「月刊お金のはなし」8月号のテーマは「地域通貨」

2021年8月20日(金)20時~22時、「月刊お金のはなし」8月号「ははーん、地域通貨ですか」に参加しました。
実は「月刊お金のはなし」は、本屋ときがわ町とのコラボバージョンを除けば初参加でした。

「月刊お金のはなし」とは、本屋ときがわ町でもおなじみの「お金の人」こと鈴木さんによるお金について考える会です。
生きる上で重要なお金。
でもなかなか人と話す機会が少ないのもお金。

そんなお金のことについて、いろんや悩みや相談をもっとフランクに話せる場をつくりたいということで、お金のプロである鈴木さんが今年からスタートした企画です。

「お金のはなし」8月号のテーマは、「ははーん、地域通貨ですか」ということで、「地域通貨」。

その舞台は島根県海士町。
まちづくりに関わるものにとっては、あまりにも有名な町です。

以前から興味のあった「地域通貨」と「海士町」の2つが関係するということで、子どもたちの寝かしつけを妻にお願いしつつ、前のめりに参加しました。(といってもオンラインですが)

参加者は7名。
比企起業大学の仲間であるミツさんとリエさん、本屋ときがわ町で知り合った稲田一馬さんやろっきさんもいました。
また、当日の昼間お会いして夜のイベントのことをお話したら、ときがわ町の拓さんも参加してくれました。

知っている方が多かったので、非常にリラックスしながら楽しく地域通貨について学ぶことができました。

非常に楽しかったので、まとメモとして記録したものを公開します。

地域通貨「ハーン」ってなに

海士町の地域通貨「ハーン」についてお話してくれたのは、現在、海士町のシェアハウスに住みながら地域通貨のプロジェクトに関わっている石井夏海さん(なっちゃん)。
半年間という期限でプロジェクトに関わることになったそうです。

以下、なっちゃんの話を踏まえ、私の個人的な解釈を交えつつ、まとメモしていきます。

いろんな人が意見を交わすことで、いろんな意見が新しく生まれました。
この化学反応の楽しさはたまりませんね!

皆さん、ありがとうございました!

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●海士町について
・人口は2300人ほど
・松江の港から船で3時間半
・海士町の中にも都会っぽい地区と田舎っぽい地区がある
・住んでいるのは田舎っぽい地区の人口20人ほどの集落にあるシェアハウス
・物々交換も盛んに行われる
・近所のおじいちゃんから車ももらった(!)
・コンビニもなく商店しかない。店ごとに置いている物が違うのが新鮮

●地域通貨「ハーン」
・「ハーン」はラフカディオ・ハーンから。ハーンが隠岐を訪れて絶賛した
・海外に行ったときのように、いつもと違う通貨を使う楽しさを味わおうという意味がある(遊び心)
・外貨獲得を目的に2005年から発行(役場主導)
・1ハーン=1円で、500ハーン、1000ハーン、5000ハーン紙幣がある

●地域通貨とは
・シルベオ・ゲゼル「すべてのものは減価するのに、貨幣は減価しないから、お金は人間を不幸にしてしまうのではないか」
・1929年ころに第1次ブーム
 1970年代に 欧米で、人々の相互扶助と地域内の消費促進を目的として第二次ブーム
 1990年代後半~ 日本で、地域経済の停滞や地域コミュニティ機能の衰退を背景にブーム
・日本では600くらいの地域通貨が生まれたといわれているが、ほとんどが衰退している
・代表的なものに、さるぼぼコイン、まちのコイン、eumoなど

●地域通貨の可能性
①地域経済を守る・・・一定地域でしか使えない
②新しい評価軸をつくる・・・日本円で価値をつけられないものに、地域通貨で価値をつけることができる
 ⇒ 日本円=絶対的なものさし → 相対的なものさし
 ⇒ 複数のものさしができる = 幸福の尺度が複数できる
③人と人の関係性を育む・・・地域通貨がコミュニケーションのきっかけに

●地域通貨「ハーン」の現状と課題
・想定していたような循環が生まれていない
・事業者の負担が大きい
 ①換金のために役場に行く必要がある
 ②お釣りは現金で渡す必要がある(一時的に手元にあるお金が流出してしまう)
・「ハーンはいらないのでは?」という声も
・住民調査の結果
 認知度も高く、利用経験割合も高いが、利用頻度が低い
 ⇒ 利用にインセンティブを感じていないと思われる
・メリットが感じられない
・地域通貨のメリットが活かされておらず、デメリットのみが生じている

 ⇒ 法定通貨と同じ用途で使われてしまっており、地域通貨である必要性がない

●ハーンをより良いものにするために
「電子化」「魅力化」が必要ではないか
・換金の負担軽減
 ⇒ ただシステム利用のために別の負担が生じる可能性がある(ハード面、ソフト面)
・ハーン自体が魅力的である必要がある。ハーンならではの付加価値
・電子ハーンは、「法定通貨」と「価値観通貨」の両方の機能を有するものに位置付けられる
・お金をもっと楽しめるようになれば、もっとみんながハッピーになれるのではないか

●「人が、その人の定義で幸せになる文化をつくるにはどうしたらいいか?」
・鈴木さんがしびれた問い
・自分で自分の暮らしをつくっていける人は強い
・その人にしかない価値観、能動性、主体性が発揮された状態はすごい力がある
⇒ まさにそれが自分が起業した理由
  決定権は自分にある
  自分で考え、決定することのできる環境に身をおくこと
  生き方、働き方の選択肢を自分のものにする

参加者との意見交換・ブレスト

●入手場所は?
・役場か公民館

●何が買える?
・ほとんどのお店で使える
・逆にいうと、ハーンでしか買えないものはない(日本円でも同じことができる)
 ⇒ 日本円の方が便利なので結局日本円でいいやとなってしまう

●ハーンの製造コストは?
・不明。両面カラー刷りの紙幣
・今のところ偽造問題はない

●当初の目的は?
・ノリ!
・遊び心
 ⇒ 現状では法定通貨と同じ使われ方をしており、遊び心が発揮されているとはいいがたい
・目的をどう設定するかによって使い方が変わるので、目的を定めることが重要では

●プレミアをつけるのはどうか?
・業者からそんな話もあったが、1000円で1500ハーンというくらいでないと現実的でないため、断った
・逆に1000円で800ハーンしか買えず、差額の200円が町のお困りごとの解決につながるような仕組みも考えられる

●お客さんは誰か?
・誰に使ってほしいのか、その人にどのように使ってほしいのかを考えるといいのでは
・地域通貨として、日本円では測れない何に価値を与えるものなのか

●使い道
・税金として使えるようにしてはどうか
 → 役場で発行しているのに役場で使えないのはおかしいという意見もある
・企業間で使えるようにしてはどうか
・クラウドファンディングだと、お金+αの価値を期待する
・あの人に3000円を渡したら、どんな使い方をするんだろうという期待
・そこでしか使えないお金を送るということは、この町に来てという強烈なメッセージになる

●使いにくいお金
・使いやすいのが法定通貨のメリットであれば、逆に使いにくくしてはどうか
・使いにくいからこそ使いたいという意欲が生まれる
 ⇒ 誰かが持っているハーンと組み合わせないと使えないというアイデアもあるのでは
   必然的に人とのつながりが生まれる
 → 知らない人同士がつながるきっかけとなるようなツールとして使えるようにしたい

●使わないと減価する
・使わないと損をするという発想と、使うことで得をするという発想がある

●法定通貨では測れない価値
・円とは違う価値があるというのがおもしろい
・違うものさしが生まれる可能性
 → 地域通貨は「陰」という人がいる
   法定通貨は「陽」で活動的
   活動だけだと疲れてしまうので、休息や遊びが必要
 ⇒ 休んだこと、休めたことに対してハーンがもらえるというのはどうか
   残業しないとハーンがもらえる
   奥さんを休ませてあげるとハーンがもらえる
・稼いだお金を使うのは勇気がいること
 ⇒ 使うことに「楽しみ」を感じられる仕組みは重要ではないか

●「ディズニーランド」
・ディズニーランドでしか使えない通貨だと考えれば、そこでしか使えないお金で遊ぼうということになる
・外貨獲得が目的なのであれば、まず外の人が行きたくなるような島の魅力を作ることが大事なのではないか
 ⇒ これ重要!

●人によって価値が違う
・「あの人は信頼できるから10ハーン、あいつは信頼できないから100ハーンでしか売らない」
・信頼価値を可視化するツール

●町全体の経済力を高める
・ハーンが循環することで、町全体の稼ぐ力が高まる仕組みをつくることもできる
・ハーンで見える化

●外貨獲得
・外貨獲得は切実な課題
・商店もどんどん減っている。なくなっては困る
そういうお店を応援したいから買う。そういう思いのある消費行動があってもいい
・「買い支える」

●使わざるを得ない仕掛け、使うと得をする仕掛け
・ため込むと損をする仕掛け
・逆に使うとどんどん価値が上がっていくような仕掛け

●法定通貨で測れないものに価値を与える
・レターポット。被災地への応援メッセージをお金に換えた例(西野亮廣『新世界』)
・しるし本。書き込みのある本は価値が低い → 書き込みに価値づけ
・木の駅プロジェクト。切り捨て間伐だった木を集めて、持ってきてくれた人に地域通貨で支払い

参加者からオススメ本紹介

最後に地域通貨問題を考える上で、参加者からのオススメ本の共有がありました。

私からも4冊オススメさせていただきました。

風間のオススメ本

『風雲児たち』(Sさん)
『革命のファンファーレ』(稲田さん)
『新世界』(風間)
『9割の社会問題はビジネスで解決できる』(風間)
『鎌倉資本主義』(風間)
『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』(風間)