結論に達したからです。
そして、ときがわ町の場合、「人」というとやはり起業家、つまりは「仕事をつくる人」の存在が大きいのではないかと考えました。

事実、ときがわ本を書き進めながら、「地域で仕事をつくること」の意味がしだいに強く浮き上がってきています。

そこで、「仕事」に焦点を当てて、今回取り上げる『ローカル志向の時代』を掘り下げてみることにします。

実は、本書は、本の執筆が本格化する以前に読んだ本で、まとメモ部分だけ事前に書き終えていたのですが、「ときがわ本」で私が書こうとしていたことにも通ずる部分が多いことに、今びっくりしています。
大いに参考にしつつ、丸パクリにならないように気を付けよう!笑

ミニ起業家にも共通する「新しい自営」という働き方

さて、まず本書では、「新たな自営」という言葉が登場します。
「新たな自営」とは、新たな働き方のひとつとしての身の丈の起業のこと。
「スモールビジネス」や「小商い」、「ナリワイ」といった言葉がそれにあたるとされ、厳密に規模や業態を限定しないこととしています。

まず、私はこの言葉に注目しました。
なぜなら、ときがわ町でときがわカンパニーが主催する比企起業塾の目的は、「ミニ起業家」を育成することであり、この「新たな自営」と非常によく似た概念だと思ったからです。

ミニ起業家とは、年収300万円から1000万円未満で、複数の顧客を持ちながら、地域で自分や自分の家族を養っていけるだけの仕事を創り出すことのできる起業家のことです。

一方で、「新たな自営」について、本書では次のように述べられています。

自営やフリーランスで、これまでにない仕事の領域を自分でつくりながら、人と人をつなぎ、地域コミュニティが持つ可能性を新たに拓きつつある人が目立ちます。地域が持つポテンシャルは政治や政策の取り組みから生まれるものではなく、目的を持った交流の場から花開いていく

小さな主体である自営業や小商いは経済的にも社会的にも価値を持つ存在です。むしろ、経済的側面だけでなく、コミュニティの場として機能していることや、フリーランスとしての新たな働き方と関係していることが現代的な特徴といえます

つまり、ミニ起業家同様に、地域との関わりが強く意識されており、経済的価値のみならず、社会的価値を有しているということです。
「新しい自営」の持つ「社会的価値」というのは非常に興味深い指摘です。

ビジネスである以上、何らかの課題解決に資する価値を提供していることには変わりませんので、どんなビジネスであっても当然、社会的なインパクトは有しているということができます。
しかし、「新たな自営」の「社会的価値」として想定されている「社会」の範囲というのは、もっと狭いのではないかと感じました。
具体的にいうと、「地域」という社会です。

田所雅之さんは、『起業の科学』の中で、起業にはスタートアップとローカルビジネスの2種類があると述べていますが、ミニ起業家や新たな自営とは、まさにローカルビジネスに該当するものでしょう。
グローバル規模で見たらインパクトは非常に限られた範囲にとどまるけれども、特定の地域社会に限って見れば、地域の経済や社会のシステムの歯車としてしっかり根付いている。
そんな状況が思い浮かびます。

そうした小さいけれども地域にとって意味のある仕事がある、そうした仕事を創り出している人が地域にいるということが、そのまま地域の力、元気につながるのではないか。
そして、元気な地域には人が集まってくる。
そんな好循環が生まれるのではないかと思います。

もともと、産業とはわたしたちの暮らしを支える存在です。その総体は国力までも左右します。地域に産業があることにより、多様な人びとが引きつけられ、多様な人びとがまじり合うことによって、まちの姿が演出されます。そして豊かな生活空間を創出していくことにもつながっていきます

本書のこの一節も、地域における仕事の意味をよく表していると感じました。

この学びは「ときがわ本」でもぜひ活かしていきたいと思います!

(↓ここからは本書のまとメモです)

本書のまとメモ

・この世代はソーシャルネットワークを介して、ゆるやかなつながりを保とうとする傾向があります。自分の活動を孤独に遂行するというよりは、誰かに知ってもらいたい、共有したい、何らかのかたちで評価してもらいたいという気持ちがあります。・・・大なり小なり自らの活動の意義を確かめたいという動機、社会システムのなかで自分の立ち位置を明確にしたいという社会的欲求に支えられているようにみえます。

・人口減少時代、より重要になるのは、目的志向型の計画ではなく、個人の内面の変化を柔軟に捉え、それと社会の方向性をすり合わせられるかどうか

場所のフラット化

・連鎖的に人が呼び寄せられ、何かが起こっていくさまを「生態系」のようだといいます。この生態系は、ゆるやかにつながり、一人ひとりの志向や行動の模索の結果として立ち現れています

・ネット社会によって場所がフラット化すればするほど、逆に住みたい地域、住みたいまちは、都市であれ地方であれ、人びとに選択され、今後その傾向はより深まりをみせていく

・地域の課題を解決するために、仕事を新たにつくっていく。それは、ソーシャルビジネス、社会的企業につうじる動きのようです。・・・こうした動きは、逆にいえば、条件不利とされてきた地域がソーシャル志向の高い若い世代の受け皿になってきていることを表しています
 → 経済成長を知らない背だがこれまでの規範にとらわれない生き方や働き方を志向し、地域課題の解決に寄与する仕事がキャリアのひとつとして選択されるようになってきた

・「社会のための働く」「社会に貢献する」と考えたとき、イメージする「社会」は、自分と直接に関わりがない地域や漠然とした場ではなく、具体的に人の顔が見える範囲がイメージされている
 → 若者が考える「社会」のイメージは主体的で、会社や家族だけでなく、身近な地域社会も視野に入っている

・「人が人を呼んでいる。そこに何があるかではなく、そこにどんな人が集まるか、それが面白い」(NPO法人グリーンバレー 大南信也氏)

・がちがちに枠組みやビジョンを行政が主導して構築するスタイル、目的志向型の計画やPDCAにとらわれるのは成長主義の価値観
 → 柔軟なしなやかさ、「あそび」を追求していくことが寛容

「新たな自営」とローカル性の深まり

・社会学では、人の帰属は、目的志向型の組織「ゲゼルシャフト」と、地縁的組織「ゲマインシャフト」に分けられる

・現在、新たなかたちで地縁型組織が復活している面がありますが、その特徴は従来型の地縁・血縁のつながりではなく、地域をベースに目的志向型の組織が重なり合っている点にある

・「新たな自営」=新たな働き方のひとつとしての身の丈の起業。「スモールビジネス」「小商い」「ナリワイ」。ここでは厳密に規模や業態を限定しない

・グローバル化の枠組みで生産・流通する商品・サービスは匿名性を帯びていますが、対人サービスや暮らしを支える産業は顔が見える消費行動がベースになっています。
 → 現代の消費は「匿名性の消費」と「顔が見える消費」が複雑に組み合わさっている

・日本は近代化、経済成長の過程で小規模企業層・自営業層が減少するとされたにもかかわらず、現在でも経済の根底を支えているのは事実です。むしろ、人口減少、超高齢化において、顔が見える存在である自営業や小規模企業は、社会的な役割を増している

・自営やフリーランスで、これまでにない仕事の領域を自分でつくりながら、人と人をつなぎ、地域コミュニティが持つ可能性を新たに拓きつつある人が目立ちます。地域が持つポテンシャルは政治や政策の取り組みから生まれるものではなく、目的を持った交流の場から花開いていく

・産業構想の高度化とともに職業が多様化するなかで、百姓のような働き方は、必ずしも農業だけに限らなくなってきています。現在では、半分は仕事、半分は地域での活動や趣味など、柔軟なスタイルで働き方を選択する人が増えています

・現代的な百姓ライフを送るためには、正しいやり方で自己利益を追求する一方で、地域や同業種のなかにゆるやかに帰属の意識を持つことが大事になる
 → 経済原理は競争だけでなく、協調によっても成り立っている
 → 同じような業種の仲間が近くにいるというのは案外、大事

・資本主義社会における人間の行動原理
 ①「市場」をベースとした交換の原理
 ②「政府」による公共サービス
 ③コミュニティを支える共助の原理=「互酬性」

・資本主義における人間の関係性は変わらず、小さな主体である自営業や小商いは経済的にも社会的にも価値を持つ存在です。むしろ、経済的側面だけでなく、コミュニティの場として機能していることや、フリーランスとしての新たな働き方と関係していることが現代的な特徴といえます

進化する都市のものづくり

・需要が先細るなかで連携を深め、観光事業や人材育成など、社会的な事業を共同で進めるケースが増えてきました。それが結果として、新たな需要の掘り起こしや情報発信につながり、結果的には存続の可能性を高めていくことになっています。同業種だからこそ、置かれている環境が同じであり、問題を共有しながら解決への道筋をつけている

変わる地場産業とまちづくり

・自然や風土に根づき、職人の手仕事が不可欠な産業は地域に残り、世代を超えて継承されてきました。需要が飽和した現在、多様化した豊かなライフスタイルのなかでは、従来の地場産品が新たな輝きを放っているようにみえます

・地場産業は発達過程によって大きく3つのタイプに分けられる
 ①原材料立地により、その地で発展を遂げてきた産業。焼き物、織物、木工品、漆、工芸品、和紙など
 ②市場に近い需要地立地の産業。消費市場に近いところにあることが発揮される領域で、デザイン性が高い。西陣織、友禅、江戸小紋など
 ③近代化とともに欧米から入ってきた移植産業。鉄鋼、造船などの重工業、洋服、靴、家具、眼鏡など

・継続している地場産業の特徴
 ①量産をもとにした生産体系、流通構造ではなく、生産者と商品者が近い距離にある産地
 ②産地のなかのトップ企業が流通構造を変えたり、自社ブランドを発信したりして、けん引している産地
 ③町並みや工房を観光資源としている産地

・そもそも、地域やまちは経済的な要素だけでは捉えることができませnん。自然、歴史、文化、産業、暮らしなど市民の営みの舞台であり、時代を超えて継承されてきた・・・いわば、市民の精神生活における表象の集合体

・もともと、産業とはわたしたちの暮らしを支える存在です。その総体は国力までも左右します。地域に産業があることにより、多様な人びとが引きつけられ、多様な人びとがまじり合うことによって、まちの姿が演出されます。そして豊かな生活空間を創出していくことにもつながっていきます

センスが問われる地域経営

・社会や経済システムのグローバル化が進むとの同時並行で、人びとのローカル志向は深まりをみせ、ライフスタイルや働き方、価値観自体が変化していることを敏感に捉えていく視点が、地域政策にも求められる

・人に着目するなら、人口や労働力といった量的な数値ではなく、その人の生活やライフスタイルを含めて、人材を質的に受け止めていく必要があります。そのためにはどのような仕事が地域で提供できるのか、産業経済の変化を捉える視点が欠かせません

・魅力的な地域産業政策を推進していくには、地域での取り組みが、経済的価値だけでなく社会的な価値を生むプロセスを含み、また豊かな発想で政策を展開していく人材がいて、さらにコトがうまく運ばなかった際にも柔軟にトライ・アンド・エラーで対応できる能力が求められる
 → 結果として、そこにはストーリーが生まれる

・社会的投資というのは、単に生産者に対してのものというだけでなく、地域の人びとや応援者も織り交ぜて、知恵やアイデアを出していくきっかけになる

・(クラウドファンディングについて)事業やプロジェクトに対する「共感」が投資や寄付のインセンティブとなっており、通常の投資とは大きく性格が異なります。投資した側にすると、完全な寄付ではないため、プロジェクトや事業にゆるやかに参加するという意識が生まれます

・これまで、地域での新たな活動主体が、事業を起こすことや、社会的課題の解決のために運営資金を得るには、補助金か、融資かといった選択肢しかほとんどありませんでした。そしてそれに参画する術を、わたしたち市民はほとんど持っていませんでした。しかし、クラウドファンディングの普及によって、「共感」をベースにして、一般の市民から資金の提供を受けるかたちで、地域ビジネスや社会活動が前進していくという新たな金融支援の仕組みが生まれている

・通常、貨幣による交換、市場ベースの生産や消費は「匿名性」を帯びたものです。一方、金銭的なやりとりに還元できない贈与的な交換は「顔が見える」のが特徴です。クラウドファンディングや社会的投資は、その中間にあたる「半匿名性」の領域といえる
 → 新たなかたちで現代的な互酬性の欲求が社会的に高まっている証拠

・資本主義社会は、私利、自己利益の追求によって成り立っている。正しいやり方で自己利益を追求するには、私利が先立つ場ではなく、とはいえ公的な利益だけを追求するのでもなく、結果的にまわりまわって、自分にとって何らかの得やインセンティブにつながるようなスタイルが理想
 → 他社や社会のためにというだけではなく、何らかのかたちで自己利益につながるということが、結局は持続的な社会に求められる条件といえる
 → その際の規範になるのが、「同感」や道徳基準である

失われた20年と個人主義の時代

・現在のネット社会のなかでは、新たな消費行動を生み出し、画一化されたモノやサービスの消費についてはより匿名性と効率性を高めつつあります。けれども、その力に抗するかのように、都市のなかでも「顔の見える関係」が古びて抹消していくどころか、古びない安心感を持って価値を高めている

・一方、農村は、ここ数年の動きのなかで、都市部から若い世代が移り、地縁や血縁が少しだけ融解してきたことで、少しずつ都市が持つ匿名性の性質も備えるようになってきた

・都市では「匿名性」の世界のなかで、「顔が見える関係」が意味を持ち、他方、農村では「顔が見える関係」から、「匿名性」が意味を持ちつつあるといったように、都市と農村がフラット化してきている
 → その触媒となったのは、新たな自我を持った個人